データインバウンド
2025年夏の旅行トレンド、東京・大阪が世界の旅行者を魅了。変化する出張の形
2025.05.30
やまとごころ編集部Mastercard経済研究所(MEI)が発表した最新のレポート「Travel Trends 2025」によると、2025年の夏、世界の旅行者にとって最も注目される旅行先は、東京と大阪であることが明らかになった。東京は前年獲得した1位の座を維持し、圧倒的な人気を示している。大阪も同様に、過去と比較して観光需要が大きく伸びており、両都市の魅力が改めて確認される結果となった。
日本が旅行トレンドのトップに、ベトナムのニャチャンも人気急上昇
レポートでは、旅行データプロバイダーのOAGのデータを用いて、今夏(6月から9月)の旅行に関する3月までの航空券予約状況を分析、各旅行先の現在のシェアと2024年のシェアを比較することで、旅行者数の相対的な増加が最も大きい15の旅行先をMastercard経済研究所が特定した。
それによると、東京と大阪が世界の人気旅行先ランキングでそれぞれ1位と2位を獲得、いずれも過去と比較して観光需要が最も大きく伸びた都市となった。また、福岡も13位にランクイン。長年人気のパリは、大阪に次いで3位に後退した。
リストにあるように、トップ15のうち、8つがアジアの旅行先となっている。中国からは上海と北京、韓国のソウル、シンガポール、そして、ベトナムのニャチャンは、美しいビーチや魅力的な海岸線、活気あふれるナイトライフを背景に注目度が急上昇し、新たにランキングに登場した。
なお、14位のフルガダと15位のシャルム・エル・シェイクはいずれもエジプトの都市で、欧州からの旅行者に人気が高い。
興味深いのは、アジアからの旅行者に絞ったときの結果だ。人気の都市1、2位はソウル、上海で、日本では5位に大阪、6位に福岡、9位に名古屋が入っているが、東京はトップ15に入っていない点だ。一方で、欧州とアメリカ、カナダからの旅行者の間では東京が1位となっている。
アジアからの旅行者は円安に敏感
円安の影響もあり、日本はコストパフォーマンスの高い旅行先として、旅行者にとって魅力的な場所となっている。 調査によると、円安は特に中国本土からの観光客に他のどのアウトバウンド市場よりも大きな影響を与えている。中国本土からの旅行者は、人民元に対して円が1%下落するごとに、訪日観光客が約1.5%増加する傾向が見られる。 同じ1%の円安がニュージーランドやアメリカからの旅行者数に与える影響は、およそ0.2%と限定的だった。
Mastercard経済研究所の分析では、一般にアジアからの旅行者は為替レートの変動に敏感な傾向があることが示されている。為替レートの変動は海外旅行中の購買力に大きく影響する可能性があるためで、これは海外旅行の計画において重要な要素となる。
中国とインド、アジアの旅行大国として存在感を拡大
2024年、中国本土は引き続き世界最大のアウトバウンド旅行市場としての地位を維持した。中国人旅行者の間では、「コストパフォーマンスの高さ」や「ビザの取得しやすさ」が渡航先選びの重要な基準となっており、日本、マレーシア、シンガポールなどが人気を集めている。さらに、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスといった中央アジア諸国にも関心が高まりつつある。
一方、インドでは2024年に海外旅行者数が過去最高を記録。アブダビ、ハノイ、バリなど、多様な渡航先が選ばれている。直行便の増加に加え、旅行意欲の高い成長中の中間層の存在が、海外旅行需要をさらに押し上げている。
中国とインドの両市場は、今後も世界の旅行トレンドを大きく左右する存在であり続けるだろう。
観光地巡りから体験重視の旅行へのシフト
旅行者の間で、単なる観光地巡りではなく、より深く、記憶に残る体験を求める傾向が強まっている。 レポートでは、スポーツ、健康、食体験などが、旅行の重要な動機として挙げられている。日本の文化や自然、食などを体験できるアクティビティは、このようなニーズに応えるものであり、インバウンド誘致において重要な要素となる。
海外出張の回数減少も、滞在日数は長期化
出張の形も変化している。ハイブリッドワークの普及と、貿易摩擦などに起因する不確実性の高まりが、企業の出張計画に新たな変化をもたらしており、企業は海外出張を控え、より近距離の地域内出張を優先する傾向にある。
また、出張回数自体は減少しているものの、1回あたりの滞在期間は長期化しており、出張予算をより有効に活用しようとする動きが見て取れる。たとえば、アメリカ発の航空券予約データを分析した結果、現在の平均的なビジネス出張期間は、パンデミック以前よりも長くなっており、アジア太平洋地域への出張は、平均滞在日数が8.8日から10.2日へと延びた。
インバウンドの変化に柔軟な対応を
今回の調査結果は、日本が引き続き世界中の旅行者から高い関心を集めていることを裏付けるものであり、とりわけアジア太平洋地域からの需要が顕著であることがわかった。
為替の影響や旅行者の嗜好の変化、ビジネス出張のあり方など、旅行者の行動はより複雑かつ多様化している。インバウンド事業者にとっては、こうした変化をいち早く読み取り、体験価値の高い商品造成や、滞在日数の長期化を見越した提案を行うことが今後の鍵となるだろう。旅行者の「今」のニーズに寄り添った柔軟な対応が、これからの競争力につながっていく。
(出典:Mastercard Economics Institute on Travel in 2025)
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