データインバウンド

2023年航空会社ブランド価値ランキング、米デルタ5年連続1位、中国の躍進3社トップ10入り

印刷用ページを表示する



パンデミック下の人の移動制限により、航空業界は苦境が続いており、2022年も大幅な業績悪化が続いていたが、2023年は総収入7790億米ドル(約182兆8億円)、純利益が47億米ドル(約6533億円)になると見込まれている。要因は幾つか挙げられるが、一つは航空旅行への需要が高まっており、世界経済の盛り返しや旅行制限の撤廃などを受け、パンデミック前の2019年レベルの85.5%に達するとの期待があること。また燃料価格も2022年の1バレルあたり138.80米ドルから111.90米ドルに下がることが予想され、航空会社のコストが下がり利益が増加するとの見込みがある。

全体的に明るい見通しの2023年の航空業界ではあるが、ウクライナ紛争やインフレ、労働力の不足などが追い風を阻むことも考えられるため、コストや効率を考え経営に取り組むことが必要だ。

こうした点を踏まえ、世界最大級の独立系ブランド価値評価機関であるブランド・ファイナンスが公開した、2023年版航空会社と空港のブランド価値ランキングを見ていこう。ブランド価値とは、特にブランドの評判に関連して得られる収益などの、現時点での価値を指す。

 

デルタ航空が5年連続1位、南米進出と持続可能性が高い評価

航空会社ランキングの1位に輝いたのは、5年連続でアメリカの航空会社デルタ航空。前年比22%増の89億米ドル(約1兆2371億円)の評価だった。これはチリに本社を置くLATAM航空グループへの20%出資が暫定的に承認され、この買収で南米でのビジネス拡張が可能になることが大きな要因だ。また、SPV(持続可能性に関する総合的価値)でも航空会社トップの5億4400ドル(約756億円)となり、1位獲得に貢献している。

総合的には2022年と同じく、トップ5のうち4社がアメリカの航空会社で、そこにエミレーツ航空が加わる形となり、2021年から3年連続同じ顔ぶれになった。しかし6位以下では中国が健闘し、6位には前年の9位から上昇した中国南方航空、7位には前年11位から上昇した中国東方航空、8位には前年と同じく中国国際航空が入った。日系はANAが11位、JALが18位にランクインした。

 

持続可能性に関する評価、ANAが9位にランクイン

SPV(持続可能性に関する総合的価値)のランキングでもデルタがトップとなったが、日系航空会社ではANAが1億8500ドル(約257億円)の価値を認められ、9位に入った。なお、持続可能性に関する様々な評価指標を加えたスコアシステム、SPSでは2050年までに温室効果ガス排出量ゼロを企業目標として強く掲げたエバー航空が、10点満点中5.0で1位になった。ANAはこのスコアシステムでは4.89を獲得し、1位のデルタの3.87より高い数字となっている。

 

成長著しい航空会社トップはエチオピア航空

急速な成長を遂げた航空会社1位はアフリカのエチオピア航空で、前年比79%増で約5億ドルの評価となった。エチオピア航空では、まだ自国の航空ブランドがないナイジェリアの航空会社を立ち上げるプランがある。それが成功すれば今後12年間で航空機の数が現在の140機から270機以上になり、益々の成長が見込まれる。2位は、バルセロナを拠点とする格安航空会社のブエリング航空で増加率は44%、これはスペイン国内線の急激な回復と、すでにパンデミック前の業績を上回っているラテンアメリカ路線の成功による。3位はユナイテッド航空で42%の伸びを示した。

 

ブランド価値に経営成績など加えたブランド力ランキング、ANAが1位

ブランド価値に、株主資本や経営成績などの評価指標を加えたバランス・スコアカードから算出した「航空会社のブランド力ランキング」では、日本の航空会社ANAが100点満点中の85.0点を獲得し、トップに輝いた。ANAは2年間の休止を経て、2022年に国際線の運航を再開。ニューヨークやロンドン、パリなどの人気の路線を復活させてブランド価値が5%上昇、前年の2位からトップに登り詰めてAAAの格付けとなった。2位は前年の26位から急上昇した大韓航空で80.6点、3位はマレーシアのエアアジアで共にAAAー。JALは78.3点で前年の7位から6位に上昇、AA+の格付けになった。

 

世界一ブランド価値のある空港はパリ・シャルルドゴール

世界で最も価値がある空港には、前年比9%減ながら7億米ドル(約973億円)となったパリ・シャルルドゴール空港が、3年連続1位に輝いた。2位は英国ヒースロー空港でこちらも9%減にもかかわらず前年と同じポジションを保った。3、4、5、6位も前年と変わらず、シンガポール・チャンギ空港、韓国・仁川空港、ドイツ・フランクフルト空港、そして羽田空港となった。7位と8位には、トップ10外から米国・ロサンゼルス空港と中国・上海空港がランクインした。

 

空港ブランドパワーで羽田空港3位、成田空港6位となり共に1ランクアップ

空港ブランドパワーランキングは100点満点中85.9点で、シンガポールのチャンギ空港が前年のランクを維持し1位、2位がこちらも前年と同じく韓国の仁川空港で81.1点、3位には、前年4位から浮上した羽田空港で77.2点を獲得した。4、5位はロンドン・ヒースロー空港と、フランスのパリ・シャルルドゴール空港、6位には、前年7位から浮上した成田空港がランクイン、69.8点だった。



(画像出典:BRAND FINANCE AIRLINES 50 2023)

最新のデータインバウンド