データインバウンド
2026年の旅は“自己表現”が主流に、ミレニアル・Z世代が旅行支出押し上げ ーSkyscanner調査
2025.11.13
やまとごころ編集部美容や読書、おこもり宿……。いまや、旅は“自分らしさ”を表現する手段へと進化している。
Skyscannerが発表したグローバル調査では、Z世代・ミレニアル世代を中心に、2026年に向けた旅行者の価値観や行動の変化が明らかになった。
本調査は、世界18の国と地域・2万2,000人超を対象に2025年6〜7月に実施されたもので、検索・予約データも加味して分析。旅の回数や支出の増加に加え、AI活用やテーマ型旅行の広がりなど、多面的なトレンドが示された。
旅はより積極的に、Z世代・ミレニアル世代が旅行回数と支出を押し上げ
2026年は、旅行への意欲がさらに高まると見込まれている。調査によると、84%が「2025年と同じかそれ以上旅行する」と答え、39%は「旅行回数を増やす予定」としている。特にZ世代(56%)とミレニアル世代(48%)でその傾向が強く見られた。
旅行への支出意欲も高まっており、2026年はフライトで71%、宿泊で70%の旅行者が「これまでと同じかそれ以上支出する」と回答。そのうち「より多く支出する」と答えたのは、フライトで37%、宿泊で31%だった。特にZ世代やミレニアル世代では、さらに高い割合で旅行予算の増加を見込んでおり、若年層の積極的な旅行姿勢が際立っている。
予約タイミングは二極化の傾向、インド・中東は直前派が主流
旅行の予約タイミングは安定傾向にあり、出発の30〜90日前に予約するケースが最も多いことがわかった。
一方で、中東・北アフリカ(MENA)地域やインドの旅行者は、出発直前(1週間以内)の予約が多い傾向にある。インドでは30%、MENA地域では24%がこの期間に予約しており、直前予約の割合が際立っている。一方、90日以上前に予約する人はインドで8%、MENAで13%にとどまっており、他の地域では25%以上が90日以上前に予約していることから、対照的な傾向が浮き彫りになっている。
▶︎インド旅行者の予約タイミングの傾向
※項目は上から、出発の90日以上前/31〜90日前/15〜30日前/7〜14日前/7日未満

▶︎中東・北アフリカ(MENA)地域の予約タイミングの傾向
※項目は左上から、出発の90日以上前/31〜90日前/15〜30日前/7〜14日前/7日未満

旅先選びに変化、コストとAIが意思決定を左右
また、目的地選びにおけるコスト要因については、航空券価格(58%)や宿泊費(57%)といった項目が引き続き重視されている。さらに、現地での食費(37%)やアクティビティ費用(34%)も判断材料として重要視されている。
インドやUAEでは、旅先の選び方に「いくらかかるか」を重視する人が多く、航空券だけでなく、現地での食事や観光、ビザ代など、幅広い費用項目が判断材料になっている。
旅行者は次の旅先を決める際に、デジタルツールと友人・知人からの推薦を組み合わせて活用している。中でもインスピレーションを得る手段として、Skyscannerの「どこでも検索(Everywhere検索)」を利用している人は51%にのぼる。この機能は、具体的な行き先が決まっていなくても、出発地と日程を入力するだけで行き先候補を提案してくれるもので、旅先を柔軟に選びたい層から高い支持を集めている。
さらに、YouTube(46%)やInstagram(38%)などのソーシャルメディアも、旅行のアイデアを得るための重要な情報源となっている。
また、AIの活用も進んでおり、2026年には54%が「AIを使って旅行計画や予約をすることに自信がある」と回答(2024年比7%増)。具体的には、目的地の調査(38%)、旅程作成(33%)、価格比較(32%)などの場面で活用されている。一方、日本ではこの割合が22%にとどまり、他国と比べてAIの導入が遅れている実態も明らかになった。
旅は“自分らしさ”を映す鏡に、2026年の7つのトレンドとは?
