データインバウンド
2022年世界平和度指数 15年連続アイスランド1位、欧州上位にランクイン。日本は10位
2022.07.08
やまとごころ編集部国際的なシンクタンクで、オーストラリアのシドニーに本社を置く経済平和研究所(IEP)が毎年発表している「世界平和度指数(GPI)」。今回で16回目を迎える2022年版で、日本は10位にランクされた。報告書が対象にするのは、世界人口の99.7%を占める163の国と地域。「社会の安全・安心のレベル」「進行中の国内・国際紛争の程度」「軍事化の度合い」という3つの領域にまたがって、23の定性的、定量的指標を用いて平和の状態を測定している。
最も平和な国は15年連続でアイスランド
今回の結果では、世界平和度の平均レベルは0.3%悪化。過去15年間で最も低いレベルとなった。90カ国が改善、71カ国が悪化、2カ国が横ばいだが、改善よりも悪化のほうが速い傾向であることが浮き彫りになっている。
スコアの数字は低いほうが平和であることを示し、1位は2008年以来変わらず首位をキープしているアイスランド。2位以下に、ニュージーランド、アイルランド、デンマーク、オーストリアと続く。上位10カ国のうち7カ国をヨーロッパが占める。残り3カ国はアジア太平洋地域で、2位のニュージーランドのほか、9位シンガポール、そして10位が日本となっている。
日本は、「社会の安全・安心のレベル」では全体の3位だが、近隣諸国との関係が1〜5の5レベルのうち真ん中の3であり、1ポイント台が多い他の指標より際立って悪かった。

ワースト5は5年連続で最下位(163位)のアフガニスタン、イェメン、シリア、ロシア、南スダーン。また、平和度が最も悪化した5カ国はいずれも現在進行中の紛争が原因で、そのうち2カ国はロシアとウクライナ(153位)である。
地域別に見ると、アジア太平洋地域は3つの領域のすべてにおいて改善が見られ、とくに「安全・安心」の領域で大幅な進歩があった。一方、北米では、アメリカが2008年以降で最も低い平和度を示した。主な要因は市民の不安である。
唯一の改善領域だった「軍事化」、今後は悪化の可能性も
2021年版と比較した全体的な傾向について、項目別に視点を向けると、23指標のうち、10項目が改善、13項目が悪化した。前年比で最も悪化したのは、「近隣諸国との関係」「難民・国内避難民」「政情不安」「政治テロの規模」で、2008年のGPI開始以来最悪のレベルに達した。インフレの上昇、今後数年間のGDP成長率の低下、債務返済のコスト増を考えると、これらの指標はさらに悪化する可能性がある。
一方、大幅な改善が見られたのが、「テロの影響」「核・大型兵器」「内戦による死者」「軍事費」「投獄率」「犯罪性の認識」といった指標だ。とくに「テロの影響」はこれまでで最も低い指数となった。日本については、このうちの「核・大型兵器」の項目で、トルコとともに大幅な改善が見られた国として報告書の中で言及されている。
3つの領域別に見てみると、「軍事化」が2008年以来5.2%改善し、過去14年間で唯一改善した領域だ。「軍人の割合」は112カ国で低下し、「GDPに占める軍事費の割合」は94カ国で減少した。ただし、ウクライナ・ロシアの紛争や、NATO諸国が軍事費をGDP比2%へと引き上げる可能性があることから、今後悪化する恐れもある。
パンデミックとロシア・ウクライナ問題のGPI指標への影響
新型コロナによるパンデミックの影響は、各国に経済的、政治的危機をもたらした。平和へと歩みを進めていた国々で、政府のパンデミック対応への抗議や暴力が勃発した。ベルギー、フランス、オランダ、オーストリア、クロアチア、イギリスなどのヨーロッパや北米では、ロックダウンに対する抗議という形でデモが行われた。
ロシアによるウクライナ侵攻が指標に与えた影響としては、フィンランド、スウェーデン、ルーマニア、モルドバやバルト3国といった、ロシアに近いヨーロッパの国々において、「近隣諸国との関係」のスコアが悪化している点だ。しかし、2022年のGPIでは、紛争による影響はまだ部分的にしか捉えられていない。近い将来、世界平和度への影響として、食料安全保障の悪化、ヨーロッパにおける軍事化、および軍事費の増大、政情不安や暴力的デモの拡大につながる可能性がある。
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