データインバウンド
2023年アドベンチャートラベルの動向、旅行需要急回復で企業の純利益押し上げ。文化体験の人気急上昇
2023.09.05
やまとごころ編集部9月11日から北海道でアドベンチャートラベル・ワールドサミットが開催されるが、主催者であるアドベンチャートラベル・トレード・アソシエーション(以下:ATTA)は毎年、『アドベンチャートラベル・インダストリー・スナップショット』と題するレポートを発表している。
最新版では2023年4月に行ったアンケート調査の結果から、2022年のアドベンチャートラベルの売上、2023年の予約状況、旅行動向など、現状と展望をまとめた。
この調査は2006年から、増加するアドベンチャートラベルのツアーオペレーターを対象に、旅行者の属性、目的地、 アクティビティに関する傾向や事業運営に関して行なっており、今回は、145社(うち110社がフルに、34社が部分的)がアンケートに回答した。
(図版出典:2023 Adventure Tour Operator Snapshot Survey)
2022年の業績は回復傾向、北米では2019年を上回る
まずはアンケートに回答したツアーオペレーターの属性から紹介する。ツアーオペレーターの本拠地は北米が32%と最も多く、欧州の26%、南米の19%が続く。アジアはその次に多く全体の10%を占めた。
運営形態は、インバウンド(サプライヤー)が41%、アウトバウンドとインバウンドの両方を扱うのが30%、アウトバウンド(バイヤー)が29%となっている。また、雇用するフルタイムのスタッフ数は10人までが全体の65%を占め、パートタイムでは10人までが90%を占めており、アドベンチャートラベルを扱う事業者の多くが小規模であることが分かる。
▶︎ツアーオペレーターの本拠地
次に2022年のツアーオペレーターの実績を見ていく。2022年の全地域の平均送客数は4243人で、2021年の1355人から213%増加し、パンデミック以降初めて2019年の数字(3974人)を上回った。
地域別では、唯一北米のツアーオペレーターが2019年よりもはるかに多くの旅行者にサービスを提供したが、南米も9割近くまで回復しており、他の地域でも前年と比べると大きく回復傾向にある。2022年に送客数がゼロだった回答者はわずか1%で、2021年の9%、2020年の16%から改善した。
▶︎2022年の送客数
ガイド1人あたりのゲスト数については、全地域の平均で6人となった。ガイド1人あたりのゲスト数が少ないのは中米/カリブ海諸国とアジアの1人対4人で、ガイド1人あたりのゲスト数が多いのはヨーロッパで1人対8人だった。
2022年のゲストのタイプはカップル(黄緑)が最も多く40%で、グループ(赤)25%、単身(青)18%、家族(オレンジ)17%となっている。地域別に見ると、ヨーロッパは他と比べると単身(1人)が多く、中東、アフリカ、アジアはグループの割合が最も多かった。
▶︎2022年のゲストタイプ
左から:平均、北米、南米、欧州、中米・カリブ海、中東、太平洋、アフリカ、アジア
また男女比は女性51%、男性47%で、単身だと女性53%、男性37%となった。例年通り、2022年のアドベンチャートラベラーは男性より女性の方が若干多かった。
年齢層では全地域の平均で、51〜60歳が28%と最も多く、次に41〜50歳の22%だった。太平洋地域では51〜60歳の40%に次いで61〜70歳が32%と多く、他の地域よりも年齢層が高いことが見て取れる。また、アジアは41〜50歳が30%と最も多く、29〜40歳も25%と、比較的若い世代が多いと言えそうだ。
▶︎2022年のゲストの年齢層
左から:平均、北米、南米、欧州、中米・カリブ海、中東、太平洋、アフリカ、アジア
ツアーオペレーターの収益については2021年以降回復傾向にあり、回答者の90%が前年より増加していると答えた。また、2019年の水準に戻り始めているところもあり、収益が5万ドル未満の企業の割合は2021年の30%と比べ14%と大幅に減り、200万ドル以上の企業が12%から33%と大幅に増えている。
▶︎20219年〜2022年の収益の推移
