データインバウンド

宿泊費・航空券の割安感が日本人気を後押し、2025年夏のアメリカ市場旅行トレンド調査

印刷用ページを表示する



2024年のアメリカからの訪日客は、前年比33.2%増の272万4600人と、大幅な増加を示し、韓国、中国、台湾に続く4番目の市場にまで成長している。さらに、2025年1~3月も前年同期比25.6%増の7万6900人と好調に推移しており、アメリカ人にとって日本が魅力的な旅行先となっている。

特に、航空運賃や宿泊費の相対的な安さが、日本を選ぶ後押しとなっており、このトレンドは2025年の夏も継続される見込みであることが、アメリカ市場で特にミレニアル、Z世代を中心とした若年層に人気のOTA、Hopperのレポートからわかった。

 

国際線運賃の下落、「アジア旅行」が選ばれやすく

米国経済の不安定さにより家計を引き締める家庭が増える一方で、アメリカ人の旅行需要は依然として高く、旅行費用を有効に使いたいと考えている。そのような中で朗報なのが、国際線の航空運賃の下落だ。

ヨーロッパはアメリカ人の夏の海外旅行先として依然として人気があるが、Hopeprの調査によると、この夏のヨーロッパへの航空運賃は、約850ドル(約12.5万円)を下回り、昨年の同時期と比べて8%下落。特に、過去3年間で最も手頃な価格でヨーロッパへ旅行できるようになっている。

また、この夏のアジア行きの航空運賃は1339ドル(約20万円)と、2024年から14%下落。2021年夏以来の最低水準となっており、アジアへの旅行需要は過去3年間で着実に増加している。

実際、過去6カ月間の夏季休暇の行き先に関する検索数の32%はアジアへの旅行で、2019年と比較して5ポイント増加した。日本、韓国、タイなどの主要目的地への関心は堅調に推移している。

Hopper2025夏のアメリカ人旅行トレンド1

 

 

東京の宿泊費、欧米主要都市より2〜3割安

アジア旅行の中でも、日本旅行が支持を集める理由のひとつが、宿泊費の手頃さにある。

Hopperのデータによると、東京のホテルの平均宿泊料金は1泊あたり約200ドル(約2.9万円)となっている。これはロンドンやパリなどの欧州主要都市と比べて2~3割程度安く、アメリカ国内主要都市よりも割安に感じられる価格帯だ。

さらに、治安や清潔さ、公共交通の利便性、文化体験など、日本ならではの魅力が相まって、「コストパフォーマンスの高い滞在先」としての評価を高めていることが分かる。

 
Hopper2025夏のアメリカ人旅行トレンド2
 
 

トレンド旅行先に神戸、ローカル都市の注目度上昇も

Hopperによる今回の調査「2025年夏の注目海外旅行先5都市」の中に、日本からは唯一神戸がランクインした。神戸は、美しい港町として、異国情緒あふれる街並みや、神戸牛に代表されるグルメ体験で知られており、近年、アメリカ人観光客からの注目度が高まっているようだ。

航空運賃も、前年比19%減(1401ドル:約21万円)で、、宿泊費は147ドル(約2万2000円)首都の東京(206ドル)と比べると割安な傾向にある。大阪や京都など主要観光地からのアクセスから良いが、混雑が少ないことなども相まって、「次なる選択肢」としてのポテンシャルがある都市と捉えることができる。

他には、タイ最大の島であるプーケット、カリブ海の島国セントルシアの最南端近くに位置するビュー・フォール、ノルウェーとアイスランドの中間に浮かぶフェロー諸島、北極圏の観光都市ボードーの名前が挙がった。

Hopper2025夏のアメリカ人旅行トレンド3
 

アメリカ市場での競争力が高まる日本

日本がアメリカ人観光客にとって「選びやすい・行きやすい・体験価値の高い」目的地になっていることが分かる。特に「価格競争力」「都市の利便性、多様な魅力」「アジア全体需要の中での相対的優位性」の3つの点が、特に重要な要素として挙げられる。

・航空運賃・宿泊費の下落という価格競争力
・東京や神戸といった都市の利便性・多様な魅力
・アジア全体の需要増の中での相対的優位性

これらの結果から、日本の観光インバウンド事業者にとって以下のような示唆が得られる。

1. 短期的チャンスを活かすマーケティング展開を

各種調査から、アメリカ市場における旅行検討時期は5~6月春〜初夏に集中する傾向があることが分かっている。特に、為替や航空運賃の下落が進む中で、2025年夏に向けた旅行の意思決定を決める今が、「仕掛けどき」である。SNSや検索広告を活用した情報発信の強化は、訪日前の意識獲得に直結する。

2. 地方都市への関心に応える商品造成を

注目年の1つとして神戸がリストアップされたように、「東京以外」の都市への関心が可視化されつつある。ローカルな体験価値を訴求することで、FIT(個人旅行者)層の関心を引く余地が大きい。神戸のような「知名度+体験」の組み合わせを活用すれば、戦略的に訴求できる可能性もある。

3. アメリカ人旅行者の「費用対効果重視」傾向を掴む

文化体験、安全性、宿泊価格など、日本はアメリカ人旅行者にとって費用対効果の高い渡航先として映っている。現地での「時間とお金の価値」を最大化できる体験設計が、今後の誘客成功の鍵となるかもしれない。

 

最新のデータインバウンド