Skyscannerは、旅行が「日常からの逃避」ではなく「自分らしさの表現」へと変化しているとして、2026年を象徴する7つのトレンドを提示している。
1.美容ツーリズム
2026年に向けて、スキンケアや美容習慣が旅先の選定や過ごし方に影響を与えるとSkyscannerは分析する。旅行者の31%が「ホテルのスキンケア製品を試す・持ち帰る」、15%が「機内でスキンケアを行う」と回答。Z世代の27%が「旅先で美容トリートメントを探す予定」としており、ベビーブーマー世代(4%)との差が顕著だ。
こうした美容関連の行動については、理由としては「セルフケアの一環」(36%)や「現地の美容文化体験」(27%)が挙げられている。近年は、美容と旅の垣根がなくなりつつあり、機内に持ち込めるスキンケア製品などへの関心も高まっている。
2.ローカルツアー
地元のスーパーやコンビニを巡ることが、現地の暮らしや食文化に気軽に触れられる旅のスタイルとして注目されている。旅行者の関心は、「新しい食べ物や飲み物を試したい」(44%)、「馴染みのある商品の現地版を探したい」(36%)、「自国では手に入らないグローバルブランドを見つけたい」(33%)といった理由に表れている。
東京の自動販売機やコンビニでのスナック探し、各地のご当地スナックを楽しむような体験が広がっており、レストランでの食事とは異なる切り口で文化を味わう方法として人気が高まっている。
3.山間リトリート
一年を通じて山岳地帯を訪れる旅が、新たなトレンドとして注目を集めている。2026年の夏や秋に山での滞在を検討・計画している旅行者は71%にのぼり、「山が見える部屋」でのホテル検索は前年比で103%増と大きく伸びている。人気の理由としては、「静けさを味わえる」(62%)、「人里離れた美しい宿に泊まれる」(58%)、「ビーチよりも混雑が少ない」(41%)など、癒しや落ち着きを求める声が多い。
近年はスキーだけでなく、夏のトレイル需要も拡大しており、自然の中で心と体を整えるリトリートの場として、山岳エリアがあらためて注目されている。
4.読書リトリート
お気に入りの本や作家ゆかりの地を訪ねるだけでなく、読書をしながらゆっくりと過ごす休暇を計画したり、美しい書店や図書館を巡ったりと、本とともに過ごす旅が新たなトレンドとして注目されている。旅行者の49%が文学に触発された旅を検討しており、旅先での読書時間を重視する人も7割にのぼる。
今後は「本に登場する場所の訪問」(32%)、「本をテーマにした宿泊」(18%)、「読書・執筆のためのリトリート」(12%)といった体験への関心が高い。読書はリラックスや現実逃避の手段としても支持されており、静かな環境で本と向き合う旅のスタイルは、今後もさらに広がるとみられる。
5.旅先マッチング
旅先での出会いや人とのつながりを目的とした旅が広がりを見せている。Z世代の55%を含む旅行者の約4割が、友情や恋愛など新たな人間関係を求めて海外旅行を検討・経験している。ひとり旅向けの宿泊施設を探す際に使う「ひとり旅(ソロ)」用の検索機能も、予約件数が前年比83%増と大きく伸びている。
日常から離れることで自分らしくいられると感じる人は多く、他者との出会いに前向きな旅行者は44%、そのうち30%は「自分を素直に出せるから」と回答している。旅は今、ただの逃避ではなく、人と再びつながる手段としても注目されている。
6.家族旅行
祖父母・親・子どもが一緒に旅をする三世代旅行が広がりを見せている。費用を分担できるだけでなく、日常のデジタル環境やルーティンから離れ、家族のつながりを深める機会として支持されているのが特徴だ。調査によると、過去2年間でミレニアル世代の51%が自分の親と、22%が親や子どもと旅行を経験。Z世代でも22%が親や祖父母と旅行したと回答している。
宿泊予約では「家族」フィルターの利用が前年比66%増加し、オンラインコミュニティでの家族旅行に関する話題の閲覧数も387%増と、関心の高まりがうかがえる。旅行の主な目的には、「思い出づくり」(59%)、「家族とのつながりの強化」(29%)、「費用の共有」(20%)が挙げられている。
7.おこもりステイ
宿泊施設そのものを目的にする旅のスタイルが注目を集めている。旅行者の45%が宿泊先を基準に旅先を決めており、その傾向はZ世代で61%、ミレニアル世代で50%と若年層に顕著だ。
「ユニークな滞在」といった希望で絞り込む検索機能の利用も、前年比で60%増加している。デザイン性の高い建築や雰囲気のある内装、非日常を感じられる空間が重視され、ホテルは“寝る場所”から“体験の主役”へと進化している。宿泊施設が旅の記憶を左右する存在として、ますます重要性を増している。
【編集部コメント】
旅を通じた自己実現ニーズに、どう応えるか
2026年に向けて、旅行需要は単なる回復にとどまらず、質的な変化を見せている。とくにZ世代・ミレニアル世代がけん引する形で、旅が“日常からの逃避”ではなく“自分らしさの表現”へと変化している点が注目される。
美容や読書、宿そのものを目的とする「おこもりステイ」など、テーマ型旅行は体験設計のヒントとなるだろう。これらの関心をどう取り込み、商品やサービスに落とし込むか。提供価値の再定義に取り組む契機としたい。
(出典:Skyscanner, Horizons 2025-2026 Travel Outlook)
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