データインバウンド
2021年の世界の航空需要 パンデミック前の4割強、回復傾向も国際線は変異株で鈍化
2022.02.07
IATA(国際航空運送協会)は2021年の世界の航空需要の結果を発表した。それによると、業界全体のRPK(有償旅客が搭乗して飛行した総距離=revenue passenger kilometers:有償旅客数×輸送距離)は2019年と比較して58.4%減少した。2020年の年間RPKは前年比で65.8%減だったため、それと比較すると改善したといえる。
ASK(有償座席利用率=available seat kilometer:総座席数×輸送距離)は2019年比で48.8%減少した。
また、国際線の年間RPKは2019年比で75.5%減。ASKは65.3%減少した。一方、国内線の年間RPKは2019年比で28.2%の減少に、ASKは19.2%の減少に止まった。
(なお、2020年はパンデミックの影響で世界の航空利用客は激減したため、記事中の伸び率比較は特記がない限り、すべて2019年同月比であることに留意されたい)
12月の国際線にオミクロン株の影響
2021年12月の業界全体のRPKは2019年12月と比べて45.1%減少したが、オミクロン株の登場で感染拡大が懸念されたにもかかわらず、月間需要は回復して、11月の47.0%減より改善した。
12月の国際線はオミクロン株の出現による渡航制限措置で、2週間ほど回復が遅れた。国際線のRPKは2019年と比較して毎月4ポイントのペースで回復してきた。オミクロンがなければ、12月の国際線RPKは2019年同月比56.5%減と予想されていたのだが、実際は58.4%減だった。もっともこれでも11月よりは2.1ポイント改善している。
それではここから、国際線、国内線の2021年通年と12月の実績を見ていこう。
年間の国際線需要、アフリカの打撃が最も少なく
アジア太平洋地域の2021年通年の国際線RPKは2019年比で93.2%減となり、どの地域よりも深刻な減少幅となった。12月のRPKは2019年同月比で87.5%減となり、11月の89.8%減よりわずかに改善された。IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長が度々発言しているように、「厳格な入国制限措置が影響している」といえる。
ヨーロッパの2021年のRPKは2019年比で67.6%減少した。12月のRPKは2019年同月比で41.5%減少、11月の前年同月比43.5%減からは改善された。
中東の2021年の年間RPKは、2019年を71.6%下回った。 12月のRPKは2019年同月比で51.2%減となり、11月の54.3%減からしっかり持ち直した。
北米の通年のRPKは、2019年比で65.6%減少した。 12月の RPKは前年同月比41.7%減で、11月の44.6%減から改善した。
中南米の年間RPKは、2019年との比較で66.9%減少した。 12月のRPKは2019年同月比40.4%減で、11月の47.3%減少から大幅に改善した。
アフリカの通年のRPKは、2019年比で65.2%減だったが、6つの地域の中では最高のパフォーマンスとなった。12月のRPKは、オミクロンに対応した政府の渡航制限の影響により、11月よりも悪化し、2019年同月比60.5%減となった。
国内線ではロシアが通年でプラス
2021年の国内線は国際線よりも早いペースで改善したが、それは国内の移動規制がより緩やかだったことによる。
中国の2021年の国内線のRPKは3月からの3カ月間プラスに転じたものの、 通年では2019年比で24.4%減少した。12月は2019年同月比で39.6%減となり、11月の50.9%減と比較すると改善した。
ロシアの国内線のRPKは通年で24.2%増、12月単月では23.2%増となり、11月の17.5%増を上回る加速度的な伸びとなった。ロシアは、2021年のRPKが2019年と比較して成長した唯一の市場だった。ロシアについては、2022年には海外でもその存在感を示すと報じられている。
日本の国内線RPKは通年で2019年比57.9%減で、この表に掲載された7カ国のうちオーストラリアと並んで5割を切っている。ただし、第4四半期では回復のスピードが上がり、12月単月ではパンデミック前の74.1%まで戻している。
その他、12月単月で見ると、ブラジル、インドで国内線の回復が著しく、ブラジルはほぼ2019年並みに近づいた。
IATA事務局長、2022年の課題は旅行の正常化と旅客の自信を強めること
IATAのウィリー・ウォルシュ事務局長は、この1年間を振り返り、次のように語った。
「2021年の全体的な旅行需要は力強かった。その傾向は、オミクロン株の登場で旅行制限が厳しくなったにもかかわらず、12月に入っても続いた。これは旅客の旅行に対する自信と欲求の強さを物語っている。2022年の課題は、旅行を正常化し、彼らの自信をさらに強化することある。世界の多くの地域で、海外旅行はまだ正常とは言い難い状況だが、正しい方向に向かう勢いがある。1月中旬にはフランスとスイスが大幅な規制緩和を発表した。そして1月24日は、英国がワクチンを接種した旅行者に対する検査要件をすべて撤廃した。アジアではいくつかの主要国が事実上隔離されたままにあるが、彼らがこうした流れに乗ることを望んでいる」
「”COVID-19 “がパンデミックからエンデミックへと変化を続ける中、各国政府は、感染拡大の防止に効果がないことが繰り返し明らかにされているのだから、人命や経済に多大な損害を与える渡航制限の時代はとうに終わらせるべきなのだ。各国政府は新年の抱負として、人々の免疫力を高めることに注力し、正常な生活への復帰を妨げるような渡航制限をやめるべきだ」とウォルシュは結んだ。
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