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中国SNS「Weibo」で最も効果的な発信をしているアカウントは? 2024年エンゲージメントランキング

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中国の大手SNSプラットフォームであるWeibo(微博)には、各国政府観光局(National Tourism Organization:以下NTO)、DMO、航空会社、空港、クルーズライン、アトラクション&ミュージアム、ホテルなどの公式アカウントから数多くの投稿が掲載されている。これらのパフォーマンスを追跡・分析した2024年版レポートとエンゲージメントによるランキングをドラゴントレイル・インターナショナルが発表した。

 

6億ユーザーへの影響力を与えるSNSの機能と注意点

中国版X(旧Twitter)とも言われるWeiboの月間アクティブユーザー数は約5億8700人(2024年9月時点)で、中国国内外の企業、メディア、KOL(インフルエンサー)も広く活用している。特に情報拡散力が高く、マーケティングやニュース発信の場として重要な役割を果たしている。

2024年は、Weiboにおける国際的な旅行ブランドにとってポジティブなトレンドが見られ、NTO、DMO、クルーズライン、ホテルの4つのカテゴリーで前年と比較してエンゲージメントが上昇した。

2023年と同様、有名人関連の投稿が最も高いエンゲージメントを生み出したが、これは主に強力なファン・コミュニティと幅広いユーザー・ベースによるものだ。「超话(チャオホア)」と呼ばれる「超話題」機能は、ユーザーが特定の興味、話題、有名人を中心としたコミュニティを作成し、参加することを可能にするもので、Weibo内のフォーラムやディスカッショングループのような機能を持つ。その結果、有名人関連の投稿はしばしばこの「超话」にリンクされ、そこでユーザーは深く掘り下げた会話を交わすことができ、常に高いエンゲージメントを得ることができる。

ただし、Weiboでのエンゲージメントの高さは、必ずしも好意的な人気を意味するものではないことに注意する必要がある。注目度の高さを示す一方で、反発や憎悪を含む否定的なコメントが含まれ、支持と批判の両方が反映されることもある。たとえば、大英博物館の微博アカウントには否定的なコメントが多く、主に中国から持ち出された文化財の所蔵を批判する内容となっている。

 

エンゲージメント分析に見る旅行業界のトレンド

それでは、Weiboのエンゲージメント動向を見ていこう。

投稿エンゲージメント率(ERPF:Engagement Rate per Post per Follower)は、フォロワー1人あたりの投稿に対するエンゲージメント(いいね、コメント、シェアなど)を測定し、オーディエンスのインタラクティブ性を示す指標だ。たとえば、ERPFが0.01%の場合、平均して1万人のフォロワーのうち、1人が各投稿に反応していることを意味する。

2020年から2024年にかけて、各旅行カテゴリーのフォロワー1人当たりの投稿エンゲージメント率は、特にパンデミック後に大きな変化を見せた。DMOは228%増で最も高い伸びを記録し、NTOも96%増と大きく増加した。ホテルは19%増。クルーズラインは着実な成長を続け、過去5年間で最高のエンゲージメント率を達成した。一方、航空会社は前年比86%減と大幅に落ち込み、アトラクション&ミュージアムは22%減となった。

パンデミック前後の動向を比較すると、アトラクション&ミュージアムは2022年に底を打った後、2023年と2024年に劇的な回復を見せ、消費者の関心が戻っていることが分かる。一方、航空会社は2023年にピークを迎えた後、2024年に急落した。これは、旅行が平常を取り戻すにつれ、エンゲージメントが航空会社のコンテンツから離れたことを示唆している。さらに、2023年にキャセイパシフィック航空の炎上事件が、カテゴリー全体のエンゲージメントを一時的に押し上げた(詳細は「航空会社」のセクションを参照)。パンデミック後(2023年~2024年)を見ると、ホテル、DMO、クルーズラインが力強い成長を遂げている一方、航空会社とアトラクション&ミュージアムはエンゲージメントレベルの維持に苦戦したことが分かる。

▶︎2020-2024年の投稿エンゲージメント率比較
(左より、NTO、DMO、航空会社、クルーズライン、アトラクション&ミュージアム、ホテル)

注:アトラクション&ミュージアムについては香港ディズニーランド、ホテルについてはMarina Bay Sands Singaporeを除外している。これらのアカウントはエンゲージメントレベルが非常に高く、他のアカウントと比較して異常値となるため。

 

各カテゴリー別ランキング:トップの戦略

次に各カテゴリーのWeiboエンゲージメントランキングを見ていこう。まずは各国の政府観光局(NTO)のトップ20だ。

 

NTO(各国の政府観光局)

1位となったオーストラリア政府観光局は2024年、NTOカテゴリーで最高のエンゲージメントを達成し、2023年比1142%増という異例の伸びを示し、カテゴリー全体のエンゲージメントの39%を占めた。僅差で2位のタイ国政府観光庁(TAT)は、投稿頻度が2023年の103件から2024年には66件に減少したにもかかわらず、エンゲージメントが104%増加した。さらに、TATの3つの地域アカウント(TAT成都事務所、TAT昆明事務所、TAT上海事務所)は、それぞれ3位、13位、15位にランクインし、トップ20入りを果たしている。

