データインバウンド
2023年夏の水際対策撤廃後、大きく変化する中国の海外旅行動向。中東が人気、米国伸び悩み
2023.11.06
やまとごころ編集部パンデミックを経て、2023年の海外旅行は2019年の勢いを取り戻しているかのようだ。飛行機予約のデータを分析したForwardKeysのレポートを紹介した前編では、「世界とアジア太平洋地域の動向」をお伝えした。この後編では、中国のインバウンドとアウトバウンドの現状、国慶節休暇の動向、旅行スタイルの変化について解説する。
(図出典:ForwardKeys)
中国の出入国者数、回復速度は遅いが順当
アジア太平洋地域では南アジアが回復の先陣を切っているが、東アジアも日本を筆頭に、香港、韓国で2019年の水準に近づきつつある。中国に関しては戻りが遅れているが、水際対策の全面撤廃が8月30日だったことを考えれば、順調に回復しているともいえる。下の中国の出入国者のグラフを見ていただきたい。今年1月からインバウンド、アウトバウンドともに徐々に回復を見せ始め、8月末に一旦ピークを迎え、ゴールデンウィークと呼ばれる中秋節・国慶節8連休(9月29日~10月6日)にはどちらも2019年同期比30%減まで回復している。
▶︎中国の出入国者数の推移
(青=インバウンド、オレンジ=アウトバウンド)
中秋節・国慶節休暇の人気旅行先はエジプト
中国のアウトバウンドで中秋節・国慶節休暇を含む9月23日〜10月8日に最も回復した海外のデスティネーション・トップ3は、香港(2019年同期比13%増)、マレーシア(同0.5%増)、シンガポール(同8%減)だった。アジア以外ではエジプト(同91%増)、UAE(同22%増)、イギリス(同1%減)がトップ3だった。報道によると、この期間にピラミッドやルクソール神殿、紅海クルーズなど、エジプトの人気観光スポットで中国人観光客の姿が多く見られたとのことだ。
▶︎中秋節・国慶節休暇中の人気渡航先(2019年同期比)
青=アジア地域内、オレンジ=アジア以外
回復に程遠い中国ー米国路線
出入国者数の増加には国際線定期便の増便・復便が欠かせないが、中国発の航空便の状況はどうなっているのだろうか。下のグラフを見ると一目瞭然だが、最も回復が早いのがアフリカ&中東路線(緑)で、2023年11月には2019年の水準を超えると見られている。
欧州、オセアニア、アジアと中国を結ぶ路線は、今年の夏休みごろまでは同じように回復が進み、以降はオセアニアが伸びているが、11月以降は欧州とオセアニアが2019年の水準に戻るような勢いで伸び続けているのに対し、アジアは60%前後で横ばいが続くようだ。
今年の1月から低迷状態が続くのがアメリカ大陸への便だ。11月以降、ようやく2019年水準の20%に到達するかしないかで、他の地域との差が歴然としている。これはパンデミック前には最大で1日あたり50便が運航していた米国ー中国を結ぶ便が、週に12便程度しか運航されない状態が長く続いたためだ。9月1日からは週18の往復直行便の運航が許可され、10月29日からは週24便に増えたが、2019年の水準には程遠いと言わざるを得ない。
▶︎中国発の航空便の伸び率の推移(2019年同期比)
(緑=アフリカ&中東、青=アメリカ大陸、紫=欧州、オレンジ=アジア、黄=オセアニア)
この米中間の直行便の回復が遅れていることで、利用者が増えているのが、仁川空港と羽田空港だという。中国を出国した中国人旅行者が仁川空港でアメリカ行きの便に乗り継ぐ割合は、2019年から22ポイント増え、羽田空港も13ポイント増えた。乗り継ぎ便の合計は2019年から29ポイント増え、その分直行便のシェアが減った形だ。
▶︎中国ー米国間の乗り継ぎ空港の変化(2019年同期比)
ひとり旅最多、少人数の旅行スタイルが増える
最後に中国人旅行者のスタイルの変化も指摘されている。第3四半期の旅行形態の特徴として挙げられているのが、2019年同期と比べると、少ない人数での旅行が増えたことだ。2019年は5人以上のグループ旅行が32%で最も割合が大きかったが、今年は、ひとり旅が2019年より5ポイント増えて33%、ついで2人が4ポイント増えて25%となっている。
これはパンデミック中に大人数よりも少ない人数での移動が好まれたこと、さらには中国発の団体旅行の解禁が遅かったことも理由にありそうだ。と同時に、中国人が旅慣れてきたことの証ともいえるだろう。JNTOによると訪日中国人旅行者は2019年の時点ですでに、リピーター率50%、個人観光70%というから、この数字も頷ける結果ではないだろうか。
▶︎旅行人数の変化(2019年第3四半期比)
青=1人、オレンジ=2人、黄=3〜4人 紺=5人以上
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