データインバウンド
2021年版世界の安全な都市ランキング1位はコペンハーゲン、東京は5位。コロナ禍でサイバーセキュリティの重要性高まる
2021.09.14
イギリスのザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が発表する『Safe Cities Index』(世界の都市安全性指数ランキング)。2年に一度作成されるこのランキングの2021年版が発表され、1位にコペンハーゲンが選ばれた。2015年、17年、19年と3回連続で総合ランキング1位だった東京は5位となった。
このランキングは、76の指標をサイバーセキュリティ、医療・健康環境の安全性、インフラの安全性、個人の安全性、そして今回新たに加わった環境の安全性という5つのカテゴリーに分け、世界の主要60都市を対象に分析したものだ。
トップ10の顔ぶれに常連都市多く
総合ランキングトップ10には、1位にコペンハーゲン(100ポイントで満点の総合スコアで82.4)、2位に僅差でトロント(同82.2)、3位は前回2位のシンガポール(同80.7)。オーストラリアはシドニーが4位(同80.1)、メルボルンが8位(同78.6)と、2都市がトップ10に入った。5位の東京は80.0ポイントで、前回3位だった大阪(同76.7)は17位に後退した。
なお、今回を含めて4度の調査では、東京、アムステルダム、メルボルン、トロント、シンガポール、シドニーの6都市が、僅差でトップ10に顔を揃えており、順位の変動はあるもののトップ10の常連都市といえる。コペンハーゲンが対象都市となったのは、前回の2019年版からで、その時はソウルと同率8位だったが、今後上位の常連となるか興味深い。
総合ランキングの平均値は66.1。32位のクアラルンプール(66.6)までが平均値を上回った。最下位はミャンマーの旧首都ヤンゴン(39.5)だった。
重要度が増すサイバーセキュリティと個人・環境の安全性
5つのカテゴリーの中で、東京は医療・健康環境の安全性で1位(前回2位)、インフラの安全性で5位(前回4位)になっているが、前回1位だったサイバーセキュリティでは20位、4位だった個人の安全性では16位にランクを落とし、環境の安全性で13位だったのが、総合スコアで後退した要因だ。トップに浮上したコペンハーゲンと東京のスコアの差は2.4ポイントしかないが、コペンハーゲンは医療・健康環境の安全性は26位と中位だったものの、サイバーセキュリティとインフラの安全性で3位、個人の安全性で1位、環境の安全性で6位だった。
コロナ禍では、リモートワークやネットショッピングが当たり前になり、サイバーセキュリティの重要性はますます高まっている。今回の調査では、低・中所得国の都市を含む多くの都市でインターネットの普及が加速しており、60の対象都市中、スマートシティの取り組みを推進・検討する都市は59に達していることがわかった。その一方で「都市レベルのサイバーセキュリティ体制は、全体として非常にお粗末な状態にある」と米国ジョンズ・ホプキンス大学土木システム工学部グレゴリー・ファルコ准教授は指摘する。
報告書では、こうした現状を改善するために、「自治体による取り組み強化が不可欠。例えば自治体は、サイバーセキュリティを非生産的なコストではなく、長期的投資あるいは予防的政策と捉える必要がある。また既存組織の枠組みを超えた包括的な取り組みも求められる」とした。
また、人の移動(徒歩・自転車)や公共サービスの利用パターンが大きく変わる中で、インフラの安全性強化にも新たなアプローチが求められているし、個人の安全性に対する考え方も、ロックダウンの際に生じた犯罪発生パターンの変化(路上犯罪が減少する一方、サイバー犯罪が急増)に対応を迫られている。
加えて、パンデミックのような「予期せぬ危機」が起こることを目の当たりにした多くの都市住民や政府・自治体は、環境の安全性への関心を高めており、それが今回のカテゴリー追加に至った。環境の安全性のランキングを見ていて一つ、他カテゴリーと異なった点に気づく。それはコロンビアのボゴタ(4位)をはじめ、比較的総合ランクの低い低・中所得国の都市で高スコアを獲得する場合が少なくないことだ。幅広い地域で質の高い環境政策が広まりつつあり、今後は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を背景に高まるカーボンニュートラルへの関心などをはじめ、環境政策は更に充実するだろうが、高所得国の都市を含め、必ずしも成果は上がっていないという現状がある。他分野と同様に、既存組織の枠組みを超えた包括的アプローチの推進、そして住民との連携を重視する考え方が成功の鍵となるだろう。
コペンハーゲンが1位の理由
今回1位になったコペンハーゲンのラーシュ・ヴァイス市長はEIUの取材に対し、「コペンハーゲンは、あらゆる年齢、人種、セクシュアリティ、コミュニティの人でも安全だと感じられる街作りを重視し、安全性強化の取り組みを続けてきた。それが1位になった大きな理由だと思う。 特に重要なのは犯罪率の低さで、現在は過去約10年で最低レベルにある。またコペンハーゲンは、社会的結束の強さと所得格差が少ないことで知られている。清掃員も経営者も同じスーパーで買い物をし、同じ学校に子供を通わせる。こうした文化はデンマークの礎となっており、信頼度と安全性の高さに大きく寄与している」と話した。
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