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パンデミックで大打撃、GDPに占める観光収入の割合から見る コロナに脆弱な観光立国は? 

2020.08.11

刈部 けい子

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観光立国メキシコ、スペイン、イタリアが窮地に陥る。世界規模の新型コロナウイルス感染症の拡大で、世界の旅行業はかつてない苦境に立たされている。特にGDP(国内総生産)に占める観光収入の割合が大きい国ほど、負のインパクトが大きい。そこで、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)による世界主要国のGDPにおける観光業への依存度ランキング(2019年)から、今回のパンデミックによる打撃の大きさを見ていこう。

それによればパンデミックの影響を最も受けやすいのはGDPの15.5%が旅行および観光産業に依存しているメキシコだ。続いて欧州でも有数の観光国、スペイン(14.3%)、イタリア(13.0%)となっている。

死者数急増のメキシコ

メキシコは2018年の国際観光収入ランキングは17位だったが、近年は渡航者数が飛躍的な伸びを見せ2018年の外国人受入数は4145万人(世界7位)と、2019年の訪日客数(3188万人)よりも多い。マヤの遺跡やカンクンなど有名観光地のほか、高級リゾート地を求める富裕層にもアピールしており、現に今年の「トラベル・アンド・レジャー」誌の世界の人気都市ランキングでも1位のオアハカを筆頭に4都市が25位までにランクインしている。

3月下旬から新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まったメキシコでは、8月6日時点で累計感染者数46万2690人、死者数5万517人。死者数はアメリカ、ブラジルに次いで3番目に多い。その2週間ほど前の死者は4万人だったので、ウイルス感染が急速に拡大していることが明らかで、とても観光を再開できる状態にはない。メキシコ保健省のガテル次官によれば、感染者数は冬まで高水準が続き、来春まで流行が続く可能性があるという。

また、メキシコのトルーコ観光相によると、今年上半期に同国を訪れた外国人観光客は約1300万人で、前年同期比41.2%減少。それにより上半期の外貨収入は51.5%減少して57億8600万ドルになったという。



ホリデーシーズンで観光客を呼び込みたいイタリアとスペインだが……

欧州のイタリアとスペインは早い時期から感染拡大が起き、死者数も多い。世界的な渡航規制によって観光客の足が途絶えたことで、観光業は壊滅的な打撃を受けている。この両国は2018年の外国人受入数ランキングと国際観光収入ランキングでそれぞれ2位と5位だったが、パンデミック以前から債務危機にあり失業率も高かった。つまり、もとから爆弾を抱えているようなものだったと言える。感染症が少し沈静化した7月早々、この両国がいち早く観光客に対して国境を開いたのも、それを考えると納得のいくことだった。

しかし、ここにきてスペインでは第2波がホリデーシーズンを直撃、今年の観光収入は100億ユーロ(約1兆2500万円)の損失の可能性があるといわれている。

アメリカはDGPにおける観光収入の割合は8.6%で、前述の3カ国と比べると低いが、観光業に携わる1680万人が失業の憂き目にあう可能性があると見られている。

なお、UNCTAD(国連貿易開発会議)は新型コロナウイルスの影響で世界の観光業は少なくとも世界のGDPの1.5%に相当する1兆2000億ドル(約127兆円)の収入を失うとの報告書を7月に出したばかりだ。

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