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世界217の国・地域で渡航制限、166カ国 地域で国境封鎖 欧州は9割以上—UNWTO報告

2020.05.13

刈部 けい子

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(※最新の発表に基づき、5月13日に記事を更新しました)

UNWTO(国連世界観光機関)は、新型コロナウイルス感染症拡大による渡航制限に関する調査報告を発表した。それによると世界217カ国・地域で程度の大小はあれ、なんらかの渡航制限措置をとっていることがわかった。

UNWTOはIATA(国際航空運送協会)や、WHO(世界保健機関)等が発表するデータをもとに、1月末から4月27日までの期間に実施された渡航制限について調査し、まとめた。この報告書でUNWTOは初めて、新型コロナウイルス感染症に関連して観光客の移動手段の制限や入国禁止などの国際的な渡航制限が世界の渡航先の100%で行われるという、歴史的かつ前例のない状況を報告している。ヨーロッパで国境を閉鎖している国や地域が93%に上ることもわかった。

1月30日時点では11カ国・地域で渡航制限

1月30日(日本時間31日)にWHOは、新型コロナウイルス感染症の発生状況が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると発表した。その時点すでに11カ国・地域では中国からの渡航者に対しての渡航制限や入国禁止措置をとっていた。その6日後の2月5日には同様の措置をとった国・地域が4倍の40となった。さらに5日後の2月10日には56カ国・地域に増加。この時点で新型コロナウイルス感染者は24カ国・地域にまで広がっていた。

ちなみに日本は2月1日に中国湖北省、2月13日に中国浙江省に過去14日以内に滞在歴がある外国人の入国を禁止し、4月2日には中国全土に禁止措置を拡大している。

WHOの「パンデミック」宣言後渡航制限急増

UNWTOの報告書によると、3月11日にWHOが「パンデミック」を宣言した時点で85カ国・地域で渡航制限が行われていたが、これ以降ヨーロッパの20カ国を含む多くが規制を導入し、3月16日には119カ国・地域で、3月24日には181カ国・地域で実施された。その後もさらに増え、4月20日の時点では世界の217カ国・地域で何らかの制限が行われていた。これは現在も変わっていない。

ここで、最新の渡航制限の詳細を見ていこう(4月27日時点)。まずは、国境を完全または部分的に封鎖しているのは全体の76%(166カ国・地域)となり、そのなかで国境を完全に封鎖しているのが94%(156カ国・地域)、部分的に封鎖しているのが6%(10カ国・地域)となっている。また、国際便の全便欠航または一部停止が26%(12カ国・地域)、特定地域あるいは特定地域を経由した入国の禁止が4%(9カ国・地域)、14日間の隔離やビザ停止等が8%(16カ国・地域)となっている。

グラフを見ればわかるが、WHOによる「パンデミック」宣言前の3月9日時点では、渡航制限は、特定地域あるいは特定地域を経由した入国の禁止と14日間の隔離やビザ停止等だけだったが、宣言後には部分的あるいは完全な国境封鎖と政府による国際便の停止が加わっている。

ヨーロッパで9割超が入国禁止措置

それでは地域別の渡航規制についてはどうだろうか。4月27日の時点ではグラフのように、観光客に対し国境を完全または部分的に封鎖している国・地域の割合が最も大きいのがヨーロッパの93%で、ついで北中南米が82%、中東が77%、アジア・太平洋地域が70%、アフリカが60%となっている。

 

入国禁止措置を取る国が多いということは、すなわち国際線の欠航も格段に増えているということだ。既報のように、IATAは今年1年間の航空会社の旅客収入は前年比55%減となる3140億ドル(約33兆6700億円)の減収となる見込みを発表した。また、海外渡航者の減少は宿泊業も直撃している。世界有数のホテルチェーンであるマリオットが数万人の従業員を一時解雇したり、エクスペディアグループが従業員3000人を削減するなどといったニュースが報じられているが、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)は2020年に旅行業界で1億以上の雇用が失われる可能性があると分析している。

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