データインバウンド
2023年世界で最も利用者の多いハブ空港はどこ? 中東・米国など堅調、回復率に地域差も
2023.10.12
やまとごころ編集部スペインの旅行調査会社ForwardKeysが2023年の世界航空輸送量の分析を発表。2023年1〜7月までの空港別出国者数と2023年8月から12月までの予測データと合わせて分析したところ、コロナ以降、世界の主要ハブ空港における国際線旅客出国数の回復度合いにはかなりのばらつきがあることがわかった。
インスタンブール空港は2019年比約4割増
それでは2023年のランキングを見ていこう。
1位はドバイ国際空港で、すでに2019年の水準まで回復し、トップの座をキープしている。好調な業績の理由としては乗り継ぎの利便性が挙げられる。世界の空の交差点として、欧州、北米、インドが海外旅行を再開したことで大きな恩恵を受けた。また、中国の長距離路線が徐々に回復していることから、出国便の座席数は今後さらに増加するとみられる。
2位のロンドン・ヒースロー空港も同様に目覚ましい回復を示し、同空港を出発する国際線旅客数は2019年の水準を2%上回った。北米と欧州間の大西洋横断旅行の需要が高いことが重要な要因となっており、ロンドン発のアメリカ行きの便の輸送量が特に伸びている。
また、トップ20の中で最も高い伸び率を示したのがイスタンブール空港だった。トルコへのレジャー旅行への関心の高まりもあり、国際線の旅客出国数が2019年比で37%増と大幅に伸びた。一方、ドーハのハマド国際空港は15%増の伸びを示したが、これは2019年の外交危機の際に影響を受けた中東・北アフリカ地域内の路線の復活を反映した増加だ。ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港(1%増)とダブリン空港(3%増)の1桁成長は、コロナ後のアメリカでの旅行需要の回復と、アメリカ人旅行者の入出国地点としてアイルランドが引き続き重要なポジションにあることを反映している。
アジアでは、域内の旅行者数はまだ2019年のレベルには戻っておらず、上位常連の香港国際空港でさえ2019年比46%減と低迷している。ただ、今後中国のアウトバウンド旅行需要の伸びが、アジア地域の回復を加速させるだろうとみられている。こうした状況でも、ソウルの仁川国際空港とシンガポールのチャンギ空港は、それぞれコロナ前の77%と85%と好調な数字を示した。
旅行意欲旺盛なアメリカ人旅行者
国際線旅客を出発国別に区分したデータでも、海外旅行の回復ペースの差がみてとれる。
好調なのは北中南米で、2019年比1%減まで回復している。特にアメリカでは2019年比3%増と、海外旅行への意欲が旺盛だ。これは、同国の比較的安定した経済状況と米ドルの強い購買力を反映している。コロナ後のアメリカ人旅行者にとっての重要な目的地は、カリブ海諸国、ヨーロッパ、インドや日本を含むアジアとなっている。
隣国のカナダはアメリカよりも海外旅行の再開が遅れており、出国者数は2019年の水準を16%下回っている。南米ではブラジルも同様で、国内旅行需要は旺盛だが、渡航規制が完全に解除されたにもかかわらず、国際線出国者数はコロナ前より17%少ないままだ。
一方、欧州では、ウクライナ紛争の経済的影響に起因する不確実性が旅行者にさまざまな影響を及ぼしている。EU諸国の出国数はコロナ前の水準にほぼ回復しているものの、国によってその差が大きい。スペインとイタリアではそれぞれ2019年比2%増と1%減まで回復している一方、オランダとドイツの旅行者の出国者数は同15%減となっている。
イギリスでは、2023年上半期までの空港でのストライキや不安定な経済状況により、出国数は2019年の水準を11%下回っている。しかも、懐具合から旅先にも変化が出ており、南ヨーロッパの人気旅行先からトルコやモロッコのような物価の安い旅行先へシフトしているのが特徴的だ。
アジアのトップ市場の回復ペースはさらにアンバランスな様相を呈している。インドの旅客数は2019年水準までほぼ回復しているが、これは海外に住む親族を訪ねる旅行需要が牽引しているためだ。一方、韓国と日本の海外旅行はコロナ前の水準の3分の2程度にとどまっており、アジア太平洋市場の回復ペースの遅さを反映している。
▶出発国別の国際線旅客数(2019年と2023年の比較)
コロナ禍で長期にわたる旅行制限を受けていたアジア太平洋地域では、消費習慣に変化が出ており、海外旅行よりも、国内旅行と旅行以外のレジャー活動に重点が移っている。この地域の多くの国々では、海外旅行の全面的な再開はまだ比較的最近の出来事であり、こうした行動の変化がどの程度永続的なものとなるかはまだわからないという。
このように、世界の旅行者数の変化はコロナ前の水準と比較すると一様ではないが、全体的な見通しは楽観的であるとレポートはまとめている。
最新のデータインバウンド
【訪日外国人数】2024年11月訪日客数318万7000人、累計数3337万人で年間過去最高を更新 (2024.12.19)
2024年アジア太平洋地域の消費トレンド、クレカ支出の3割超が旅行費用に。ミレニアル世代の支出旺盛 (2024.12.17)
世界のトップ100都市デスティネーション・インデックス2024発表、1位はパリ。3位にランクインした東京の評価ポイントは? (2024.12.12)
2024年1-9月の国際観光客数11億人突破、観光収入も大幅増。欧州などで2ケタ成長ーUN Tourism (2024.12.09)
観光立国タイの新たな一歩、同性婚法制化が年3000億円の観光収入増と予測。雇用増への影響は? (2024.12.05)
【宿泊統計】2024年9月外国人延べ宿泊者数2019年比49.8%増の1238万人泊。金沢への注目高まる石川県が伸長 (2024.12.02)
障がいを持つ人の訪日旅行に対する期待と現実の差が明らかに、正確な情報発信も課題に ーアクセシブルツーリズム調査 (2024.11.29)
航空機利用の旅行者が求める空港体験の効率化、生体認証も5割が経験ー2024年 IATA旅行者調査 (2024.11.25)
【訪日外国人数】2024年10月訪日客数331万2000人 単月最高を記録、累計は過去最速で3000万人を突破 (2024.11.21)