データインバウンド

コロナ収束後の訪日旅行、旅行会社利用ニーズ半数超え。ワーケーション意向1割にとどまる

2022.03.18

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これまで定期的に行われている「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」では2021年10月5日〜19日に「第3回新型コロナ影響度 特別調査」を実施し、分析結果をこのほど発表した。それによると、新型コロナウイルス感染症収束後の海外旅行では個人手配よりも旅行会社経由で、より多くの予算をかけて屋外レジャーを体験したいという傾向が明らかとなった。調査はアジア・欧米豪12地域(韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス)の海外旅行経験者6294人を対象に、インターネットによるアンケート形式で実施された。
(図・表出典:DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査より)

 

次に行きたい海外旅行先、日本の強みは「清潔さ」ナイトライフや多言語対応に課題

コロナ収束後に海外旅行したい国を聞いたところ、アジア圏8カ国・地域では1位日本、2位韓国、3位台湾という順位だった。欧米豪圏4カ国では1位日本、2位アメリカ、3位オーストラリアと、両市場でトップとなり、2020年12月に行った第2回の調査に引き続いての結果となった。欧米豪圏では1位日本と2位アメリカの差は4ポイントしかないが、アジア圏では2位の韓国に20ポイントの差をつけて日本が一番人気となった。

日本を訪れたい理由を見ていくと、下表のとおり「清潔」「食事が美味しい」「行きたい観光地や観光施設がある」「治安がよい」の4つは、競合となる観光地と比較した際、10以上の国、地域で日本が1位を獲得した。これは日本が観光地として持つ普遍的な強みであるといえる。一方、低評価だったのは「ナイトライフ」「多言語対応度」「予算が合う」の3つだった。ただ、日本の弱点3つもいくつかの市場においては固有の強みとして表れている。例えば、予算は中国市場において、ナイトライフはシンガポールにおいて、多言語は台湾市場においては1位を獲得しているため、より詳細に分析したり参考にしながら、日本の魅力を磨き上げれば弱点克服につながるかもしれない。

 

滞在日数は変わらないが、予算は増える傾向

日本旅行における1回あたりの滞在日数は以前よりも「長くなる」「どちらかといえば長くなる」を合わせた割合が、アジアで52%、欧米豪が51%だった。前回調査時と比べて、欧米豪では横ばい、アジアではわずかに延びた。希望する滞在日数をみると、全体平均が9.2日で、第2回調査の8.8日より長期化した。最短は韓国5.3日、最長はフランス15.1日と10日の差があった。

日本で使う1回あたりの旅行予算が「増える」「どちらかといえば増える」と回答した人はアジアで64%、欧米豪が57%と増加の意向が表れた。国・地域別にみると、タイと中国市場では予算を増やす傾向が強く、韓国とイギリスでは予算は変わらない傾向が出た。

 

コロナ禍で旅行会社利用意欲高まる、「安心してできる旅」へのニーズ

訪日旅行希望者に旅行形態を聞いたところ、旅行会社を利用すると答えた人が12市場すべてで半数を超え、第1回から調査を重ねるほど増加している。感染状況によりフライトキャンセルや入国規制の厳格化など、さまざまな予定変更が起こりうるコロナ禍で、少しでも安心できるよう旅行会社を利用したいという意欲が高まったものと思われる。

ただ、旅行会社を利用する人でもその形態には差があり、エアー・ホテル・食事・添乗員付きのいわゆるフルパッケージツアーを希望するのは全体の3割弱で、残りはエアーとホテルだけというケースや、自分の好みに合ったオーダーメードツアーなど、自由度の高いツアー商品を求める人が多くを占めた。今後、旅行会社においては海外旅行が回復するときに向けて、顧客の希望に沿った自由度の高いツアー商品を用意しておく必要がありそうだ。

 

コロナ禍で新たな旅行体験はグランピングが人気

日本で体験したいこととして、桜、雪、料理、日本庭園、温泉などが上位に入っているが、コロナ禍で特に関心が高まったものは、グランピングなどのアウトドアアクティビティだった。実施意向と実施経験の差をみても、全市場でグランピングが突出してポイントが高かった。感染予防の面からも、こうしたアウトドア志向の高まりは世界的な潮流となっており、今後、美しい日本の四季をうまく活かしたアウトドアレジャーを増やせるかが鍵になりそうだ。コロナ禍でよく耳にするようになったオンラインツアーやバーチャル旅行については、実際の実施経験も実施意向もどれほど高くなかった。今後コンテンツとして一層の普及が期待される。

 

旅行先として選ばれるためにはサステナブルな取組は不可欠

海外旅行先の検討に際しては、全体の7割が「サステナブルな取組を重視する」と回答。重視する理由として、環境保全、地域貢献を挙げる人が高年層ほど高く、補助や割引を期待するのは若年層ほど高い傾向となり、世代による違いが表れた。

旅行先での実際の行動としては、ゴミの分別、徒歩や自転車での移動、現地産やオーガニック食材を使った商品の購入などが挙がっていた。宿泊施設に求めるサステナブルな取組としては、食品やプラスチックなど廃棄物の削減・リサイクル、省エネ・節電、地域産やオーガニック食材を使った食事の提供などが票を集めた。

アメニティに関しては廃止よりも、リサイクルできる素材か、無駄な廃棄を出していないかが重要視されていた。サステナブルに伴う宿泊単価の値上げについても全体の6割程度がよいと回答しており、若い年齢層ほど理解を示した。

日本でもプラスチック法案が2022年4月から施行される予定で、宿泊施設のアメニティのみならず、旅行業界全体でプラスチック削減に向け取り組む必要がある。宿泊事業者や観光事業者は自分たちがどんなサステナブルな取組を実践しているのか具体的に示し、また旅行者が旅行中にどこで、どんな体験を通してサステナブルに貢献できるのか、わかりやすく伝えることが重要だ。

 

ワーケーション派は平均1割程度、欧米豪では若い世代ほど肯定的

旅行先で仕事をするワーケーションについては世代別に調査を行ったが、すべての市場で1割程度にとどまった。コロナ禍の新しい働き方として注目を集めるワーケーションだが、日本での盛り上がりに対して、外国人旅行者の訪日旅行におけるニーズとしては低いことが分かった。

またアジア圏では旅行中でも仕事のメールや電話はやむを得ないと答えた人は欧米豪市場のZ世代では51%いるが、ベビーブーマー世代では21%しかおらず、世代間で2倍の差があった。欧米豪市場では若い世代ほどワーケーションに肯定的な傾向で、アジア圏では世代間の差はほとんどなく、中国、タイ、インドネシアが特にワーケーションに肯定的な姿勢であることが明らかとなった。

 

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