データインバウンド
2025年4月の訪日宿泊者1729万人、地方比率も30%超。鳥取県は前年比151%増
2025.07.01
やまとごころ編集部観光庁が2025年4月の宿泊統計(第2次速報)を発表した。それによると、延べ宿泊者数は5305万人泊となり、前年同月比で1.9%増加した。内訳は日本人が3576万人泊(前年同月比5.2%減)、外国人が1729万人泊(同20.4%増)と、訪日外国人の宿泊が大きく伸びた。
外国人宿泊者が全体の3割超、都市圏から地方への分散傾向も
外国人延べ宿泊者数は前年同月比20.4%増と大きく伸び、全体に占める割合は32.6%に達した。
都道府県別で見ると、東京都が567万4970人泊で最多。次いで大阪府(247万6150人泊)、京都府(214万4430人泊)、沖縄県(74万8170人泊)、福岡県(73万8650人泊)が続いた。
特に東京都・大阪府・京都府の3都府県だけで、全体の58.2%(約1030万人泊)を占めており、依然として都市圏への宿泊需要の集中が顕著である。一方で、地方圏全体の外国人宿泊構成比は前年同月の29.0%から30.2%へ上昇し、訪日客の分散傾向もうかがえる。
▶︎都道府県別外国人延べ宿泊者数(2025年4月(第2次速報))と前年同月比
※前年同月比は、速報値との比較。なお、新潟県は標準誤差率が20%を超えており留意が必要。
鳥取・三重・新潟が外国人宿泊者数の伸び率トップ3に、背景に戦略的施策
外国人宿泊者数の伸び率で見ると、鳥取県が前年比151.5%増で全国最高。続く三重県(75.3%増)、新潟県(62.0%増)と、地方圏の健闘が目立った。
前年比151.5%増と全国最高の伸び率を記録した鳥取県では、米子空港を拠点に韓国ソウルや香港線などが就航しており、こうした路線の搭乗率の上昇などが要因と考えられる。また、韓国と境港を結ぶフェリーが復便したほか、5月より台湾便が就航しており、今後も東アジアを中心に外国人旅行者数の増加が期待される。鳥取砂丘や水木しげるロードなど主要観光地の人流回復や、イベントの再開も寄与した。県はチャーター便の活用やSNSを通じた海外プロモーション、旅行商品の造成など、官民連携による戦略的な誘客を進めている。
同75.3%増を記録した三重県は、伊勢神宮やナガシマスパーランドなど人気観光地に加え、なばなの里のイルミネーションなど季節イベントも集客に寄与している。また、2025年大阪・関西万博を契機とした誘客プロモーションも展開されており、大阪・関西エリアへの注目度の高まりを活かした周辺地域への訪問者増加が今後期待される。
中国・米・台湾が上位、欧州圏も回復傾向
国籍別では、中国が237万8320人泊(36.1%増)で1位、次いでアメリカ192万2070人泊(37.6%増)、台湾159万4560人泊(11.4%増)、韓国129万2070人泊(2.4%減)、オーストラリア75万2650人泊(33.8%増)の順だった。注目されるのは、前年同月比からの増加率が高いロシア(98.3%増)、スペイン(59.2%増)、イタリア(53.6%増)といった欧州圏からの訪日需要が増加しており、市場の多様化が進行していることがわかる。
▶︎国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数(2025年4月[第2次速報])
<編集部コメント>
訪日客“地方シフト”の兆し 都市偏重を超える鍵はアクセスと仕掛け
外国人宿泊者が全体の3割を超え、地方でも構成比が前年から上昇した。ただし東京都を筆頭に、上位を占めるのは都市圏が中心で、いまだ偏在傾向は顕著だ。とはいえ、鳥取・三重・新潟といった地方圏で150%超の伸びを記録した背景には、空港接続や海路の整備、万博を契機とした誘客など、戦略的な仕掛けが影響しているとみられる。都市集中の是正に向けた一手として、地域分散を促す施策の実効性をどう高めるか。他地域の動きを比較しながら、自地域の打ち手を再考するタイミングかもしれない。
出典:観光庁 宿泊旅行統計調査 2025年4月・第2次速報、5月・第1次速報
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