データインバウンド
コロナ後の旅行における旅行者の最大の関心事、スムーズなオンライン体験ーIATA調査
2022.11.11
やまとごころ編集部IATA(国際航空運送協会)が2022年世界旅客調査(GPS)の結果を発表。コロナ後の旅行における旅行者の最大の関心事は、簡素化と利便性であることがわかった。
この調査は、航空機を利用した世界222カ国、1万206人の乗客を対象に行ったもので、地域別ではアジア太平洋(34%)、欧州(23%)、北米(27%)、南米(9%)、中東(3%)、アフリカ(3%)、年齢層では41-55歳(36.8%)、56-75歳(28.2%)、25-40歳(27.2%)だった。
アマゾンでのショッピング並みの便利さを求める旅行者
乗客は、旅行の計画を立てる際や出発地を選択する際に、利便性を求めている。特に、計画や予約、オプション選択、支払いなどをワンストップで完了できることを最優先事項を考えているようだ
出発地を選択する際に乗客が最も重視したのは、空港の近さだった(75%)。これは、航空券の価格(39%)よりも重要視されており、つまり多少価格は高くても家に近い空港を選ぶことがわかる。
次に、82%の旅行者が自分の好む方法で支払いができることに満足していることがわかった。
また、18%の旅行者がカーボンオフセットを行っていると回答し、カーボンオフセットを行っていない旅行者の主な理由は、そのオプションを知らなかったから(36%)だった。
こうした便利さを最優先にするからだろう、特定の目的地への旅行を思いとどまった理由として、65%の旅行者が入国審査の複雑さを挙げた。他の抑止力として、コスト(12%)、時間(8%)を挙げたものもいるが、やはり煩雑な手続きが一番の問題だということがわかる。
「最近の旅行者は、アマゾンのような大手小売業者と同じようなオンライン体験を期待しており、航空会社はこのようなニーズへの対応を推進している。これにより、旅行者は便利な支払い方法で好きな旅行オプションを選択でき、旅行体験を自らコントロールすることができるようになる」とIATAの財務決済・流通サービス担当シニア・バイスプレジデントであるムハンマド・アルバクリ氏は述べている。
個人情報共有でスムーズな出入国
また、大半の旅行者は、より便利な手続きのために出入国情報を共有することを望んでいることもわかった。83%の旅行者が、空港到着までの時間を短縮するために出入国情報を共有すると回答している。
ビザが必要な場合、66%の旅行者が旅行前にオンラインでビザを取得することを希望し、20%が領事館または大使館、14%が空港での取得を希望している。
「今回の調査で、旅行に対する障壁が残っていることがわかった。複雑なビザ手続きを行っている国は、旅行者がもたらす経済的利益を失っている。ビザ要件を撤廃した国々では、観光と旅行経済が繁栄しているし、特定のカテゴリーの旅行者にビザの取得を義務付けている国にとっては、オンライン手続きの利用や事前の情報共有に対する旅行者の意欲を活用することは、双方にとってメリットのある解決策となるだろう」とIATAのオペレーション・安全・セキュリティ担当シニア・バイスプレジデントのニック・カレン氏は語る。
「45分で空港を出たい」
旅行者はまた、空港での利便性を向上させ、手荷物を管理するために、テクノロジーを活用し、出国までのプロセスを見直すことに積極的だ。
75%の乗客が、パスポートや搭乗券の代わりに生体認証データを使用することを望んでいる。回答者の3分の1以上がすでに旅行で生体認証の利用を経験しており、その満足度は88%に達してる。もっとも、約半数の旅行者がデータ保護に懸念を抱いているのも事実だ。
また、旅客は、空港へ行く前に様々な手続き完了していていることを望んでいる。たとえば、44%の旅行者が、チェックインを空港外で行うことを希望しており、入国審査手続き(33%)、手荷物預け入れ(32%)と続く。
さらに乗客は、手荷物の取り扱いに関するより多くの選択肢に関心を持っていることがわかった。67%が自宅での集荷と配達に、73%が遠隔地でのチェックイン・オプションに興味を示している。80%の乗客は旅行中に手荷物を監視できれば、手荷物を預ける可能性が高くなると回答。50%が電子バッグタグ(手荷物引換証がペーパーレスになる)を使用したことがある、または使用することに興味があると回答している。
また、預け入れ手荷物がない場合、30分以内に空港でのすべての手続きを終えたいと考えており、手荷物を受け取る必要がある場合では、45分以内に空港を出たいと考えていることもわかった。
今回の調査結果について、IATAのニック・カレン氏は次のようにまとめている。
「乗客は、空港での手続きの利便性を向上させるために、テクノロジーが重要であると明確に認識している。 空港に到着してすぐに飛行機に乗れること、出入国審査では生体認証を利用してより速く通過できること、手荷物がどこにあるのかを常に把握できることを望んでいる。このような理想的な体験をサポートするテクノロジーは存在するものの、それを実現するためには、バリューチェーン全体および政府との協力が必要だ。また、乗客にこのような体験をサポートするために必要なデータを安全に保管できることを納得してもらう必要がある」
コロナ禍の旅行は、各国政府が課す渡航要件のため、煩雑で時間のかかるものだった。旅行が再開されたいま、乗客は利便性向上を求めている。そのためには、デジタル化と生体認証の利用による旅のスピードアップが鍵となるだろう。
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