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花火大会の観覧席「有料化」進む、2023年は7割が導入。2人で30万円のプレミアム席も

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夏休み恒例の花火大会。今年は4年ぶりに開催されるところも多い。先日開催されたびわ湖大花火大会では、有料観覧席と道路との間に高さ4メートルのフェンスをめぐらし、周囲から花火が見えないようにしたことが話題になったばかりだ。主催者側は混雑を防ぐために、滋賀県外の観光客には有料観覧以外の来場の自粛を促し、有料観覧席を2019年より1万席増の5万席用意していたという。

この例にもあるように、近年花火大会の観覧席の有料化が進んでいる。帝国データバンクが2023年7月〜9月に開催される全国の花火大会のうち、動員客数が10万人以上の106大会を対象に、「有料席」の導入状況について行った調査・分析によると、主要花火大会の7割が「有料化」され、有料席の8割がコロナ前から値上がりしていることがわかった。

 

全国に広がる有料化

下の図にあるように、全国106の主要な花火大会のうち、72の花火大会は2019年から「有料席」を導入している。2020年以降に導入した5大会を加えると、今年は7割を超える77大会が観覧エリアに「有料席」を導入した。中には全席指定の有料化に踏み切ったケースもあり、花火大会の有料化が全国に広がっている。

 

 

プレミアム体験で高価格帯も

また、2019年から有料席を導入している72の花火大会のうち、85%にあたる61で、2023年の有料席が「値上げ」されたこともわかった。価格改定前後の有料席料金をみると、複数種類が用意された観覧席のうち、1区画(席)あたりの「最安値」平均価格は2023年は4768円となり、2019年の平均価格に比べて約3割・1092円上昇した。一方、最も高額な有料席のうち「最高値」の平均価格では3万2791円となり3万円を突破。2019年の2万1609円からも約1.5倍になった。

コロナ前に比べ、各花火大会で最前席や区画当たりの面積を広く確保したテーブル席、グランピングシート席など、プレミアムな体験を提供しようと多様な種類の観覧席が導入され、高価格化が進んでいる。なお、有料席の設定がある77大会のうち、最も高額な有料席は「小田原酒匂川花火大会」(神奈川県・8月5日開催)で販売された「Sタイプ/ベット席」の30万円(大人2名)だった。

 

観覧客の3割で「ゆっくり見たい」ニーズ

花火大会で有料席の導入や値上げが続く背景として、打ち上げ花火の多くを占める輸入花火の価格や運営コストの増加がある。こうしたコストアップが各花火大会の運営費を圧迫していることから、「有料席」導入や価格の引き上げにより、新たな収益源を確保しようとする動きが加速している。また、収益確保以外にも観覧者の位置や人数を事前に把握しやすいことから警備においても有効といった側面があり、花火大会に関わらず、無料イベントの有料化は進んでいる。

その一方で、観客から「有料席」を望む声も少なくない。株式会社JTBが2018年に全国2016人を対象に行ったアンケート調査では、花火大会の有料席を「購入したことがある」と回答した割合は15%だった。ただ、「購入したことはないが、検討したい」という回答者の割合は21%を占め、全体で3割超の利用者に有料席のニーズがあることが分かった。規模が大きい花火大会では、雑踏や人混みから離れて「ゆっくり見たい」という観覧客がコロナ禍を経てさらに増えているとみられ、花火大会の「有料席」導入や値上げの動きはさらに広がると予想される。

2023年の夏、みなさんはどこで花火を楽しみますか?

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