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2025年春節の中国、海外旅行先は日本がトップ。家族旅行やドライブ旅行が人気

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2025年の春節休暇は1月28日から2月4日の8日間だった。この期間中の中国の国内・国外旅行に関するデータをドラゴン・トレイル・インターナショナルがまとめて発表した。

休暇の長期化とフライトの利便性向上により、中国のアウトバウンド観光は昨年に比べ増加し、近距離と長距離路線の両方が伸びた。マレーシア、日本、ベトナムなど、2019年よりも多くの中国人観光客を迎えている国が数多くある。また、自ら運転するドライブ旅行と家族旅行が春節旅行の主要トレンドだった。
(図版出典:DragonTrail International、Zuzuche)

 

春節期間の中国国内旅行は5億人超、消費額は14.2兆円に

文化観光省が2月5日に発表したデータによると、春節休暇期間中に国内旅行をした中国人は5億100万人で、前年同期比5.9%増だった。観光消費額は6770億元(約14.2兆円)に達し、前年同期比で7%増加した。中国の旅行サイトTuniuのデータによると、旅行の60%以上が家族グループによるもので、親子連れや3世代での旅行も多く、最大のトレンドは文化観光だったという。

▶︎国内旅行の推移(2019年、2023〜2025年)

 

中国からの海外旅行者数は378万人、日本路線が最大に

2月5日に発表された記事で、中国観光研究院は今年の春節休暇に378万人の中国人海外旅行を楽しみ、昨年より5.2%増加したと報告した。これは2019年のアウトバウンド旅行者数631万人の約60%に相当する。また、伸び率では国内旅行とほぼ同様だ。

▶︎春節期間の中国からの海外旅行の推移(2019年、2023〜2025年)

また、春節期間のアウトバウンド運航便数は7617便で、2019年の9割近くまで回復。トップは日本路線で2019年比では113.8%増だった。ほかにも、マレーシア、シンガポール、ロシア、UAE、イギリス、ラオス、イタリア、ニュージーランド、カタールが2019年同期を上回った。

▶︎2025年春節期間の国際線運航状況(左がフライト数、右が、2019年比の伸び率)

 

 

人気のアウトバウンド旅行先

下の図は旅行会社及び旅行関連の調査機関が発表した人気のアウトバウンド目的地だ。左から、Ctrip(携程旅行網、シートリップ)、Tongcheng(同程旅行、トンチョン・トラベル)、China Tourism Academy(中国旅游研究院)、Mafengwo(馬蜂窩、マーファンウォー)、Qunar(去哪儿旅行、チューナー)で、日本は同程旅行を除く4つで1位となっている。

▶︎各旅行会社・調査機関が発表した春節期間の人気渡航先

各旅行会社が発表した春節期間の旅行動向は以下の通り。

Ctripでのアウトバウンド旅行の予約は30%増加した。最も人気のあった10都市は、日本、香港、タイ、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、韓国、アメリカ、マカオ、ベトナム。短距離の目的地では、日本が最も大きな伸びを示した。長距離路線では、アメリカ(53%増)、スペイン(82%増)、イタリア(56%増)、フランス(50%増)など、昨年と比較して健全な伸びを示した。

Tongcheng(同程旅行)は、日本や北極圏の人里離れた目的地の人気が高まっていると指摘した。今年の春節に販売された航空券が最も増加した目的地は、アイスランドのレイキャビック、エジプトのシャルム・エル・シェイク、ノルウェーのオスロ、ベルギーのブリュッセル、日本の札幌だった。

Mafengwo(馬蜂窩)のレポートでは、人気のある出国先は、日本、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、インドネシア、タイ、ベトナム、ニュージーランド、韓国、トルコだった。同レポートによると、沿岸部やトロピカルな旅行先が、今年の旧正月に家族連れの旅行者に特に人気があったいう。

