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東京オリンピック開催中に海外に発信した日本の魅力、訪日意欲への影響は? JNTOが試算

2022.02.03

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コロナ禍で1年遅れの開催となった東京2020オリンピック大会。海外からの観光客受入は行わず、原則無観客で開催となったが、将来の訪日意欲向上などを目的に、大会期間中に海外向けに積極的に情報を発信したJNTOがその効果を測定し結果を発表した。

ここでは、JNTOが行ってきた取り組みを振り返るとともに、大会期間中に来日した海外メディアや、海外13カ国・地域の消費者へのアンケート結果から、今回の大会が、将来の訪日へどの程度影響を与えたのかを見ていく。

(図表出典:JNTO調査「Tokyo2020を契機とした訪日プロモーション効果とJNTOのレガシー」)

 

オンライン配信で効果的に訪日喚起 重点市場からも高評価

JNTOがオリンピック開催期間中に海外向けに発信したコンテンツは、知られざる日本の地方の魅力やアクセシビリティを中心としたもので、海外観戦客の受け入れ断念や海外メディアの入国・移動規制を踏まえ、デジタル広告やJNTOオリパラ特設サイトでのオンライン配信を強化。海外メディアにはニュースレターの配信や個別の取材対応で積極的にアプローチした。また、オフィシャルスポンサー、関係団体、日本全国の自治体・DMOとの連携により、プロモーションの効果向上を狙った。

これらの取り組みの結果、訪日を喚起するプロモーション動画の総再生数は、3.1億回を突破。重点市場である米・中・英・仏のオンライン広告視聴者を対象としたアンケートでは、いずれの国でも、対象者の70%以上が、広告視聴の結果「日本を訪れたい」と回答した。


参照元:JNTO調査「広告事業アンケート」

また、オリンピック・パラリンピック大会の米国での独占放映権を有するNBCがCM視聴者に行ったアンケートでは、95%が日本にポジティブな印象を持ち、40%が次の海外旅行は日本を予約・検討するとした。また、同4カ国の1500人以上の有力メディアジャーナリストによって、日本紹介関連記事が13.4億人以上にリーチ。日本各地のアクセシブルツーリズム情報は、1億人以上に届けられた。

 

海外メディアの8割 再来日を希望、競技以外への取材関心も高く

海外メディアへのアンケートは、来日した209名を対象に実施された。今回の取材で最も日本に魅力を感じたことは、1位が「歴史・伝統文化」で39.2%、2位が「食文化」で38.3%、3位が「有名な観光スポット」で29.7%となった。今後の日本への取材対象として関心のある項目は、1位が「有名な観光スポット」で37.8%、2位が「歴史・伝統文化」で33%、3位が「食文化」で31.6%と、上位3項目への日本の強みが浮き彫りとなった他、「2022年ワールドマスターズゲーム」が20.6%、「2025年大阪・関西万博」が16.3%と、今後開催予定のメガイベントにも関心が寄せられた。また、日本に取材で再訪したいという前向きな回答は82.8%にのぼり、魅力ある取材地としての認知度も向上した。

海外メディアが取材を決めるにあたって活用した訪日前の情報収集源は、従来型ツールである「スポーツ番組」「ニュース番組」が上位だったが、「検索エンジン」「YouTube等の動画サイト」が1/4(25.3%)を占めるなど、デジタルリソースの活用も目立った。訪日後の取材訪問予定地は、東京が73.2%、陸上とサッカーの開催地である北海道が16.7%と、競技開催地が上位を占めたが、約半数が競技期間外にも取材設定していたことから、競技以外の取材への関心の高さもみられた。また、実際の取材方法については、対面が31.6%に対し、オンラインが38.3%、対面とオンラインの両方が28.7%という結果となり、7割弱がオンラインを活用。今後開催予定のメガイベントに関連した観光面での露出も、オンライン関連の選択肢があることを条件とするとの回答者が多かった。

 

海外居住者への調査結果、メディア視聴が訪日意欲向上にポジティブに働く

海外居住者へのアンケートは、13の国と地域に居住する8034名を対象に実施された。対象居住地は米・中・英・仏・独・伊・西・韓・台湾・香港・カナダ・豪・露。対象者の条件は、20代以上の男女で、日本でのオリンピック・パラリンピック大会開催を知っており、今までに国際メガイベントの主催国ゆえに旅行先として興味をもった、あるいは実際に旅行した経験がある人とした。

その結果、44.2%が今大会の視聴を通じて日本への興味が強まったと回答。パンデミック後の訪日意欲については、66.5%が日本での国際メガイベント開催時に訪日したいとし、イベント開催時期に関わらず日本を訪れたいという回答者は73.2%にのぼった。訪日意欲を示した回答者のうち、38.9%が大会開催に関係なく日本への訪問意欲が高かったと回答した一方で、38.6%が大会を契機としたメディアやSNS投稿、プロモーション視聴を通じて訪日意欲が高まったと回答。その割合をベースに各国、地域の人口を踏まえて推計すると、当該国・地域で3.9憶人の訪日意欲が向上したとJNTOは試算した。

新たに訪日意欲が向上したと推計した3.9億人がリーチしたチャネル毎の内訳(重複あり)は、競技視聴が最も多く2億人、次いでSNS投稿が1.8億人、プロモーションが1.6億人、報道が1.4億人となった。今大会の広告宣伝により日本への印象が良くなったと33.2%が回答し、なかでも日本が強みとする「歴史・伝統文化」「有名な観光スポット」「景色・風景」への印象が特に良くなったとした。

 

世界が日本の魅力を再認知 2025年大阪万博へも高い関心

世界的な旅行誌「ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー」のイギリス版が2021年11月に発表した「リーダー・アワーズ2021」において、日本は「最も訪れたいロングホール旅行先(“Best long-haul destination”)」と「ウィッシュリストに含めたい旅行先(“The wish-list destination”)」に選ばれた。東京2020大会を通じた情報発信により、日本の自然と文化の多様性や地方の魅力が世界的に認知された結果で、パンデミック後のインバウンド観光の復興に希望がもてる。また、2025年大阪・関西万博へは海外メディアと海外居住者の双方が高い関心を寄せており、万博への参加を希望する海外居住者は27%にのぼる。東京2020大会で獲得した日本ファンの今後の訪日と、国際メガイベントを契機とした更なるインバウンド需要増大に、期待したい。

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