データインバウンド
2023年世界のEC市場860兆円、日本引き続き成長。シェア率トップ中国市場の状況を深掘り
2024.10.21
やまとごころ編集部経済産業省はこのほど「令和5年(2023年)度電子商取引に関する市場調査」の結果を発表した。
2023年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は前年比9.23%増の24兆8435億円(2022年22兆7449億円)に拡大。また、日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は前年比10.7%増の465兆2372億円(2022年420兆2354億円)に増加した。
EC化率(すべての商取引においてEC[電子商取引]が占める割合を示す数値)は、BtoC-ECで9.38%(前年比0.25ポイント増)、BtoB-ECで40.0%(前年比2.5ポイント増)と増加傾向にある。
2023年の報告書では国内EC市場に加え、「世界のEC市場の動向と日本・米国・中国3カ国間の越境EC市場規模」と題した項目があり、ここでは中国のEC市場について詳しく見ていく。
なお、越境ECの定義についてEUでは、「消費者が居住している国以外にある販売者または提供者からの全ての購買」とし、自国内に所在している販売者からの外国製品の購入は含まないとしている。ただ中国のTmallGlobal(天猫国際)のように、中国事業者のECモール上に日本企業が出店し、多数の日本製品が販売されている事例もあることから、本調査ではこれも「広義の越境EC」として含めている。
(図・表出典:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査」)
EC市場は今後も拡大傾向、2023年のシェアトップは中国
2022年に5兆4400億ドルだった世界のBtoC-EC市場規模は、2023年は5兆8200億ドル(約860兆円)、EC化率は19.4%(2022年19.3%)と推計された。世界がコロナ後の時代へと移行する中、電子商取引の売上成長率は若干鈍化したものの、今後も緩やかな市場規模の拡大が期待されている。世界的に小売分野のEC化が進むため、EC前提の商品販売がますます重要となる。2027年には7兆9600億ドル(約1181兆円)、EC化率は22.6%にまで上昇すると予測されている。
国籍・地域別のBtoC-EC市場規模シェア率を見ると、中国が圧倒的なシェアを占め、51.3%を記録した。次いでアメリカ19.5%、イギリス3.6%、日本3.4%、韓国2.1%と続く。

日中米3カ国の越境EC市場、米が大きく伸びる
日本、中国、アメリカ3カ国間の越境EC市場規模を見ると、2023年のEC購入額は、中国5兆3911億円(前年比7.7%増)、米国2兆5300億円(同14.4%増)、日本4208億円(同6.4%増)となる。
また、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆4301億円(前年比7.7%増)、アメリカ消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆4798億円(前年比13.3%増)と、いずれも増加傾向にある。

2023年シェアトップ中国のEC市場、2番手以降がシェア拡大
2023年EC市場シェアトップの中国における越境ECの市場規模は、前年比5.1%増の1831億ドル(約27兆円)と推計された。今後も拡大を続け、2025年には2149億ドル(約32兆円)、前年比約9.2%の成長が見込まれている。ここからは、中国のEC市場状況を見ていこう。

世界のインターネット購買者人口を見ると、中国がトップで8億8765万人、全人口の74.2%の割合を占める。次いでインド3億4522万人、アメリカ2億1807万人、ブラジル9977万人、インドネシア8864万人と続く。日本は第6位の8237万人で、中国のオンラインショッピング人口が日本の約11倍と考えると、その規模が際立っている。中国では、今後もオンラインショッピングの普及が加速し、2027年には9億5165万人(人口の78.1%)に達すると予測されている。

世界のEC化率比較をみても、中国市場の盛り上がりがわかる。中国がトップで48.0%。次いで、イギリス29.6%、インドネシア26.4%、韓国 25.1%、ノルウェー18.7%と続く。日本は第9位で13.7%だ。

最後に、中国のEC事業者について見ていこう。以下のグラフは、2017年から2024年における中国の4大EC事業者のシェアを示している。2023年のトップはアリババグループ(Alibaba)で41.6%だった。次いで、京東(JD.com)17.8%、拼多多(ピンドウドウ:Pinduoduo)17.3%、抖音(ドウイン:Douyin)11.4%と続く。上位の4事業者で全体の88.1%を占めた。
2017年には、アリババグループが61.2%と圧倒的なシェアを占めていたが、近年は京東、拼多多、抖音などの競合がSNSやライブコマースとの連携を強化し、市場シェアを拡大している。

訪日体験が深める越境ECの利用意欲、今後の動向は?
訪日と越境ECは密接な関係がある。BEENOS グループが実施した「越境ECの利用意向調査(2021年9月実施)」によれば、「訪日した後、越境ECで気に入った商品をリピート購入したいか」との質問に対し、「思う」「やや思う」との回答が8割を超えた。一方で事業者へのヒアリングでは、訪日客数の増加が越境ECの売上増加に直結していないという声も聞かれる。訪日客数の増加と越境ECの伸びにタイムラグがあり、今後越境ECの需要も高まるだろうとみられている。
ただ、観光庁の調査では、買い物よりも体験価値を重視する傾向にある欧米などからのインバウンドが増える中、2023年の訪日外国人旅行消費額における買い物代が2019年比で減少していることが示されており、消費行動の変化も注視していく必要があるとしている。
▼2022年の報告書についてはこちら
2022年 世界の越境EC市場、円安が追い風の日本 売り上げ増。シェア世界一は中国
▼ユーロモニターによる日中韓EC小売市場の動向調査はこちら
世界の4割を占める日中韓EC小売市場の動向、「いつでも、どこでも」がオンラインショッピング需要を煽る
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