データインバウンド
2024年のビジネストラベル予測、社内会議とAIが成長を牽引。アジア太平洋でのサステナビリティへの意識高く
2023.11.09
やまとごころ編集部レジャートラベルよりも回復が早いとの予測が出ているのが、世界のビジネストラベル業界。2024年のビジネス分野の会議やイベントの動向はどうなるのだろうか。アメリカンエキスプレス・グローバルビジネストラベルが、「2024年世界のミーティング・イベント予測」を発表した。コロナ禍により減少した会議・イベントの回復、そして世界規模で実現が求められるサステナビリティに対し、業界でどのような取り組みが進められるのか、業界専門家の予測をレポートする。
このレポートは、5大陸26カ国の、500名のビジネス分野の会議・イベント関係者を対象に、2023年6月から7月中旬にかけて行ったアンケート調査と、10数名の業界リーダーに行ったインタビューの結果に基づいている。
(図版出典:American Express GBT Meetings & Events 2024 Global Forecast:)
社内会議でチームのつながりを活性化、対面式が増加
まずはじめに、2024年に開催される企業の会議・イベントの予算について、67%が増加していると答えている。さらに、そのうち13%は、予算が10%以上増加すると回答した。この傾向が示す通り、2024年の会議・イベント業界全体の動向に対して楽観的な見方をする人の割合が82%にのぼり、昨年の77%からさらに上昇した。
▶︎2024年の会議予算は増加する
あらゆるタイプの会議の中で成長が期待される会議は「社内会議」と企業と顧客との間で定期的に行われる会合である「カスタマーアドバイザリーボード」だ。特に、「社内会議」は全ての会議タイプの中で最も大きく成長することが予測されており、全体の48%は2024年の参加者がさらに増えると答えている。特に、コロナ禍でリモートワークが進んだことで分散した従業員たちを結束させ、関係性を構築しようとする企業に強くみられる。
▶︎2024年は社内会議が成長する
上から、社内会議、顧客のアドバイザリーボード、インセンティブ
アメリカンエキスプレス・グローバルビジネストラベルでシニア・バイスプレジデントを務めるジェラルド・テハド氏は、社内会議が成長する背景について、過去に例をみないほど従業員の分散が進んだことで、企業におけるチームでの結束、生産性、創造性、貢献、従業員の福利厚生のために、チーム内の交流の重要性を再評価していることを挙げる。「対面式の会議や交流はかけがえのないもので、対面でのつながりや関係性の構築が、個人の、そして仕事上での成功の基盤となる」とコメントしている。
対面での交流が重要視される中、回答者の多くが、2024年の会議・イベントは完全に対面式(59%)もしくはハイブリッド式(20%)になると言っている。バーチャル式という回答は21%だった。
なお、北米とヨーロッパでは、対面式会議が63%でトップだったほか、46%が会議を会社の本拠地以外の場所で行うと回答した。
多くの企業がハイブリッド型とリモート型のワークスタイルを採用する中、バラバラになったチームをまとめるという意味で会議・イベントの役割はますます高まり、対面での交流は引き続き価値をもつことになろう。
▶︎2024年の会議は対面式が主流
開催場所は、可能な限り直行便が好まれる傾向にある。開催地の選択に影響を与える要因として「参加者の移動のしやすさ」と「開催地までの交通の便」の2つがトップとなった。インセンティブでは、世界的なリゾート地が再び最も人気となっているが、小規模なイベントは国内で開催される傾向が強い。
AI、テクノロジーの積極的活用で業界を成長へ導く
テハド氏は、会議への参加人数や予算面での増加だけでなく、テクノロジー導入の加速という意味においても、2024年はダイナミックな年になると予測する。
特に、デスティネーションのリサーチ、イベントコミュニケーション、参加登録の自動化など、テクノロジーが、ミーティング専門家の仕事に大きな変化をもたらすことが期待されていることが分かった。
2024年にはビジネスミーテイングでAIを利用すると回答したのは42%にのぼり、AIが個々の参加者に応じたコミュニケーションにますます利用されるようになっている。なお、モバイルアプリの利用率は61%と予想されており、会議・イベントに欠かせないものとなっている。
