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2024年1〜3月の世界の旅行者2億8500万人、逆風強くも完全回復へ 2019年比97%。中東大きく成長-UN Tourism

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UN Tourism(世界観光機関)は、世界の観光動向を伝える最新の「世界観光指標」を発表した。2024年第1四半期(13月)の国際観光客到着数は、28500万人を超え、コロナ前水準の97%と、ほぼ完全に回復した。

 

202413月の国際観光到着数は、コロナ前の97%に

国際観光客到着数は、2023年にコロナ前水準の89%まで回復していた。2014年1~3月はその数字を上回る97%まで回復。世界観光機関では、2024年は2019年の水準を2%上回る数に達するだろうと予測している。

地域別では、コロナ前水準から最も大きく成長しているのは中東だ。2023年にすでに2019年水準を突破。202413月も勢いは続き、2019年水準から36%の増加。世界最大の旅行先である欧州は、今期初めてコロナ前水準を上回り、2019年同期比で1%増加した。域内需要に支えられ、13月には12000万人の外国人旅行者数を記録した。南北アメリカは、2019年水準の99%で、実質的にコロナ前水準に回復。回復が急速に進むアジア・太平洋地域では、2023年にコロナ前水準の65%だった回復率は、今期82%にまで伸びている。

より細分化した地域で見ると、今期最も高い伸び率を示したのは北アフリカ(2019年水準の23%増)。ほかに2019年水準を超えた地域は、中央アメリカ(同15%増)、カリブ海(同7%増)、西ヨーロッパ(同7%増)、南・地中海ヨーロッパ(同1%増)である。多くの国・地域でも、今期は好調な業績を示し、観光専門家委員会による14月期の「信頼指数」でも、1月中旬の予測値(200点中122点)を上回る130点を示した。

 

2023年国際観光収入15000億ドル、名目値で完全回復

2023年の国際観光収入は、15000億ドルに達し、名目値ではコロナ前の水準に回復。インフレ率調整後の実質値では、97%の回復となる。地域別では、欧州が6600億ドルと最も高い収益を上げ、実質値でコロナ前水準を7%上回った。南北アメリカは、2019年水準の96%、アフリカは同95%を回復。アジア・太平洋地域では、国際観光客到着数の回復が2019年水準の65%だったにもかかわらず、収益では2019年水準の78%という、見事な結果を出した。2019年との比較で伸び率が最も高かったのは33%増の中東である。

旅客輸送費も含んだ国際観光による輸出収入は、1兆7000億ドルに達し、実質値で2019年水準の約96%に回復。また、世界のGDPに対する旅行・観光産業の寄与額は、33000億ドルで、世界のGDP3%を占めている。

202413月も好調な収入が続く国・地域の1つに日本も挙げられ、今期は2019年水準の53%増加と報告されている。

 

経済、地政学的逆風は続くも、2024年観光産業は完全回復へ

2024年の展望については、需要の高さ、航空路線の増強、中国をはじめとする主要アジア市場の回復が続くことから、完全回復が予測されている。観光専門家による最新の信頼指数では、今夏の58月の予測値は200点中130点と、年初よりも前向きな見通しが示されている。調査に参加した専門家の62%が、北半球が夏期休暇を迎える今後4カ月の見通しについて、2023年よりよくなる(53%)、ずっとよくなる(9%)と回答した。

楽観的な予測の一方で、依然、国際観光産業は、経済的、地政学的な逆風下にある。長引くインフレ、高金利、変動する原油価格、貿易の混乱は交通費や宿泊費の高騰をなおも招いている。旅行者はコストパフォーマンスを重視し、近郊での旅を選ぶ傾向にある。さらに観光専門家委員会からは、気候変動や気温上昇が旅先を左右する可能性を指摘する機会が増えている。地域、そして住民が観光産業によって確実に発展していくためにも、各国政府では、国家、そして地域レベルで、引き続き観光マネジメントを強化していく必要があるだろう。

▼2023年の世界観光指標はこちら
2023年の国際観光客は13億人 コロナ禍前の88%まで回復。2024年に完全回復と予測-UNWTO

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