データインバウンド
訪日中国人リピーターの日本への関心度合いや訪日意向などを調査。事態収束後のインバウンドを考える
2020.04.30
刈部 けい子東京をはじめとした都市部は現在、ゴールデンウィークならぬステイホームウィークの真っ最中だが、新型コロナウイルス感染症のピークを過ぎ、収束へ向け段階的な緩和措置をとっている国や地域もある。いち早く感染症のピークを迎えた中国では4月8日に湖北省武漢市の都市封鎖が解除されたが、それに先立ち4月4日からの3連休では約4320万人が国内旅行に出かけたと、中国旅游研究院(観光産業に特化した研究機関)が発表した。また、大手旅行会社の予約状況などを踏まえると、5月1日からの大型連休には約9000万人が国内旅行に出かけるのではないかとの見通しを中国メディアが伝えている。
外出制限が長引けばそれだけ収束後の旅行意欲も高まると思われるが、中国主要都市でのインターネットによるアンケートにもそれが見て取れる。今回は、株式会社プラネットとTrue Dataが行なったアンケート調査結果を紹介する。アンケートは3月25日~30日まで、訪日経験3回以上かつ1年以内に訪日した20~59歳に対して行われ、男女約650人(沿岸部が300人、内陸部が344人)が回答している。回答者が訪日3回以上の親日リピーター層であることには留意しながら、内容を見ていく。
外出制限で自宅で料理がトレンド
まずは、外出制限に伴う日常生活の変化を見ていくと、一番大きいのがインターネットの活用だ。ネットでの買い物についての質問で、とても増えた(30.7%)、やや増えた(39.3%)と7割近くがネットでの買い物が増えたと回答している。情報収集については、とても増えた(43.0%)、やや増えた(37.6%)とこちらは8割を超える人がネットでの情報収集が増えたと答えている。
ついで食事のデリバリーについては、とても増えた(13.2%)、やや増えた(27.2%)と4割程度が利用していることがわかる。一方で自宅で料理を作る機会は、とても増えた(54.2%)、やや増えた(30.9%)と8割を超える人がこれまで以上に自宅で料理を作るようになったようだが、これは普段も外食が多い中国ならではの結果かもしれない。そのため、「自宅で料理」がトレンドワードになり、特に炊飯器でできる料理が人気になっているという。
日本の情報をインターネットで収集
次に日本に関する情報収集については、日本への旅行計画に関する情報収集をする回数が、とても増えた(14.8%)、やや増えた(23.8%)と4割近くが情報収集が増えたとしている。また、日本の感染状況・対策・規制などに関する情報収集については、とても増えた(26.4%)、やや増えた(39.0%)と合わせると7割弱の人が増えたと答えている。今は現実の旅行はかなわないが、次回訪れるべき時に備えて、様々な情報を集めていることがわかる。日本や中国の新型コロナウイルスの感染症の状況を考慮しつつ、日本側は正確かつ魅力的な情報を、時期にあわせて配信していくことも考えていきたい。
次の訪日時期は?
さて、それでは一番注目したい今後の旅行についてはどう考えているのだろう。今後、日本への渡航制限が解除されたら、「日本を訪問したい」と思いますかの問いに、これまで通り日本を訪問したいと答えた人は29.3%だった。状況をよくみて、日本を訪問するかどうか判断したい人の数が56.7%で割合としてはもっとも多いが、これは状況が許せば訪日の可能性があると言えそうだ。なお、当分の間は日本を訪問しないと思うは14%に留まっている。
最後に、いつぐらいの時期になったら、日本を訪問できるようになると思いますかとの質問には、グラフをご覧いただきたいが、もっとも多いのが10月頃で21.6%、次に来年以降の18.6%が多い。特に沿岸部では4人に一人が10月頃に訪日できるようになると思っているのがわかる。内陸部でも10月頃がもっとも多いが、その後の11月、12月頃では沿岸部の人よりも多かった。アメリカ人へのアンケートでは今年中に旅行をすることに対する懸念を高めている人が多く、ピークを越えたと見られる国といまだピークを迎えていない国との違いが表れているといえそうだ。
繰り返しになるが、これは、訪日3回以上かつ1年以内に訪日経験のある中国人の訪日意向に関するアンケート結果である。実際に国境を超えての人の移動は、各国や地域の新型コロナウイルス感染症の状況、およびそれに伴う各政府の海外渡航規制や入国規制に左右されるのは、紛れもない事実である。ただ、日本国内だけでなく世界各国や地域の動向にも注視しながら、いつか訪れるインバウンド客の受け入れに備えていきたい。
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