データインバウンド
サッカー・ワールドカップ2022開催のカタール行きフライト予約急増、周辺の湾岸諸国も恩恵
2022.10.24
やまとごころ編集部4年に一度のスポーツの祭典、時にオリンピックよりも盛り上がるといわれるFIFAワールドカップが2022年11月20日から12月18日までカタールで開催される。スペインの旅行調査会社ForwardKeys(フォワードキーズ)の最新の分析によると、開催国のカタールを除く出場31カ国、および大会期間中に多くのファンが拠点とするUAEからカタールへのフライト予約は現在、パンデミック前の10倍のボリュームとなっているという。
なお、本データは、9月29日時点の、日帰り旅行を含む11月14日~12月24日のカタールへの旅行における航空券の発券実績をもとに作成。基準は2019年だが、UAEとカタールは、2017年から2021年にかけて外交関係を絶ち、直行便がなかったため、UAEに関しては2016年が基準となっている。
(図出典:ForwardKeys)
メキシコ、アルゼンチンからの予約はパンデミック前の70倍以上
下の表を見ていただくとわかるが、ワールドカップ期間中に最も好調に推移すると思われる出発地はUAEで、現在、予約数は2016年の103倍に達している。次いで、メキシコが2019年比79倍、アルゼンチンが77倍、スペインが53倍、日本が46倍、韓国が24倍だ。もちろんこれまでカタールへの観光客が少なかったこともあるだろうが、出場国のなかではメキシコからの応援団が最も熱心に予約していると言っていいだろう。
UAEからの予約が好調なのは、背景にカタールの宿泊施設不足がある。従来、ワールドカップは開催国の首都を含む7、8都市で開催されることが多かったが、今回はカタールの首都ドーハ近郊75km以内にすべてのスタジアムがあるということで、ドーハへの一点集中となる。そうした点からも宿泊施設が不足しており、宿泊はUAEで、試合日には1時間ほどのフライトでカタールへ日帰りする人が多いと予想される。調査時点でワールドカップ期間中にカタールに到着する人のうち、日帰りの人は全体の4%で、その85%はUAEからの入国だという。
▶︎W杯出場国とUAEからカタールへのフライト予約の伸び
(2022年9月29日時点、2019年比)
(国名は上からUAE、メキシコ、アルゼンチン、スペイン、日本、韓国、ブラジル、チュニジア、フランス、米国)
現在カタールへ入国するには新型コロナウイルス感染症の陰性証明が必要だが、ワールドカップの現地観戦の人気を示すように、今年1月から9月のあいだにカタール行きの便について何百万件もがオンラインで検索されている。そのうち12%がUAE発と米国発、7%がスペイン発、インド発、6%が英国発、ドイツ発だ。
▶︎W杯開催時期のカタールへのフライト検索の市場シェア
(2022年1〜9月)
(国名は上からUAE、米国、スペイン、インド、英国、ドイツ、メキシコ、フランス、エジプト、トルコ、オーストラリア、オランダ、サウジアラビア、ブラジル、イタリア)
湾岸諸国への回遊も多く、なかでも米国からの旅行者が最多
カタール開催で周辺の湾岸アラブ諸国(GCC)も恩恵を受ける。というのも、大会期間中のGCCへのフライト予約は現在2019年比で16%増、特に大会前半のグループリーグ期間は61%増になっているのだ。さらに分析すると、ワールドカップの来場者の多くが、湾岸地域の他の目的地にも足を運ぶなどして回遊していることがわかる。例えば、カタールに2泊以上滞在し、さらに他のGCCで2泊以上滞在する数は、2019年のパンデミック前に比べて16倍にもなっているという。
このトレンドの恩恵を最も受けているのはドバイ(UAE)で、回遊者の65%を獲得している。次に回遊者の多い目的地はアブダビ(UAE)で14%、以下ジェッダ(サウジアラビア)8%、マスカット(オマーン)6%、マディーナ(サウジアラビア)3%と続く。
さて、こうした「地域を回遊する観光客」は誰かというと、最も多いのが米国で26%。次いでカナダが10%、イギリスが9%、フランス、メキシコ、スペインがそれぞれ5%と続く。日本からも2%いる。
▶︎湾岸諸国への回遊を含むカタールへのフライト予約
(2022年9月29日時点、2019年比)
(左:国名は上から米国、カナダ、英国、フランス、メキシコ、スペイン、ブラジル、オーストラリア、エクアドル、南アフリカ、ドイツ、アルゼンチン、日本 中:W杯開催中はカタールに滞在、2019年比16倍 右:観戦後に回る他の湾岸地域の市場別シェア)
インサイト部門副社長のオリビエ・ポンティ氏は次のように語っている。「世界的なイベントであるFIFAワールドカップは、最も魅力的な旅行促進イベントの一つであり、開催国のカタールだけでなく、湾岸諸国など他のデスティネーションも恩恵を受けるほどだ。ワールドカップ開催は各国メディアが注目するし、観光振興の観点からも、カタールが大陸間航空路の主要なハブとしてだけでなく、目的地としてその立場を確固たるものにする後押しとなる。通常、カタールの首都ドーハへの渡航者のうち、国内にとどまる人はわずか3%で、97%は乗り継ぎ客だが、ワールドカップ開催期間中は、27%近くがカタールを最終目的地としている。また、UAEはカタールよりはるかに多くのホテルがあり、ドバイとアブダビという2つの世界的なハブ空港があるため、大会から大きな利益を得ることができる」
日本からも観戦チケット所有者向けの観戦ツアーが様々な旅行会社から発売されており、W杯観戦経験者などは個人手配でカタールへ向かう人も多いようだ。日本の初戦は11月23日、強敵ドイツとの一戦となる。
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