データインバウンド
日本のビザ発給数過去最高 ターゲット国のビザ発給要件緩和に注目
2017.06.23
刈部 けい子外務省が5月に発表した平成28年(2016年)の全在外公館のビザ発給数は、前年比12.9%増の538万1433件となり、過去最高を記録した。東京オリンピック・パラリンピック開催が決まった2013年と比べると4年で3倍近い伸びとなるが、なかでも目立つのが中国の422万5832件。全体の80%近くを占めている。
観光目的のための短期滞在のビザには、1回限りの一次ビザ、一度取得すると有効期間内はなんども利用できる数次ビザがある。中国に関していえば、それまであった団体観光ビザ、家族観光ビザに加え、2009年に初めて個人観光ビザ(いずれも一次ビザ)が発給されたことで、2010年の訪日客数は140万人を記録した(前年比40.4%)。以降、発給要件の緩和や数次ビザの発給開始などが順次行われており、それに比例するように訪日客は著しく増加。2016年には630万人を超えた。世界で1位の出国者数(2015年で1億1688万人)を誇る中国だが、ビザ免除の国は限られていることもあり、緩和措置の取られた日本を訪れる客が増えたのは当然のことといえるだろう。
今年5月にはさらに、十分な経済力を有する者への3年有効数次ビザの発給が開始された。また、高所得者向けの5年有効の数次ビザでは初回目的が観光以外でもよくなり、航空券や宿泊先などの手配を個人でできるようになった。これにより、いわゆる富裕層の訪日と、リピーターがさらに増えることが予想さる。
2013年以降にビザ免除となったタイ、マレーシア、発給要件が緩和されたインド、フィリピン、ベトナムなども訪日客が増えているし、記憶に新しいところでは、ロシアからの訪日客の急増。今年3月は前年同月比43.9%、4月は66%と、驚異的な伸びを見せた。これも1月に数次ビザの導入など発給要件が緩和されたり、航空便の新規就航が決まったりしたことが大きいと見られている。
日本人の場合、観光でよく訪れるような海外の国はほとんどビザなしで入国できるため、ビザの重要性を意識することはあまりないかもしれない(日本人でもインドやロシア、中東やアフリカなどまだビザが必要な国もある)。翻って、訪日外国人の場合は、短期間の滞在でビザを免除されている国は現在67の国と地域。観光庁が重点市場とする20カ国のうちでも、韓国や台湾、香港、アメリカなど15の国と地域はビザが免除されているが、残りの5カ国(中国、フィリピン、インド、ベトナム、ロシア)についてはまだビザが必要なため、政府は引き続き戦略的にビザ緩和を進めていく方針だ。
インバウンドビジネスで様々な施策を行う場合、外国人と一括りにするのではなく、具体的にセグメントし、その中で「国」という切り口で見る必要がある。ビザ発給要件緩和が訪日客数に影響する可能性が大きいことを考えると、ビザ発給関連のニュースは引き続き気にかけておきたい。
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