データインバウンド
旅先で調理、デリバリーする人が増加、アジア旅行者の食スタイル多様化 ーBooking.com
2025.11.25
やまとごころ編集部旅における「食」の存在感がかつてないほどに高まっている。「食」はもはや、旅の一部ではなく、旅そのものの「目的」となっており、市場やスーパーで食材を買い、自ら料理をする“暮らすように旅する”スタイルが、キッチン付きの貸別荘や民泊に滞在する旅行者の間で広がっている。
Booking.comが2025年に発表したレポート『Taste of Home Asia Pacific』では、アジア太平洋8カ国・地域(オーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、インド、日本、韓国、タイ、ベトナム)に在住する18歳以上の旅行者で、貸別荘や民泊など、短期滞在型のキッチン付き宿泊施設(いわゆるバケーションレンタル)に宿泊した経験を持つ8047名を対象に、食と旅に関する意識調査を実施。その結果、旅先での調理スタイルや食にまつわる行動、価値観の変化が明らかとなった。
料理する旅行者が増加、新しいレシピや調理法への挑戦も活発に
レポートによると、バケーションレンタルの利用経験がある人の97%が現地のスーパーやフードマーケットを訪れることを楽しんでおり、3人に1人が「旅先では自宅よりも積極的に地元料理を作る」と回答している。新しいレシピや調理器具にも果敢に挑戦しており、料理そのものが旅の体験として昇華していることが見てとれる。

また、世代別に見ると、X世代(37%)、ミレニアル世代(33%)、Z世代(32%)は、ベビーブーマー世代(22%)に比べ、バケーションレンタル滞在中に新しい調理法や調理器具に積極的に挑戦している。
旅の決め手は「食」、オーストラリア旅行者の9割が“料理で旅先を選ぶ”
こうした“食を目的とする旅”の潮流をけん引しているのが、「食」を最優先して旅先を選ぶオーストラリアの旅行者たちだ。
Booking.comの調査によると、オーストラリア人の88%が「食べたい料理によって旅先を決めた」経験があるという。さらに、82%が「特定のレストランやフードスポットを目当てに目的地を選んでいる」と答えており、彼らにとって食は旅の中心的な動機となっていることがわかる。
この傾向をとくに強く示しているのが、デジタルネイティブである若年層だ。オーストラリアのZ世代(43%)とミレニアル世代(41%)は、Google、TripAdvisor、Zomato(フードデリバリーとレストラン検索を提供するインド発のサービス)などのレビューサイトを駆使し、食の評判から旅先を決定している。この数値は、ベビーブーマー世代(26%)と比較すると際立って高く、情報収集スタイルにも世代差が現れている。
さらに、ミレニアル世代の48%は「ソーシャルメディアが旅の食選びに影響を与える」と答えており、InstagramやTikTokを通じた“映える食体験”も、旅先選びの重要な要素となっている。
旅先で料理する場所へ 広がるバケーションレンタル利用
「食」を軸とした旅の広がりとともに、いま再評価されているのが貸別荘や民泊型の宿泊施設(バケーションレンタル)だ。アジア太平洋地域全体を見ても、こうした宿泊施設は、「寝泊まりする場所」にとどまらず、旅先で料理をし、食卓を囲み、人とつながる舞台として、多くの旅行者に選ばれている。
バケーションレンタルは、食事スタイルを自分で選べる自由さが魅力だ。
キッチン設備や家庭的な空間が、食を重視する旅行者に支持されている。これはオーストラリアをはじめ、アジア太平洋地域全体に共通する傾向である。

