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水際対策緩和の中国 空の旅が回復へ、春節に向けて航空券予約が急増

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スペインの旅行調査会社フォワードキーズ(ForwardKeys)は「眠れる龍が目覚める」と題して中国の旅行需要の回復をレポートした。その最新データによると、中国がこれまで3年にわたって維持していたゼロコロナからウィズコロナへ政策転換を図ったことで、航空券の予約が急増しているとのことだ。

 

中国国内線予約は年末にパンデミック前の5割まで戻す

12月7日に中国当局が国内の地方間の航空旅行ではPCR検査の陰性証明を義務付けないと発表すると、国内線の予約は前週比56%増、翌週も69%増と急増した。12月26日には航空機を利用した国内旅行のコロナ関連の規制をすべて撤廃すると、予約は再び急増し、年末の最終週にはパンデミック前の2019年同期の50%の水準に達した。

  
▶︎中国国内線のチケット販売の推移・2022年9月7日〜12月28日
(オレンジ=昨年同期比、青=2019年同期比)

1月3日時点の、来る春節期間(1月7日~2月15日)の国内線予約状況は、平均でパンデミック前の2019年比で71%減、昨年比8%減、人気都市は北京、上海、成都、昆明、三亜、深セン、海口、広州、重慶となっている。12月7日の中国政府による緩和発表前は、2019年比で91%減だったので20ポイントほど回復していることになる。

▶︎中国春節期間の国内線予約の推移・2023年1月7日〜2月14日
(青=昨年同期比、水色=2019年同期比)

国際線の回復は第2四半期か

中国の航空規制当局は、1月6日までにフライト能力をパンデミック前の70%に、1月31日までに88%に回復させると発表した。ただ、航空業界はスタッフを再雇用し、フライトの安全性とサービスに関するすべての要件を満たすためにある程度の時間が必要であるため、完全な回復はすぐには不可能と見られている。

また、1月8日は、中国への国際線フライト数の上限と入国時の検疫措置が撤廃された。さらに、中国国民は期限切れのパスポートを更新し、新しいパスポートを申請することができるようになった。

さて、12月26日から1月3日までの国際線の予約は、前年同期比では192%と急増したが、2019年同期比では85%減となっている。この時点で最も人気があるのは、マカオ、香港、東京、ソウル、台北、シンガポール、バンコク、ドバイ、アブダビ、フランクフルトへの往復便だ。特筆すべきは、従来から中国と欧米を結ぶ主要なゲートウェイであったアブダビへの予約でさえ、2019年同期比で51%減ということだ。アブダビでの乗り継ぎ以降の往路予約を見ると、11%がパリ、9%がバルセロナ、5%がロンドン、3%がミュンヘン、3%がマンチェスターに向かうという。なお、12月26日から1月3日までになされた予約の67%は、春節期間の旅行となっている。

ForwardKeysのインサイト部門長のオリビエ・ポンティ氏は、「2023年の春節には3年ぶりに海外旅行が回復しそうだが、世界中で中国人観光客の復活を見るには、もう少し待つ必要がありそうだ」として、次の3つの理由を挙げている。

第一に、現在の国際線定期便のキャパシティは2019年の10%程度であり、交通権や空港枠の認可要件があるため、航空会社が数カ月以内に装備を整えることは困難なこと。

第二に、航空券の価格は依然として高く、12月の平均航空運賃は2019年の160%となっていること。とはいえ、中国入国時の隔離が3週間から7日間に短縮された2022年6月以降、そして11月に5日間に短縮されて以降、下のグラフのように運賃は下がる傾向にある。今年1月8日には検疫措置が撤廃され、今後運航数が増えればさらに下がる可能性もあるだろう。

 

▶︎中国から国際線航空料金の推移・2022年1月〜12月(2019年同期比)

3つ目の要素は、各国が水際対策を強化していることだ。米国、英国、インド、カタール、カナダ、オーストラリア、EU加盟全27カ国など一部の渡航先では、中国人旅行者のフライト前のPCR検査を義務付け、日本、韓国、イタリアなど他の国では、到着時に検査を行い、陽性者には検疫を行うとしている。さらに、パスポートの更新やビザの申請がボトルネックになる可能性がある。

ポンティ氏は結論として、「現時点で中国アウトバウンド市場の回復を予測すると、航空会社が5月の連休、6月の端午の節句、夏休みを含む春と夏に向けた運航ダイヤを計画する今年の第2四半期には強く持ち直すと思われる」とした。

 

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