データインバウンド
2024年8月までの世界の旅行者数 前年比16%増。アジア太平洋の旅行需要拡大、アジアの波及効果は年5兆円規模に
2024.10.28
やまとごころ編集部世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)のグローバルサミットが、2024年10月、パースで開催された。WTTCのナレッジパートナーで、航空・旅行業界の大手データ分析会社ForwardKeysの報告によれば、2024年1月~8月の国際線到着者数は前年同期比16%増となった。再開が遅れていたアジア太平洋地域が前年比33%増と、ようやく勢いを取り戻したことが大きな要因だ。ちなみに、南北アメリカ大陸は18%増、欧州は9%増、アフリカと中東は7%増だった。
▶世界の到着者数の変化(2024年1〜8月の対前年比)
2024年アジアへの入国者数は前年比19%増の予測
アジア太平洋地域では、コロナ前の水準を完全には取り戻していないものの、対前年比での成長ペースから、回復基調が続き、旅行需要が高くなっている。年末にかけて好調が続き、前年比58%増の中国をはじめ、マレーシア、日本、タイ、インドネシア、ベトナムへの到着者数は20%以上の伸び。オセアニアでは、ニュージーランド、オーストラリアを中心に、12〜15%増と予想され、アジア太平洋地域全体では19%増が見込まれている。
▶アジア太平洋への国際線到着者数伸び率トップランキング国
(2024年9~12月の対前年比、9/25の発券時)
オーストラリア路線増便で、観光ブームに
オーストラリアでは、アメリカからの到着者数が急増している。とくに消費額が拡大する3~5名での家族旅行の予約が43%増え、オーストラリア経済へ好景気をもたらしている。さらに、中国からは2024年年末にかけて25%増が見込まれ、この流れを勢いづける。
観光ブームを後押ししている要因は、航空便の大幅な拡大だ。航空会社では、タイ、日本、香港、ベトナム、中国、シンガポールといったアジア地域のハブ空港からの航空便を拡大し、2024年後半にかけてオーストラリア行きの国際線の座席キャパシティは全体で8%増大している。
▶オーストラリアへの国際線座席キャパシティのシェアと増減
(2024年9~12月の対前年比、9/13時点)
季節性の課題を抱えるオセアニア、需要バランスで持続的な成長を
一方、オーストラリアの観光業には、季節による差が大きいといった課題もある。南半球の夏にあたる年末年始に旅行シーズンのピークを迎えるが、冬の時期には大きく落ち込む。ニュージーランドではその差がさらに激しい。1年を通して、安定的に観光客が訪れている日本とは対照的だ。
オーストラリアとニュージーランドのようなピークシーズンが顕著な観光地について、ForwardKeysのインテリジェンス&マーケティング・ディレクターのオリビエ・ポンティ氏は、「持続的な成長のために年間を通して需要のバランスをとる必要性」を指摘する。「効果的なデータ主導の戦略をとることで、ピーク時の混雑緩和、シーズンオフでの人材活用といった、季節変動によるネガティブな影響を小さくすることが極めて重要だ。ソース市場を多様化し、通年楽しめるアトラクションを提供していかなければならない」と語っている。
▶オーストラリアとニュージーランドにおける月別の宿泊率
(青=オーストラリア、黄=ニュージーランド)
また、WTTCのジュリア・シンプソン会長兼CEOによれば、今年の旅行・観光業のアジア太平洋地域経済への寄与額は、3兆2200億ドル(約493兆円)に達する見込みだ。年末までに、この地域で約1億9100万人が、旅行・観光業に従事すると予測している。
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