また、若い旅行者の間で、非常にニッチで人目につかない旅行先やアクティビティの人気が高まっていることも明らかになった。ロシアの都市ムルマンスクでオーロラを追いかける、フィンランドで極地砕氷船に乗る、ニュージーランドのフィヨルドであるミルフォードサウンドのクルーズに出かける、ニュージーランドで野生のコアラを探す、これらはすべて若者にとって「やらなければならない」旅行目的となっているという。

Qunar(去哪儿旅行)の予約状況によると、今年の春節に中国人観光客は世界2100以上の海外都市を訪れ、その数は昨年より50%増加した。航空券の増加率上位10カ国はハンガリー、サウジアラビア、ノルウェー、アイスランド、ケニア、日本、ロシア、スペイン、オランダ、エジプトだった。また、航空券とホテルの予約に基づくと、最も人気のあった出国先は、日本、タイ、マレーシア、香港、韓国、シンガポール、インドネシア、アメリカ、ベトナム、オーストラリアだった。Qunarのレポートによると、1月に起きた俳優の王星(ワン・シン)氏の拉致事件はタイへの旅行に少なからず影響を与え、今年はタイに代わって日本が新年のトップ旅行先となったと説明している。

なお、TongchengとQunarは、3線都市以下の都市の住民による国外旅行予約が今年の春節に2倍以上に増加したと報告している。

 

多様化する旅行トレンド、セルフドライブ旅行が大きく増加

海外への旅行経験が増えるにつれ、中国人の旅行習慣も多様化している。Ctripのデータによると、海外レンタカーは前年比42%増だという。レンタカーの平均料金は3000元未満(約6万3000円)で前年比3%増、海外でのレンタカーの平均利用期間は6日間で、自分で運転する旅行で人気の目的地はロサンゼルス、ドバイ、サンフランシスコ、バンコク、プーケットなどだった。また、運転手付きの海外旅行パッケージも大幅に増加し、昨年より20%増加した。

運転手付きの旅行で最も人気があったのは、日本、タイ、マレーシア、インドネシア、オーストラリアの5カ国だった。Ctripでの空港送迎予約も過去最高を記録し、取扱高は前年比58%増で、日本、韓国、タイが最も大きな伸びを示した。

中国の海外レンタカー・旅行サービスのプラットフォームであるZuzuche.com(租租车)によると、セルフドライブで人気の旅行先は下の地図のとおり。特にノルウェーは昨年同期比326%増だった。また、レンタカーが最も急速に伸びた都市は、マドリード、クライストチャーチ、ローマ、ブリスベン、クアラルンプール、トロムソ(ノルウェー)、ゴールドコースト、ホバート(オーストラリア)、アブダビ、ランカウイ、セビリア、リヤドだった。

▶︎セルフドライブで人気の目的地

Zuzucheのデータによると、春節の期間中、家族旅行とシニア旅行がセルフドライブの大半を占めた。例えば、ニュージーランドでは家族旅行がレンタカー利用者の44%を占め、オーストラリアでは38%を占めた。また、男女比では男性78%、女性28%(このうち30.8%は55歳以上)で、女性のドライバーが増えたのも特徴的だった。

なお、春節期間に一番人気の渡航先だった日本では中国発行の免許証では運転できないため、訪日旅行者は、前述のように運転手付きのパッケージを選ぶという。

 

アリペイ決済も好調、シンガポールや日本などで消費額増加

モバイル決済を提供するアリペイによると、2025年の春節期間中に海外での取引が30%増加したという。特に、アリペイ・ユーザーにとって最も人気のある出国先であるシンガポールは、春節期間中の総消費額が前年比で56%増、日本も40%増だった。アジアではほかにもマレーシア、香港、韓国がアリペイ・ユーザーの人気渡航先だった。

ヨーロッパでのアリペイ取引件数は前年同期比30%増で、上位はイギリス、フランス、イタリアで、スイス、オーストリア、トルコも「顕著な増加」を見せた。

この期間に増加した項目では、海外で美容整形手術への支出が前年同期比449%増加。食品への支出も、食品カテゴリーによっては少なくとも3分の1増加した。また、バス、地下鉄、配車サービスなどの現地交通手段への支出は139%増加した。

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