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2025年の訪日消費、上半期4.8兆円で過去最高、単価横ばいに課題も

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観光庁が7月16日に発表した2025年4-6月期の「インバウンド消費動向調査」(1次速報)によると、訪日外国人旅行消費額は前年同期比18.0%増の2兆5250億円に達し、上半期(1-6月)の旅行消費額は4兆8053億円となった。

一方で1人当たり旅行支出額は前年同期並みの23万8693円となったことから、旅行消費額の増加は訪日客数の増加が主因とみられる。

 

インバウンド消費額、4-6月期は2.5兆円超え、客数増が牽引

四半期ごとの旅行消費額の推移を見ると、2024年10-12月期より3期連続で2兆円超えを記録し、過去最高を更新した。2024年4-6月との比較では約3800億円増、ただ、1人当たりの支出については2024年同期とはほぼ同じ23.9万円で、消費額の増加が主に訪日客数の増加によるものであることを示している。

なお、2025年上半期(1-6月)の旅行消費額は4兆8053億円となった。2024年上半期が3兆9102億円だったので、前年同期比22.89%の顕著な伸びを見せたことになる。この好調なトレンドが継続すると仮定した場合、2025年通年の訪日外国人消費額は、2024年の8兆1257億円から大きく増加し、9兆9857億円に達すると予測される。

 

インバウンド消費額2025Q2

 

中国・米国が2強に 消費額全体の35%超を占める

訪日外国人の総旅行消費額25250億円のうち、中国が5160億円(構成比20.4%)で最多となった。次いで米国が3566億円(同14.1%)、台湾が2915億円(同11.5%)、韓国2312億円(同9.2%)、香港1358億円(同5.4%)と続く。この上位5市場で、全体の6割を占めている。中国は前年同期比17.6%、米国は27.3%といずれも大幅な伸びを記録した。

インバウンド消費額2025Q2

 

宿泊費の比率が上昇 欧米豪市場の増加が影響

旅行支出の費目別内訳を見ると、宿泊が38.5%、買物が26.2%、飲食が21.0%を占めた。前年同期と比較すると、宿泊および娯楽・サービス費の占める比率が増加傾向にある。

インバウンド消費額2025Q2

特に、宿泊費の増加は、宿泊単価の上昇や、長期滞在傾向のある欧米豪市場の増加が背景にあるとみられる。都市部や観光地では宿泊需要の高まりに対し供給が追いつかず、料金の上昇が顕著だ。さらに、宿泊費支出の高い英国やドイツ、オーストラリアなどの構成比が増えており、宿泊費の押し上げ要因となっている。

 

インバウンド消費額2025Q2なお、クルーズ客の旅行支出は108億円で、前年同期比29.5%減。一般旅行者と比較して単価・消費額ともに限定的である。

 

1人当たり支出は横ばい 高単価の欧州市場に可能性

2025年4-6月期における訪日外国人(一般客)1人当たりの旅行支出額は推計23万8693円で、前年同期(202446月期)の23万9028円とほぼ変わらなかった。前述のように、これは消費額の増加が訪日客数の回復によるものであり、個人ベースでの支出額は増えていないことを意味する。

旅行スタイルの多様化や短期志向の拡大により、宿泊・飲食・買物などの単価が抑えられる傾向も影響していると考えられる。今後は、単価向上に向けた高付加価値化が業界全体の成長には不可欠となるだろう。

インバウンド消費額2025Q2

全国籍・地域の訪日外国人1人当たりの旅行支出を費目別で見ると、全目的(観光・レジャーに加え、業務や親族・知人の訪問目的で日本を訪れた外国人も含むもの)では、最も高かったのは英国(44万3945円)、次いでイタリア(39万7911円)、ドイツ(39万6160円)だった。

費目別では、英国が宿泊費、イタリアが飲食・交通費、オーストラリアが娯楽・サービス費、中国が買物代でトップとなっている。インバウンド消費額2025Q2

 

レジャー目的も単価に変化なし 宿泊費増・買物減が顕著

観光・レジャーを目的とした旅行者に限った1人当たり旅行支出も23万6987円と、前年同期(23万8389円)と同水準だった。内訳は、宿泊費8万9657円、飲食費4万9758円、買物代6万2737円などとなっている。宿泊数は0.5泊増の7.4泊だった。消費単価の大幅な上昇は見られず、昨年同期比では宿泊費が1万円以上増え、買物代が同程度減るといった、構成比の変化にとどまった。

インバウンド消費額2025Q2

 

1泊当たり支出は香港・中国が最多 韓国は平均下回る

最後に、旅行消費額トップ5の国籍・地域(韓国・台湾・香港・中国・米国)の、1人1泊当たりの旅行支出を見ていく。全目的の平均値は2万5350円だった。観光・レジャー目的に限った平均は3万1934円となっている。

全目的では、トップ5の国籍・地域すべての支出額が平均を上回ったが、観光・レジャー目的では韓国のみ平均をわずかに下回った。

また、この5市場で、1泊当たりの支出額が最も高かったのは、全目的で香港の3万5872円、観光レジャー目的では中国の3万8929円だった。

インバウンド消費額2025Q2

<編集部コメント>

量から質へ――訪日消費の質的成長が問われる時期に

2025年4-6月期のインバウンド消費は、訪日客数増加の恩恵を大きく受け、前年同期比18.0%増と好調だった。ただ、1人当たりの旅行支出がほぼ横ばいで推移している点にも注目したい。

政府が掲げる「訪日客6000万人、消費額15兆円」の達成には、1人当たり約25万円の支出が必要となるため、今回の結果はその水準まであと一歩のところまで来ていると言えるだろう。

しかし、持続可能な観光の実現、特にオーバーツーリズムの問題を考慮すれば、人数だけを追い求めるのではなく、訪日外国人一人ひとりの消費単価を引き上げることの重要性は増している。高付加価値な体験や長期滞在を促す商品設計など、質的な成長を追求する戦略は今後さらに重要となるだろう。

訪日客数好調を力強い追い風としつつ、その先の豊かな観光体験と経済効果を目指す時期に差し掛かっているのではないだろうか。

(図版出典:インバウンド消費動向調査2025年4-6月期

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