データインバウンド
世界の都市デスティネーション・トップ100発表、東京初のトップ10入り 低価格な体験が魅力。受け入れ環境整備ますます重要に
2023.12.28
やまとごころ編集部イギリスに本社を構える国際市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルが、2023年の世界の都市デスティネーション・トップ100(Top 100 City Destinations Index 2023)を発表した。世界の100都市を、観光に関する6つの主要カテゴリー(経済・ビジネス実績、観光実績、観光インフラ、観光政策と魅力、健康と安全、持続可能性)にまたがる55の指標を用いて比較し、観光都市としての魅力をスコア化したものだ。
2023年版では、パリが世界で最も魅力的な都市の座を維持、東京が前年の20位から4位に浮上、初めてトップ10入りを果たした。
欧州優位は変わらず、トップ20にアジア浮上
2023年も首位のパリを筆頭に、ヨーロッパの都市の優位は変わらなかった。トップ10のうちヨーロッパが7都市、トップ20になると12都市、さらに上位100都市では63カ国がランクインしている。ヨーロッパ優位の背景には、急速な都市化とテクノロジーの普及があるという。
首位のパリについて、ユーロモニターのサービス&ペイメント産業調査チームでシニアプロジェクトマネージャーを務めるナデジャ・ポポバ氏は、「観光政策と魅力、観光インフラ、観光実績の各項目で卓越したパフォーマンスを発揮し、世界有数の都市の座を維持した」と話している。
世界で2番目に先進的な都市となったドバイは、同時に中東におけるトップ・パフォーマーとして他国を牽引している。
総合3位のマドリードは、持続可能性への取り組みという点で卓越した実績をあげ、このカテゴリーで1位となった。同市は、2050年までにカーボンニュートラルなデスティネーションとなることを目指している。
なお、観光インフラは、どの都市にとっても、競争の激しい旅行業界で重要なプレーヤーとなるための土台となる。2023年は総合10位となったロンドンが観光インフラでは群を抜いていた。
欧州優勢の一方で、アジアはランクアップする都市が多く、トップ20には東京の4位を筆頭に、シンガポール(11位)、ソウル(14位)、大阪(16位)、香港(17位)と5都市が入った。2022年は15位のシンガポール1カ国、地域だけだったことを考えると大きく飛躍したと言えるだろう。日本では他に、京都(27位)、札幌(58位)、福岡(61位)もランクインしている。
東京が初めてトップ10入りを果たしたことについて、レポートでは、観光インフラの整備が進み、コロナ禍関連規制の緩和に加え、2022年以降の継続的な円安が観光客を惹きつけ、ホテルの稼働率を押し上げ、非常に低価格で消費体験を楽しむことができるようになったと指摘している。
また、2023年版では、ワシントンDC(48位)、モントリオール(68位)と北米の2都市に加え、チリの首都サンティアゴ(88位)、リトアニアの首都ビルニュス(92位)の4都市が新たに上位100都市にランクインした。
2023年、海外旅行は力強く回復
コロナ禍を経て、海外旅行は2023年も力強い回復を続けたとレポートは伝える。渡航数は38%の増加を見せ、年末までには13億回に達すると予測されている。
2023年の国際線到着者数のトップ10は、イスタンブールが前年比26%増で1位、2位ロンドン(17%増)、3位はドバイ(18%増)で、以下、アンタルヤ、パリ、香港、バンコク、ニューヨーク、カンクン、メッカとなった。6位の香港(2495%増)は、渡航再開が大きく遅れたことで、国際線到着者数が前年比最大の伸びを示した。
こうした旅行者が今求めていることについてレポートは、高速インターネット、柔軟な予約オプション、リモートワークに対応できる快適な環境を挙げている。各都市は旅行者を迎えるため、競争力を高め、観光サービスを改善し、シームレスなカスタマージャーニーを提供しようと取り組んでいる。
もちろん、こうした回復の一方で、ポポバ氏は今後の旅行業界の課題として、「消費マインドの低下を引き起こす生活費の上昇とインフレの変動と地政学的変動」を挙げ、「消費者は自分が支払う金額に見合った価値のある旅行を望むだろう。旅行支出とは消費者の裁量支出によるものが多いため、域内旅行の需要が高まるのではないか。旅行者はまた、持続可能な観光に加えて、本物のローカル体験を引き続き求めるだろう」と話した。
都市が直面する課題、オーバーツーリズム
レポートは最後に、オーバーツーリズムに触れている。パンデミックを経て、オーバーツーリズム対策について戦略を練り直している観光都市も多い。例えば、地元の自然・文化資産を強化すると同時に、都市への投資機会も支援するため、観光税を導入することなどだ。クロアチア、アイスランド、タイ、日本、オランダ、ギリシャ、イギリスなどにある都市はこの戦略を採用し、観光客の流入を制限するために、規制をかけたり、課税を強化したり、ホテルの収容人数を減らしたりしている。
ポポバ氏はこれについても、「観光業がコロナ危機から立ち直るにつれ、オーバーツーリズムが都市、地域社会や環境に影響をもたらし、課題となっている。多くの人がオーバーツーリズムを諸刃の剣と見なす。私たちは、マス消費のような観光よりも責任ある観光を促進し、環境だけでなく地域住民にも利益をもたらす、持続可能な観光業を実践することの大切さを考えるべきだ」と話した。
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