データインバウンド
Go To トラベル意識調査 キャンペーン活用した旅行意欲は2割弱、マイクロツーリズムに注目集まる
2020.09.16
刈部 けい子7月22日に東京発着を除外して始まった「Go To トラベル」キャンペーン。10月1日からは地域共通クーポンの配布が開始となること、さらに東京発着も対象になることなどが発表され、キャンペーンがフル稼働することになる。
キャンペーン開始前後から賛否両論ある「Go To トラベル」キャンペーンについて、開始直前の7月17日〜21日に株式会社ブランド総合研修所が、全国の消費者約1万1000人(18歳以上で、年代、男女比はほぼ均等)を対象に「Go To トラベル」キャンペーンに関する意識&ニーズ調査を実施した。その結果と現状を見比べながら、旅行者の意識を考察する。
現状での旅行希望者は2割弱
まずは、「Go To トラベルを利用して旅行に行きたいと思っていますか」という設問に対し、「すでに予約している」(3.0%)と「具体的に検討している」(4.8%)、「できれば行きたい」(9.9%)の合計が17.7%となり、2割弱が旅行の意欲を持っているということがわかった。その一方で、「旅行には行くが、Go To トラベルは利用しない」との回答が2.9%、「今は旅行に行く気になれないが、感染が収まれば検討したい」は28.7%。なお、半数を超える50.7%が「旅行に行きたいと思わない」と回答している。開始前の時点では旅行への意欲はそれほど高くない点に注目したい。
「Go To トラベルを利用して旅行に行きたいと思っていますか」
9月15日、国土交通省の赤羽一嘉大臣が閣議後の記者会見で、「Go Toトラベル」キャンペーンを利用した宿泊者が8月末までで1339万人に達したと話した。日本の18歳以上の人口は1億407万人(2015年10月1日時点)なので、調査で「すでに予約している」と答えた3%をかけると約312万人となる。旅行は家族や友人、カップルなど複数人で出かけるケースも多く、「具体的に検討している」と回答した4.8%の人などによる調査以降の追加予約、一部の人が複数泊、複数回予約したと考えれば、さほどかけ離れた数字とはいえないだろう。
今後、東京も含まれれば利用者は増加するだろうが、そもそも「旅行に行きたいと思わない」人が5割を超え、開始後も手続きの複雑さや感染収束の見込みが立たない現状で、どこまで旅行需要の喚起につながるかは不透明なところだ。
旅行予定者に人気なのは中部・近畿
希望する旅行先については、旅行予定のある人と、感染が収まってから検討する人の間に違いが見て取れる。旅行予定のある人では、中部と近畿の人気が高かった。一方で感染収束後に検討と答えた人に最も人気が高かったのは北海道だった。なお、現在「Go To トラベル」キャンペーンの対象外となっている東京は、両者に人気がない。調査が行われたのが、東京の感染者数が緊急事態宣言の出ていた4月の累計を超えた7月だっただけに、それも納得の数字といえそうだ。
回答者の居住地域別に希望の行き先を分析すると、北海道在住者が希望するのは道内が26.6%と最も多く、東京を除いた関東在住者の希望は18.9%が関東だった。域内観光、いわゆるマイクロツーリズムが望まれていることがわかる。実際に8月25日の赤羽大臣の会見でも、キャンペーンの利用形態は遠距離の移動を伴う旅行よりも、マイカーなどによる近場旅行、宿泊が中心で、「近距離の旅行中心に堅調に利用が進んでいる」との発言があった。
旅行予定者にはテーマパークが人気
それでは旅行に行きたいと答えた約5400人は、具体的な目的地としてどこを挙げたのだろう。トップは全体の7.9%が挙げた東京ディズニーリゾートだった。USJも3位に入り、テーマパークの人気の高さがうかがわれる。両施設ともイベント自粛要請を受け、緊急事態宣言前後も長期休園していたため、需要が高まっていたと見られる。テーマパーク入場料込みの宿泊プランのなかには、Go To トラベルを利用したかなりお得なプランも出ている。東京ディズニーリゾートでは営業再開直後の空いている状況とはうって代わり、8、9月はかなりの人出があったようだ。
ほかにも、夏休み期間は臨時休館した沖縄美ら海水族館や、伊勢神宮などもランクインしている。都市では札幌、函館、富良野と北海道がトップ10に3カ所ランクイン。感染収束後の行き先で北海道の人気が高かったことがここでもわかる。
温泉希望者は高級宿を利用か
また、旅行の予定がある人の中では、半数を超える54.6%が目的として「温泉」を挙げた。次いで「自然景勝地巡り」(45.1%)、「食べ歩き、グルメ」(37.5%)だった。また、感染収束後に検討と答えた人の場合は、「食べ歩き、グルメ」(48.4%)と回答した人が最も多く、次いで「温泉」(44.1%)、「自然景勝地巡り」(44.0%)だった。日本旅行業協会の集計によると、大手旅行サイトを使った8月の行き先別予約人数が32道府県で前年同月を上回ったことがわかったが、Go To トラベルによる割引の恩恵をより多く受けられることもあってか、高級宿の利用が多かったという。
望まれるマスク・消毒・換気の徹底
最後に、「宿泊先や観光施設に望む対策」を尋ねると、最も多かったのは「マスクの徹底」でおよそ6割の59.8%。僅差で「徹底した消毒」が59.0%で続き、「窓や扉の開放、室内換気」も36.2%あった。
Go To トラベルキャンペーンに参加する施設には厳しい感染拡大防止対策が課せられており、観光庁も感染防止対策の実施状況の調査をこれまで二度行なっている。受け入れ側としては、こうした対策をしっかり実施していることを広くアピールする重要性を再認識したいところだ。
グラフ・表 出典:ブランド総合研究所 GoToキャンペーン(旅行)の意識&ニーズ調査
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