データインバウンド
2022年 世界の越境EC市場、円安が追い風の日本 売り上げ増。シェア世界一は中国
2023.09.14
やまとごころ編集部経済産業省はこのほど「令和4年(2022年)度電子商取引に関する市場調査」の結果を発表した。それによると、2022年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は前年比9.91%増の22兆7449億円(2021年20兆6950億円)に拡大。また、2022年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は前年比12.8%増の420兆2354億円(2021年372兆7073億円)に増加している。また、EC化率(すべての商取引においてEC[電子商取引]が占める割合を示す数値)は、BtoC-ECで9.13%(前年比0.35ポイント増)、BtoB-ECで37.5%(前年比1.9ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展している。
この報告書では国内EC市場に加えて、「世界のEC市場の動向と日本・米国・中国3カ国間の越境EC市場規模」と題した項目もあり、ここでは日本と中国の越境EC市場ついて詳しく見ていく。
なお、越境ECの定義についてEUでは、「消費者が居住している国以外にある販売者または提供者からの全ての購買」とし、自国内に所在している販売者からの外国製品の購入は含まないとしている。ただ中国のTmallGlobal(天猫国際)のように、中国事業者のECモール上に日本企業が出店し、多数の日本製品が販売されている事例もあることから、本調査ではこれも「広義の越境EC」として含めている。
(図・表出典:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」)
2022年世界のEC市場、中国のシェアは半分超
2022年の世界のBtoC-EC市場規模は5兆4400億米ドル(約800兆円)、EC化率は19.3%と推計された。世界的な新型コロナウイルス感染症拡大を背景にEC需要が増加し、市場規模及びEC化率は増加を続けている。2026年には7兆6200億米ドル(約1,121兆円)、EC化率は23.3%にまで上昇すると予測されている。
次のグラフはBtoC-EC市場規模トップ10を示したもので、中国が世界の50.4%と圧倒的シェアを持ち、次いで米国が18.4%、イギリス4.5%、日本の3.1%、韓国2.5%と続く。
2030年の世界の越境EC市場、大幅増が期待。伸び率年平均26%と予測
世界の越境EC市場拡大予測については、2021年の時点で7850億米ドル(115兆円)と推計されているが、2030年には7兆9380億米ドル(1,168兆円)にまで拡大すると予測されている。この間の年平均成長率は26.2%と推測されており、越境EC市場の規模は拡大し続けると見られる。
その背景だが、消費者目線で捉えれば、越境ECの認知度の上昇、自国にはない商品・限定品への取得欲求や、自国よりも安価に入手できる商品の存在、商品やメーカーに対する信頼性等が挙げられる。事業者目線で捉えれば、越境ECによって消費者ターゲットを世界に拡大しようとする事業者の積極姿勢が挙げられよう。また物流レベルの向上も越境ECを促進する要因の一つになっていると考えられる。
日中米3カ国の越境EC市場、圧倒的規模を誇る中国市場
次に、日本、中国、米国3カ国間の越境EC市場規模を見ていく。2022年のEC購入額は中国5兆68億円(前年比6.2%増)、米国2兆2111億円(同8.3%増)、日本3954億円(同6.1%増)の順で多く、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆2569億円(前年比5.6%増)、米国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆3056億円(前年比6.8%増)となり、前年に続き増えた。
2022年、日本企業を取り巻く越境EC市場動向とは?
コロナ禍の行動制限が行われてから世界的にDXが加速した。日本国内も同様で、2022年の越境ECは32年ぶりの歴史的な円安が追い風となって日本商品の需要が高まり、越境ECの流通額(売上)は増加した。原料費や輸送費の高騰、メーカーからの仕入れ値が高騰するというマイナス要因もあったが、それを上回る円安の影響があったからだ。海外ユーザーから見た場合、日本市場はいわばバーゲンセール状態だった。
円安による日本商品の需要高まりに伴い、2022年の海外ユーザーの消費者行動をまとめると、大きく以下の3点となる。
1)円安で海外ユーザーの裾野が広がり、従来は購入を躊躇していたユーザーが越境ECを利用するようになった。新規の越境ECユーザーの開拓により、今後も成長が期待される。
2)円安で海外ユーザーにとって日本商品の割安感が出たことによるまとめ買いが増加した。例として、インバウンド旅行者が従来は訪日時にまとめ買いしていたような薬、ドラッグストア商材などが越境ECで購買され、まとめてよく売れた。
3)客単価が大きく伸びた。「腕時計、高級ブランドバッグ、トレーディングカード」等の高額商品の販売が好調で、客単価上昇につながった。
一例として、円安効果を調査したデータ(BEENOS株式会社がプレスリリース[2022.11.14]で公表した数値)があるが、それによると2022年1月1日〜7日(1米ドル=115円台)の購入金額を100とした場合、2022年9月22日〜28日(1米ドル=145円台)の購入額は150.9となり約1.5倍に増加している。
同様に円安による顧客単価に着目すると、2022年1月1日〜7日(1米ドル=115円台)の顧客単価を100とした場合、3月22日〜28日(1米ドル=120円台)の購入額は105.4、9月1日~7日(1米ドル=140円台)の購入額は110.8となり、約1.1倍に増加した。
海外に人気の日本の商品は? キーワードは「資産」「コンテンツ」
以下の表は、海外の消費者が越境ECで購入する日本の商品のうち、高価格帯商品の売れ筋商品に関して調査した結果だ。1位の「ブランド時計」、2位の「トレーディングカード」、6位の「ブランドファッション(高級バッグや服飾)」など、資産性があるものがよく売れた。また3位の「アニメのフィギュア」、10位「特撮のフィギュア」などコンテンツ系も人気があった。
その他、日本のEC事業者にヒアリングした結果、越境ECの売れ筋商品は定番に加えて日本限定商品へのニーズも高かったという。「コンテンツの分野ではK-POPの商品が多く売れる。K-POP商品はマーケットがあるところに優先的に商品を流すため、本国韓国よりも米国、日本の2大市場に集中する。そのため、日本市場ではK-POPの商品数や種類が多い状況となっており、売上が伸びた」、「ゴルフ・アウトドア系や釣り具は相変わらず売れている」との声があった。
後編では、中国の越境ECについて詳しくお届けする。
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