左から:5万ドル未満、5万〜10万ドル、10万〜20万ドル、20万〜50万ドル、50万〜100万ドル、100万〜200万ドル、200万〜500万ドル、500万〜1000万ドル、1000万ドル以上
また、ツアーオペレーターは今後を見据えて、68%がTravellife for Tour Operatorsをはじめとしたサステナビリティ認証を保有または取得に向けて取り組んでいると答えている。これは前年の45%から増加した。
2023年の旅行トレンド、文化体験が人気上昇
それではここから2022年に実施されたアドベンチャートラベルの特徴と2023の傾向を見ていく。
回答したツアーオペレーターの顧客のなかで、2022年に最も人気のあった旅行先トップ3はアメリカ(12%)、ペルー(9%)、イタリア(9%)だった。
一方、出発地では、アメリカ(55%)と西ヨーロッパ(27%、イギリス、オランダ、フランス、スウェーデン)が多かった。
また、最も人気のあったアドベンチャートラベルのアクティビティは以下の通り
1 ハイキング・トレッキング・ウォーキング
2 サファリ・野生動物観察
3 サイクリング
4 文化体験
5 料理
6 4WDでオフロード走行
なお、2022年の予約傾向から2023年のトレンドを予測すると以下のようになった。文化体験が昨年6位から2位に上がってきているのが特徴的だという。
1 ハイキング・トレッキング・ウォーキング
2 文化体験
3 料理
4 サイクリング(山や未舗装路)
5 サファリ・野生動物観察
6 ウェルネス重視のアクティビティ
2023年のアクティビティのトレンドを地域別に見ると、文化体験はアジアと欧州で1位、南北アメリカでは1位のハイキング・トレッキング・ウォーキングに次いで2位と、人気が高まっているのが伺える。そのほか、3位には4地域すべてで料理が入り、野生動物や自然の写真撮影が南米とアジアで5位に入った。
▶︎地域別のアクティビティトレンド
左項目上から:北米、南米、欧州、アジア
また、2023年に人気のある旅先予測は以下のようになった。上からトップ8は、地中海、西欧、南米、北欧、中米、オセアニア、中東、米国となった。その後、インド・南アジア、東南アジア、北アフリカ、東アフリカ、カナダ、北東アジア、北極、南アフリカと続いた。
▶︎2023年の人気旅行先
人気の旅程は8泊で約43万円、地域還元は8割に迫る
2022年に最も人気のあったアドベンチャートラベルの価格は航空運賃をのぞくと、平均8泊で3000ドル(約43万8千円)で、その76%(平均2280ドル)が地元のサプライヤーとの契約に費やされている。ここ数年は地元のサプライヤーとの契約率が65~70%で推移していたので、これまでで最高の数字となった。旅行中に地域社会との関わりやサステナブルな行動を大切にすることの重要性を示している。
▶︎2022年に最も人気のあったアドベンチャートラベルの価格
最後に2023年の予約状況の前年からの変化については、国内旅行については57%の回答者が2022年から変化はないと予想したのに対し、海外旅行については引き続き回復傾向にあり、回答者の87%(多くの予約あり55%、鈍いが増えてはいる32%)が海外からの旅行者からの予約が増加すると見ている。
▶︎2023年の旅行の予約状況
赤=国内、オレンジ=海外
また、純利益の見通しについても、2019年より増加すると答えたのが63%、変化なしが12%、減少が25%だった。
▶︎2023年の純利益見通し比較
左=2022年比、右=2019年比
黄緑=増加、オレンジ=変化なし、赤=減少
2023年の調査では、アドベンチャートラベル業界は全体的にコロナ禍で被った経済的影響から回復しており、収益や送客数は増加し、2019年の数字に近づいていることが明らかになった。
レポートは最後に、「ATTAでは、アドベンチャートラベルは業界に欠かせないものであり、人々や異なる文化間の誤解を減らすための旅行体験を提供し続けるべきだと考えている。人々が家に帰ったときにより良い行動をするように鼓舞し、また、人々や地域を搾取するのではなく、支援することが大事だ」とした。
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