▶︎テクノロジーの活用
上段:モバイルアプリ、オンサイトチェックインツール、QRコード
中段:AI、VR、ウェアラブルテクノロジー
下段:デジタルフォトブース、ホログラム
ビジネス会議のコーディネートを担うミーティングプランナーは現在、人手不足に直面しているにもかかわらず、参加者からは過度な期待が寄せられるなど、困難な課題に直面している。
そんななか、理想と現実のギャップを埋め、解決にひと役買うのがテクノロジーの活用だ。テハド氏は「タスクの自動化へのテクノロジー利用や、ミーティングプログラムポリシー見直しによる予算承認を迅速化など、プランナーは、利用できるツールを効果的に活用していく必要がある」と、テクノロジーの積極的な活用を促している。
サステナビリティへの貢献、テクノロジーの活用が重要に
この業界が注力するもう1つのテーマに、サステナビリティへの貢献が挙げられる。。会議・イベントの企画においてサステナビリティへの考慮が求められ、関係する企業は目標を打ち出している。回答者の78%が、所属する組織が2024年末までに温室効果ガスの排出量をゼロにするネットゼロ目標を掲げていると答えた。測定可能な排出量削減目標がすでに設定されているという回答の割合を地域別でみると、アジア太平洋地域が64%と最も高く、北米地域(45%)、中央・南アメリカ地域(40%)、ヨーロッパ地域(37%)を大きく離し、リードしている。
会議・イベントのプログラムに持続可能性を取り入れるためには課題もある。移動距離の少ない場所の特定、認証されたサプライヤーの使用、イベントを行う効果と終了後のCO2の計算を測定すること、予算、スキルや人員、知識の不足などが指摘されている。こうした課題を解決し、サステナビリティの管理と実践でもテクノロジーの活用が重要であるとテハド氏は強調している。
また、サステナビリティを実現するには、規模の大きなミーティングだけでなく、小さな積み重ねが大きな違いを生むという意味でも、小規模なミーティングでの実行が重要であると、業界のリーダーたちは指摘している。
地域別状況-アジア太平洋の理想的な会議・イベント開催地で東京2位に
最後に、北米、ヨーロッパ、中南米、アジア太平洋の4つの地域別のビジネス会議、イベント開催状況を見ていく。
北米地域では、会議への参加人数がパンデミック前の2019年レベルにすでに戻った、もしくは2024年には回復すると回答した割合が77%となり、ほかの3地域と比べてかなり高い数字となった。業界の健全性を10段階中8以上で評価した回答者は84%にのぼり、総じて業界に対して楽観的な見方をしている。
ヨーロッパ地域では、北米、中南米地域と比較しても、2024年のイベント開催は緩やかに増加すると予測している。会議・イベント参加のための域内移動に飛行機を利用する率は、地域別では最も低く33%である。
中南米地域では、多忙な1年になると予測しており、業界の健全性についてはどの地域よりも楽観的で、86%が1~10段階で8以上と回答。会議用の空室率は増えるものの、回答者のほぼ半数(48%)が会場となる場所の確保を懸念している。
アジア太平洋地域については、前述の通り、ネットゼロ目標をすでに設定したとの回答率が4地域の中で最も高い。サステナビリティがミーティングプログラムに強く取り入れられているとの回答は67%。74%は自身が所属する組織にとってサステナビリティが非常に重要だと回答している。
なお、会議・イベントの開催地を、アクセスの良さ、費用対効果、安心と安全、地域としての魅力、際立った快適性、ESG(環境・社会・ガバナンス)への関与という基準に基づいて選んでもらったところ、アジア太平洋地域のトップ5は、1位がシンガポール、2位が東京、3位がバンコク、4位がシドニー、5位が香港という結果だった。シンガポールはコロナ禍の渡航規制などで一時期順位を落としたものの、2024年はトップに返り咲いた。
他の地域の理想的な開催地は上の表の通り。北米ではラスベガスがトップの位置を維持するとともに、ロサンジェルス、シカゴ、トロントが新たにトップ5に入った。欧州では常連都市に加え、業界専門家からはアムステルダムへの期待が高い。中南米ではメキシコとブラジルからそれぞれ2都市がランクインした。
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