インバウンドコラム
新型コロナウイルスの影響で国境を閉ざした世界の国々だが、新型コロナ感染拡大が下火になったエリアでは、海外旅行規制緩和に向け、外国人旅行客誘致のための動きも出始めている。アフターコロナを見据えた世界の動きを中心にお届けする。
アメリカ人の旅行者の69%が「持続可能な旅行が重要」と回答
緊急事態宣言下にある米ハワイ州の観光局は、観光客の退去を促すために、入国後14日間の自主隔離を拒否した場合、2万5000ドル(約268万円)の予算を投じて自国・地域へと送還することを発表。必要とあれば、自国までの航空券の費用を肩代わりするという。ハワイ州では新型コロナウイルスに596人が感染し、12人が死亡(現地時間4月23日時点)しており、州内の限られた医療施設を圧迫しないよう、外国人には自国へ戻ってもらうための措置となる。
Booking.comが、過去12カ月以内に少なくとも1回は旅行した人を対象に、再び旅行に計画について3月に実施した調査によると、アメリカ人の69%が「SDGs・持続可能な旅行を重要視する」と回答。45%の人が「日常生活でより環境に優しい選択をするようにしている」と答えており、53%の人は「再び旅行を計画する際に持続可能な選択をすることを決意している」と回答している。エコアコモデーションや、使い捨てプラスチックの使用を制限していくことなどのサスティナブルな取り組みをしていくことが、提供側にも求められていくこととなる。
夏の観光シーズンに海外からの観光客の受け入れは可能か?準備を進める欧州の国々
IATA(国際航空運送協会)は23日、欧州の航空会社の2020年の減収規模が890億ドル(約9兆5755億円)に拡大し、旅客需要は2019年の水準を55%下回るとの予測を発表。この数字は、IATAが1カ月前の3月24日に発表した値(760億ドル、46%)よりも拡大している。
一方、オーストリアでは、海外からの観光客の受け入れ再開を検討し始めている。とはいえ、すべての国からの入国を許可するのではなく、まずは感染者も欧州の中では比較的おさえることができている隣国ドイツからの訪問者を許可することとなりそうだ。
そんなドイツの旅行予約のポータルサイトHolidayCheckが1300人のユーザーを対象に実施した調査結果を発表した。それによると、40%が年内に旅行に行きたいと考えており、30%が次の旅行はドイツ国内でと考えているという。いずれの場合も、キャンセル条件を明確にしておくことを重視する人が大半を占めている。
経済の4分の1を観光業で占めているギリシャでは、観光大臣のハリー・テオハリスがロイターの取材に対して「このままでは多くの失業者が出ることになる。国境を開き、観光客の受け入れを一刻も早く再開することが重要だ」と語り、EUの協定で閉ざされている海外からの入国規制の解除を求めた。
ポルトガルで2番目に大きいホテルチェーンでは現在、宿泊客はいないが、スタッフは再開時に向けた準備に追われている様子をロイターが報じている。消毒剤、手袋、マスク、温度計を用意し、レストランでは、ゲスト間の距離を1.5メートル以上離れさせるためにテーブルを再配置したり、ビュッフェに代わるアラカルトメニューの作成などに取り組んでいるという。
海外旅行への意欲を見せる中国人観光客、受け入れに向け動き出すアジアの国も
アジアでも、観光客の受け入れに向け、動き始めている。
シンガポールでは、観光地やホテル、小売業に対して、新しい認証マーク「SGクリーン」の認定をスタートさせているが、タイでも、ホテルや飲食店の衛星状態を示す独自の認証制度「アメージング・タイランド・セーフティー・アンド・ヘルス・アドミニストレーション(SHA)」が始まっている。
タイ観光局によると、タイへのインバウンド客の4分の1は中国人観光客で、2019年には約1100万人が訪れているが、コロナウイルスの影響により、2020年の第1四半期には中国からの観光客が95%減少したという。タイでホテル業向けのリサーチやコンサルを実施しているHotelworksが中国人を対象に4月半ばに実施した調査によると、調査対象者の53%が2020年内に海外への旅行を希望していると答えており、83%は団体旅行ではなく個人旅行で海外へ行きたいと回答したという。
インドネシアでは4月2日より、すべての国からの外国人の入国、及びトランジットを禁じており観光業にも大きなダメージを与えている。中でも、観光業で成り立っているバリ島では先週までに4万6000人が仕事を失っている。バリ州政府の観光庁長官は 、地元メディアのインタビューに「6月まで待たずとも、状況が改善されていれば5月中にも観光客を受け入れることができるようになる可能性がある」とコメント。海外からの旅行者の受け入れが解除されたら、インドネシアでは中国の他、韓国や日本など12の国と地域に対して、観光キャンペーンを実施していくつもりであるとも語った。
日本政府も、新型コロナ収束後の観光需要喚起「Go Toキャンペーン」に約1.7兆円を計上する2020年度の補正予算案を4月7日、閣議決定。この内、96億円を訪日外国人旅行客の需要回復のためのプロモ-ションに当て、誘客可能と判断した国や地域に対し、訪日外国人旅行客数の回復を図るプロモーションをJNTO主導で行っていくこととしている。
(やまとごころ編集部 外島美紀子・深谷昌代)
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※最新版も更新されました
7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】
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