旅先の「食」スタイルが多様化、自炊・外食・デリバリーを柔軟に活用
バケーションレンタルの普及により、特に調理・地元食材の購入・デリバリー活用など、旅行者の“食”スタイルが広がっている。
実際、旅行者の約半数(49%)が滞在中に調理を行っており、とくにベトナム・タイ(各45%)、インドネシア(39%)では、グループ調理が盛んだ。ベトナム(38%)やインド(34%)では、新しいレシピや器具への挑戦も多く、調理体験自体が旅の目的になっている。
キッチン設備が整ったバケーションレンタルだからこそ可能であり、その空間は旅の体験価値を高める舞台となっている。
例えば、オーストラリアやニュージーランドでは、シンプルで実用的な料理を好む傾向(いずれも48%以上)が確認されており、旅先で「家庭の味」を再現しようとする人も少なくない。
一方、外食やデリバリーの需要も根強い。オーストラリアでは82%がフードスポットを目的に旅先を決定しており、アジア太平洋全体でもインド(59%)、ベトナム(58%)など多くの旅行者が頻繁に外食を楽しんでいる。
また、Z世代やミレニアル世代では47%が「頻繁にデリバリーを利用」と回答しており、気分や同行者に応じて、外食・自炊・デリバリーを柔軟に選ぶスタイルが浸透している。
地域ごとに異なる旅の“食価値観”、外食派・料理シェア型・プライバシー重視
なお、地域ごとの食文化や旅のスタイルを反映した違いも見られる。
例えば、以下のような傾向が挙げられる。
・タイ・インドネシア・インドの旅行者では、「プライバシー重視」が最多(約40〜48%)。
・ベトナムでは、「料理をふるまい、分かち合う文化」が反映されており、35%がそれをバケーションレンタルを選ぶ動機にしている。
・韓国は、「柔軟性・自由な食事・家庭的な雰囲気」の三点を重視。
・日本は、「地元飲食店へのアクセスの良さ」を重視(27%)、ローカルの飲食体験を重視する傾向が強く、自炊よりも外食に価値を見出している。
さらに、オーストラリア(33%)やニュージーランド(39%)では、「外食費の節約」も重要な要素となっている。自炊によって旅のコストを抑えつつ、自分たちらしい食の時間を楽しむという選択肢が、現実的かつ魅力的なものになっている。
旅行者の「食」行動から見える、4つの新トレンド
レポートでは、旅行者の食行動に関する4つのトレンドが紹介されている。
▶︎アジア太平洋地域で注目の「食×旅」の4つのトレンド
1.The New Head Chef:変わりゆく「旅先での料理当番」
旅先における「誰が料理をするか」という役割分担に、変化が見られるようになってきた。かつては母親が料理を担うことが一般的だったが、現在では若い世代やパートナーが積極的にキッチンに立つケースが増えており、世代交代とともに調理スタイルも多様化している。
なかでもZ世代は、家族のレシピを再現するだけでなく、新たな料理に挑戦する意欲が特に高い。こうした傾向は、旅先のキッチンを単なる調理設備ではなく、自己表現や創造性を発揮する場として捉えるようになってきたことの現れとも言える。
2.Kitchen Personas:旅先のキッチンに見る4つの料理スタイル
バケーションレンタルでの滞在では、旅のスタイルや同行者との関係性によって、料理への向き合い方もさまざまに変化する。その中で、旅行者には以下のような「料理スタイルの人格(ペルソナ)」が表れやすい傾向がある。
伝統主義者(The Traditionalist):家庭の味や思い出のレシピを再現するタイプ
挑戦派(The Experimenter):地元の食材を使い、新しいレシピに挑むタイプ
ミニマリスト(The Minimalist):手軽で効率的な料理を好むタイプ
社交型(The Socialite):料理を通じて人との交流や会話を楽しむタイプ
旅先では、日常とは異なるスタイルが自然と表れやすく、キッチンが“自己表現”や“人とのつながり”の場として機能する点が興味深い。
3.Trolley Tourism:市場・スーパーが“観光地”になる
アジア太平洋地域の旅行者の間では、伝統的な観光地に代わり、市場やスーパーマーケットが新たな「目的地」として注目されている。
調査では、旅行者の85%が「旅先で地元のスーパーや市場を訪れるのが好き」と回答。とくにオーストラリア(88%)、タイ(91%)、インドネシア(91%)、韓国(89%)といった国々ではこの傾向が顕著だ。
単なる買い物ではなく、現地の食文化に触れ、地域とのつながりを感じられることが、旅行者にとって大きな魅力となっている。
4.Portable Pantry:スーツケースに“マイ調味料”を忍ばせる
バケーションレンタルを利用するオーストラリアの旅行者のうち、80%がティー・コーヒー、ワイン、スパイス、スナックなどの食関連アイテムを持参している。なかには炊飯器やブレンダーといった家電製品を持ち込む例もある。
▶︎オーストラリア人旅行者がバケーションレンタルに持参する食料アイテム
左上から紅茶/コーヒー、オーストラリア産ワイン、ティムタムなどのチョコレート、お気に入りのソースやスパイスブレンド、グミなどのお菓子、ベジマイト(オーストラリア定番の塩辛いスプレッド)

アジア諸国ではさらに顕著で、インド(93%)、韓国(92%)、タイ(92%)、ベトナム(91%)、インドネシア(95%)と、9割以上の旅行者が食料品や調味料をスーツケースに詰めて旅に出ている。
快適さと安心感、そして味の継続性を求める行動として、この「持ち運べる食品庫(ポータブルパントリー)」の広がりは今後も注目される。
【編集部コメント】
食×旅の新潮流 バケーションレンタルが変える旅の主役
「食を軸に旅を選ぶ」傾向が、アジア太平洋地域でますます顕著になっている。特にZ世代やミレニアル世代では、キッチン付きの宿泊施設を選び、地元の市場で食材を購入し、自ら調理する体験を旅の中心に据える動きが目立つ。外食・自炊・デリバリーを柔軟に組み合わせ、“暮らすように旅する”スタイルが浸透している点も見逃せない。
料理が単なる行為ではなく、交流や自己表現の場となっていることも注目に値する。観光事業者にとっては、地元食材や調理体験を盛り込んだ商品設計が、選ばれる理由となる可能性があるだろう。
(出典:Booking.com, Taste of Home Asia Pacific Report 2025)
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