データインバウンド
コロナ禍で進む地方移住、東京からの転出者はどこへ移動しているのか?
2021.10.27
コロナ禍で、テレワークが普及し、職場の近くに住んでいなくても仕事が可能になったことから、ワーケーションや地方移住の動きが出ている。やまとごころでも過去に、「京都でワーケーションプロジェクト続々と始動、観光再生を見据えたサステナブルな内容がカギとなる?」という記事で京都のワーケーションや関係人口を増やす取組などを紹介した。休暇先で自分が持ち込んだ仕事をするワーケーションとは違い、実際に移住はしないまでも、その土地と多様な形で関わる関係人口と呼ばれる地域外の人々は、少子高齢化の進む日本の、特に地方圏で活躍が期待されている。そして、それよりもさらに踏み込んだ形であるのが、移住だろう。読者の方の身近にもこの1、2年で移住を経験した人がいるかもしれない。
そのようななか、2020年から2021年上期まで、実際にどのぐらいの人口移動があり、東京都からはどのぐらいの人が転出しているのだろうか。日本政策投資銀行が総務省の「住民基本台帳人口移動報告」を元に行った分析を紹介する。
東京都から4万人転出
日本の人口は、1960年代の高度経済成長期には三大都市圏内(東京圏、名古屋圏、大阪圏)に流入していたが、1970年代に入ると大都市圏への人口流入は沈静化した。ただし、東京圏(東京都と首都圏の埼玉県、千葉県、神奈川県)については、バブル経済崩壊後の一時期を除き、転入超過が続いている。たとえば2018年には転入超過が13万6000人となり、東京圏には日本の人口の29%を占める約3700万人が住むなど、人口が一極集中していた。
そこで迎えたコロナ禍、2020年以降は東京都への転入超過が大きく縮小し、地方の転出超過が縮小したことがわかった。下の図をご覧いただきたい。東京都の2020年~2021年上期の転入者は69.8万人、その前の2018~2019年上期が75万人だったのでこの間に転入者は5万2000人減少。一方、2020年~2021年上期の転出者は64.1万人、2018~2019年上期が60.1万人だったので転出者は4万人増えている。東京圏以外の43道府県からの東京圏への転入者も大きく減少した。
出所:日本政策投資銀行
行き先は首都圏や長野、静岡などアクセス良好な地域
東京都からの転出者は4万人増えたが、そのうち2/3にあたる2万6000人は首都圏に移動している。また、下の表にあるように、その他の転出先で多いのは北海道と大阪を除けば、北関東の茨城県、栃木県、そして中部地方の長野県、静岡県となっており、転出先が東京都からのアクセスの良い地域に集中しているのがおわかりいただけるだろう。東京都からは避暑地のイメージの強い長野県有数の別荘地、軽井沢町では、コロナ禍になって別荘としてではなく、日常的に住むために移ってきた人も多いと聞く。
出所:日本政策投資銀行
人口の地方分散はまだ始まったばかり
ここに並んだ数字を見るとわかるように、コロナ禍で人口の地方分散が始まったといえるだろう。とはいえ、まだまだ東京へのアクセスが容易なエリアでの増加が大半というのが現状だ。下の図にあるように、転入が増えたことで転出超過が縮小したのは15道府県だが、それは東京や大阪の大都市圏に近いところがほとんどを占める。
その一方、転入は減ったが、転出の減少幅がそれを上回ったことで人口移動が好転しただけの県が26県ある。今後、地方維持という観点では、これらの県でも転入が増え、転出が減ることが望ましい。地方大学への地元高校からの進学率や、大学生の地元就職希望比率も以前よりも増えているという調査もある。今後、各自治体などによる定住者拡大のための取組次第では、さらに地方での転出の減少と、転入の増加という図式が見えてくるのではないだろうか。
出所:日本政策投資銀行
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