データインバウンド
航空運賃高止まりも、急速な回復見せる2024年のアジア太平洋地域の旅行。後押しする3つの要素とは?
2024.06.06
やまとごころ編集部航空・旅行業界のデータ分析のスペシャリスト、ForwardKeysの最新レポートによると、コロナ以降、大きな課題に直面していたアジア太平洋地域の総座席数(キャパシティ)が急速に回復しているとのことだ。
2024年第1四半期の時点で、同地域の総座席数は2019年の水準まであと13%まで回復。特筆すべきは、2023年第4四半期から2024年第1四半期にかけて、世界平均の3%ポイント増に対し、アジア太平洋地域は7%ポイント増と、世界の座席数の伸びを上回ったことだ。
▼総座席数の回復度合い(2019年同期比[4/29時点])
グレイ=世界、オレンジ=アジア太平洋
航空運賃は下落傾向も2019年水準よりはまだ高い
総座席数が徐々に回復する中、航空運賃は2023年以降一貫して下落傾向を示しているが、それでもまだキャパシティが限られていることや旺盛な需要により、2019年の水準よりは高いままとなっている。この傾向は、春節期間(2月10日〜17日)やシンガポールで大規模なコンサート開催といった重要なイベント時に特に顕著だった。例えば、3月上旬にシンガポールで行われたテイラー・スウィフトのコンサートでは、東南アジアからの旅行が17%増加し、3月の残りの期間で27%減少したのとは対照的だった。
▼アジア行き航空運賃の推移(2023/1〜2024/4[2019年同期比])
ビザの簡素化で中国人旅行者が増加
5月の労働節休暇中の中国人出国者数は、2019年の水準の84%まで回復。ビザ政策の緩和で、多くの目的地への中国人旅行の増加が顕著だった。データによると、中国からカザフスタンへの旅行が212%と急増し、シンガポール、アゼルバイジャン、マレーシア、モルディブへの旅行も大きく増加した。タイの回復が遅れているのは、安全性への懸念が続いているためだという。
▼中国からのアウトバウンド旅行の航空券販売状況(2019年同期比[4/27時点の4/27-5/5出発便])
(項目は、左より、ビザ要件緩和国、2019年同期比、ビザ[Visa Waiber=ビザ免除、Visa on arrival=到着時ビザ、eVisa=電子ビザ])
革新的なマーケティング戦略が需要を喚起
「1つ買うと、もう1つ無料」という表示は中華圏のコンビニや最近は日本でも見かけるが、航空会社も同様のキャンペーンを行っているのをご存知だろうか。
マカオ航空が実施した「1枚買うと1枚無料」などのパンデミック時代のプロモーションは、中国本土のカップルを引きつけることに成功し、パンデミック後も継続している。日本でも昨年末まで「日本発マカオ往復航空券の購入で同行者1名分の航空券が無料になるキャンペーン」が実施されていた。また、特定の都市からマカオへのお得な旅行を提供する新しい「トラベルパス」は、カップルの予約を2019年の水準と比較してさらに4ポイント増加させたそうだ。
2024年夏の旅行は明るい見通し
アジア太平洋地域の旅行についてはまだ回復途上ではあるものの、今後の見通しは引き続き明るい。4月27日現在、アジア太平洋地域への夏の旅行予約は、2019年の水準の88%まで回復している。一方、ヨーロッパと南北アメリカへの旅行は完全に回復し、アフリカと中東への旅行はわずか5%減となっている。
PATA(太平洋アジア観光協会)のヌール・アハマド・ハミドCEOは、「旅行業界は、ビザの円滑化、戦略的マーケティング、主要イベントの活用などの力を活用することで、効果的に観光を誘致することができる。これらの要素は、アジア太平洋地域の観光の回復と成長を促進する上で極めて重要だ」と語った。
また、FowardKeysのオリヴィエ・ポンティはさらに、「我々のデータは、アジア太平洋地域における力強い回復軌道を浮き彫りにしている。2023年第4四半期から2024年第1四半期にかけて座席数が7ポイント増加し、戦略的なマーケティングによって航空運賃が顕著に低下したことは、この地域の回復力と適応力を裏付けている」と話した。
(図版出典:ForwardKeys)
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