データインバウンド
世界一安全な国ランキング アイルランドが首位キープ、欧州流戦略のUAEとチリが10位内へ —2021年10月
2021.11.02
アメリカの大手総合情報サービス会社ブルームバーグは、世界で最も安全な国・地域の番付「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」の10月版を発表した。このランキングでは、経済規模が2000億ドル(約20兆9100億円)以上の53の国・地域を比較し、コロナ禍における感染抑制やワクチン接種率、死亡率、渡航再開具合など12のデータ指標に基づいて、新型コロナウイルス感染症への効果的対応度をランク付けしている。
9月に引き続き欧州諸国が上位を占めるなか、ワクチン接種済みの市民により多くの自由を認める欧州流の戦略を採用したアラブ首長国連邦(UAE)とチリが、トップ10内にランクインした。ワクチン接種率が7割を超えた日本も先月から順位を13上げ16位となった。
上位3か国は感染拡大抑制による社会の正常化へ
1位は2カ月連続でアイルランド。成人の90%以上がワクチン接種を済ませ、感染例は増えたが死亡との連鎖が弱まったことから、バーやレストランの営業時間をワクチン接種済みの人へは通常化するなど、慎重に経済活動を再開させている。入院患者数は流行時の4分の1となり、国内総生産(GDP)が同国を拠点とする多国籍企業の恩恵により伸びたことも順位に影響した。
2位はスペイン、3位はUAEが僅差で続いた。スペインはパンデミック初期に世界最悪レベルの感染拡大に見舞われたが、デルタ変異株流行後は感染者数、検査陽性率、死者数の全てが減少。集会・イベント関連の抑制措置はほぼ緩和され、外出制限も解除され、旅客機の輸送量はコロナ前の70%程まで回復している。
UAEは新規感染者数がここ1年で最少となったが、10月1日に開幕し、来年3月末までドバイ国際博覧会(ドバイ万博)が行われることで新たなリスクに直面する可能性は否めない。
米英は感染者数高止まり。下位の東南アジアは経済復興に苦慮
米国は順位を2つ上げ26位となったが、ワクチン接種率の増加とデルタ株感染症の比較的高い死亡率の抑制をクリアすることが課題だ。英国は感染者の増加により、順位を9つ下げ25位となった。
ランキング下位は引き続き東南アジア諸国が占め、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンが3カ月連続で下位6カ国にランクイン。これらの地域の感染は最悪期を脱した可能性があり、特にマレーシアでワクチン接種が進んだものの、デルタ株による打撃に輸出主導の経済が苦しめられている。経済再開を急いでいるが、欧州と米国に追い付くには時間を要するだろう。
出典:Bloomberg「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」
気温が下がるにつれ、英国やベルギー、アイルランドで既に感染者が増えはじめているように、冬とクリスマスシーズンの訪れが、次なる感染の波への懸念となっている。先進国のブースター接種実施が感染拡大への抑止力となるのか。それは世界におけるワクチンの公平性にどのように影響するのか。あるいは冬の寒さが影響しない中東や中南米、アジアの一部が上位に浮上するのか。次回11月のランキングに注目したい。
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