データインバウンド
2023年の国際観光客は13億人 コロナ禍前の88%まで回復。2024年に完全回復と予測-UNWTO
2024.01.23
やまとごころ編集部UNWTO(国連世界観光機関)から、世界の観光動向を伝える最新の「世界観光指標」が発表された。2023年にコロナ前水準の88%まで回復した国際観光は、2024年には完全回復する見通しだ。2023年全体の振り返りとともに、2024年の展望を見ていこう。
2023年国際観光到着数は、コロナ前の88%回復
2023年の国際観光客到着数は、推定で13億人となる。コロナ前との比較では、2019年の14億8000万人の88%まで回復したことになる。
下のグラフが示す通り、地域別で2019年の水準を超えたのは、22%増加の中東のみ。域内需要とアメリカからの訪問に後押しされたヨーロッパは94%、アフリカと南北アメリカは90%まで回復した。アジア・太平洋地域の回復率は65%。ただし、アジアの中でも地域差が見られ、南アジアではすでに87%まで達している一方、北東アジアでは55%にとどまっている。
2023年国際観光収入1兆4000億ドルは、パンデミック前の93%
2023年の国際観光業は、経済の面でも大きく回復した。推計では、2023年の国際観光収入は1兆4000億ドル、国際観光による輸出収入(旅客輸送費も含む)は1兆6000億ドル。それぞれ2019年レベルの93%、95%になると予想される。
2023年の世界のGDPに対する旅行・観光産業の寄与額は3兆3000万ドルで、世界のGDPの3%を占める。国内、および国際観光での勢いが、観光業のGDPにも示されている。
アウトバウンド旅行でも、主要市場での強い需要が見られ、その多くは2019年の水準を超えた。IATA(国際航空運送協会)とSTR(ホテル専門の米調査会社)のデータを基にしたUNWTO観光回復トラッカーによれば、2023年10月までの国際航空輸送能力と旅客需要はいずれも、2019年レベルの約90%まで回復。また、世界の宿泊施設の稼働率は11月時点で65%に達し、前年同月(62%)をわずかながら上回っている。
2024年、2019年水準を2%上回る回復予想
2024年の国際観光はパンデミック前の水準まで完全に回復し、2019年のレベルを2%超える成長率が見込まれている。この予想は依然として、アジアでの回復ペースと、現在世界が抱える経済的、地政学的なマイナスリスクに左右されるところが大きい。
こうした前向きな見通しは、観光専門家委員会による、最新の「信頼指数」が示している。2024年について、観光専門家のうち67%は2023年と比べてよくなる、またはずっとよくなると予想し、28%が同程度と答えた。2023年より悪いと回答したのはわずか6%だった。
アジアに関する考察では、中国でアウトバウンド、インバウンド旅行のいずれもが2024年には加速すると見る。背景にあるのは、航空便の増加とビザの簡素化措置だ。中国では、2023年12月1日から2024年11月30日までの1年間、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの国民に対し、ビザ免除をすると発表した。
2024年もヨーロッパが引き続き業績向上に貢献すると見られる。夏にはパリでオリンピックも控えている。また、ソースマーケットでは、2023年に勢いのあったヨーロッパ、南北アメリカ、中東からの旅行者が、2024年もその流れで、引き続き消費拡大を促す。特にドル高に後押しされるアメリカの旅行者は、米州だけでなく、世界各地へと引き続き恩恵をもたらすだろう。
好調な回復の行く手を阻むのは依然として、経済的、地政学的懸念事項だ。ハマス・イスラエル衝突、ロシア・ウクライナ戦争は旅行者の信頼感に重くのしかかる。持続するインフレ、高金利、不安定な原油価格、貿易の混乱といった航空運賃や宿泊費に影響を与える不安要素から、旅行者はますます、価格に見合った価値を求め、近隣への旅を選ぶことが予想される。持続可能性への習慣化や適応化も、消費者の選択に重要な役割を与えるだろう。一方で、高い需要に応えられるだけの十分な労働力がなく、観光業界では依然、人手不足という重大な問題に直面している。
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