▶︎政府観光局の2024年エンゲージメントランキング

4位のトルコ政府観光局は、エンゲージメントが1362%(4,711から68,896へ)急増し、2023年の27位から2024年には4位へと上昇、トップ20入りを果たした。このような拡散の原動力となったのは、中国の俳優、コン・ジュン(龔俊)が投稿したトルコ旅行に関する15分間のVlogだった。トルコ政府観光局は、彼のコンテンツを再投稿することで、彼の人気を利用し、効果的にトルコの観光地を宣伝した。

また、上位20のNTOのうち9つがヨーロッパを代表するものであり、ヨーロッパの観光地に対する継続的な関心の高さを示す。特筆すべきはノルウェーとデンマークで、エンゲージメントがそれぞれ1419%と1702%増加した。一方、日本(5位)、シンガポール(18位)、韓国(19位)といったアジアのデスティネーションは安定した人気を保っている。

人気があった投稿について、2024年第4四半期を例に見ると、主に有名人の影響力、インタラクティブなエンゲージメント、お祭りのテーマが牽引した。このNTOカテゴリーで最も「いいね!」された投稿はオーストラリア政府観光局のもので、俳優のユー・シー(于適)がオーストラリアの冒険の旅に出るというものだった。この投稿は、#于适的昆士兰假期(ユー・シーのクイーンズランドでの休暇)キャンペーンの開始を発表したもので、2025年2月1日現在、1278万ビューと55万8000件以上のディスカッションを獲得している。

オーストラリア政府観光局はこのほかにも一貫してユー・シーのオーストラリア旅行の最新情報、ビデオクリップ、写真を共有し、Weiboでの彼の影響力と強力なファンベースを効果的に活用して、オーストラリアの観光地を宣伝している。

2番目に人気の投稿は、俳優のコン・ジュン(龔俊)によるトルコ旅行についての16分間のvlogで、1日の旅程、レストランでの体験、目的地、訪れたホテルなどを紹介したものだった。

 

DMO

DMO全体のエンゲージメントは2023年から2024年にかけて大幅に増加し、主にマカオ政府観光局のエンゲージメントの急増に牽引され、206%という顕著な伸びを示した。アブダビ文化観光局とドバイ観光・商業マーケティング局はそれぞれ2位と3位を確保した。また、カンヌ観光局はエンゲージメント数が19倍(1,179件から22,606件)に増加し、2023年の31位から2024年には8位にランクアップした。

▶︎DMOの2024年エンゲージメントランキング

日本からは17位に群馬県観光局が入っている。

また、第4四半期にマカオ政府観光局とドバイ観光局は、中国の俳優・歌手であるシャオ・ジャン(肖戦)と彼の新曲「灯塔」(灯台)の人気を戦略的に活用し、灯台関連の観光地を宣伝。この2つの投稿は、DMOカテゴリーで最も「いいね!」された投稿となった。

 

航空会社

航空会社のエンゲージメントは、投稿頻度はほとんど変わらないにもかかわらず、2023年の86万1075件から2024年には11万9075件に減少した。1投稿あたりの平均エンゲージメント数は、2023年の181件に対し、2024年は25件だった。この減少は主に、キャセイパシフィック航空のエンゲージメントが大幅に減少したことに起因する。2023年第2四半期、キャセイパシフィック航空は、英語を上手く話せない乗客を乗務員が差別したことで炎上。この件に関した謝罪文に対して64万件以上のエンゲージメントを獲得し、航空会社カテゴリー全体のエンゲージメントが急増するという経緯があった。

キャセイパシフィック航空を2023年と2024年のランキングから除外すると、投稿1件あたりの平均エンゲージメント数の差は大きく縮まり、2023年の平均エンゲージメント数は41件、2024年の平均エンゲージメント数は22件となった。

▶︎航空会社の2024年エンゲージメントランキング

2023年に1位だったキャセイパシフィックを交わして1位となったのは全日空だった。全日空は、第4四半期の人気投稿でもトップ10のうち6つがランクイン。大阪で開催されたANA EXPO 2025、11/11恒例のセール、ファンプレゼント、深圳アジアン・アート・フェスティバルのブースを紹介するなどしている。

なお、空港ランキングに関しては年間のランキングが出ていないが、第4四半期では、関西国際空港が3位に入っていた。

▶︎国際空港の2024年第4四半期エンゲージメントランキング

そのほか、ホテルはマリーナベイサンズ(シンガポール)、クルーズラインはバイキング・クルーズ(スイス)、アトラクション&ミュージアムは香港オーシャンパークがそれぞれ1位だった。

(図版出典:Dragon Trail International, Weibo)

 

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