データインバウンド
2025年中国観光統計、訪中3517万人で過去最高 インバウンド完全回復
2026.04.13
やまとごころ編集部2025年の中国観光市場は、インバウンド(訪中外国人)、アウトバウンド(出国)、国内旅行の主要3指標すべてにおいて、パンデミック前の2019年水準を回復、あるいは上回った。中国国家統計局の発表によると、訪中外国人は3517万人と過去最高を更新。ゼロコロナ政策終了から約2年を経て、市場の完全回復が統計で裏付けられた。
訪中外国人3517万人で過去最高、ビザ緩和が回復を加速
中国国家統計局によると、2025年の中国への入境者数(外国人、および香港・マカオ・台湾居住者を含む総数)は1億5000万人を超え、前年比で17%以上の増加を記録した。このうち、香港、マカオ、台湾居住者を除く純粋な「外国人」に限定した入国者数は3517万人に達した。これは2019年の3188万人と比較して10.3%の増加となり、統計上の過去最高値を更新している。

この伸長の背景には、中国政府による戦略的な2つの施策がある。
ビザ免除措置の拡大と延長
中国政府は2023年末から、短期滞在ビザ免除措置の対象国を欧州諸国や東南アジアなど順次拡大し、2024年11月には日本もその枠組みに加わった。これに合わせ、当初15日間だった免除期間も30日間へと延長されており、この「ノービザ」枠組みが、観光・ビジネス両面での心理的・金銭的ハードルを劇的に下げ、個人旅行者の強力な呼び水となっている。
外国人向け決済インフラの改善
長らく訪中の障壁となっていたモバイル決済の問題は近年大きく改善された。かつて中国では、Alipay等の利用に現地の銀行口座や電話番号との紐付けが必須であり、これらを持たない短期旅行者は「現金拒否」の店舗で支払いができない等の深刻な問題に直面していた。しかし近年、AlipayやWeChat Payは海外クレジットカードとの連携を強化し、パスポートによる本人認証を行うことで、中国の銀行口座がなくてもキャッシュレス決済が利用可能な環境が整備されつつある。これにより、交通機関や店舗での支払い環境は外国人にとっても改善され、受入環境のデジタル化が客数増を下支えしたと考えられる。
なお、入境者による国際観光収入(域内からの旅行者支出を含む総額)は1311億米ドル(約20兆円)を記録した。2019年比で99.9%と、外貨獲得能力もほぼ完全回復に至っている。
現地の観光関係者は、訪中外国人の動向について、「かつての『名所旧跡を巡る団体ツアー』から、中国の『日常』と『テクノロジー』を体験する個人旅行へと、楽しみ方が劇的に変化している。多くの旅行者が、高速鉄道での移動そのものやドローンショーの見学、スマホ1台で完結するキャッシュレス社会、そしてSNSで話題のローカルグルメを体験することに価値を見出している」と述べている。
出国者1.67億人でコロナ前の99%回復、海外旅行需要が再拡大
なお、中国籍保有者による出国者数(出境数含む)は、1億6792万人となった。2019年の1億6921万人に対し、回復率は99.2%に到達している。この数字には、香港・マカオ・台湾への「出境」が含まれているが、純粋な外国への渡航意欲も極めて高い。

2025年の主な渡航先としては、日本(909万6300人)、韓国(548万2900人)、タイ(447万3992人)、シンガポール、ベトナムといったアジア近隣諸国が主要な目的地として高い人気を維持。世界最大規模の送り出し市場としての中国の存在感が再び鮮明になった。特に、香港、マカオを含む出境ベースでは他国を大きく上回る規模を維持しており、純粋な海外渡航に限定しても米国や欧州主要国と並ぶ世界最大規模の市場と位置付けられている。
こうした数の回復に加え、航空路線の復便に伴い、団体旅行から個人旅行(FIT)へのシフトが加速し、体験型消費を求める傾向が強まっている。
さらに、イタリアやスペインなど欧州方面への関心も高まっており、長距離旅行需要が回復・拡大しているほか、ビザ緩和を背景に中東地域など新たな渡航先の人気も広がりつつあるという。
国内旅行65.2億人で過去最高、体験型消費が市場を拡大
中国における国内旅行市場は、人数・金額ともに過去最高を大幅に更新した。
国内旅行者数は延べ65.2億人に達し、国民1人あたり年平均4.6回旅行した計算になる。これは帰省需要に加え、SNS発の地方都市ブームや、ライブ・グルメなどを目的とした「体験型消費」の定着が要因とされる。
国内観光収入は6.3兆元(約140兆円)に上り、中国経済における観光産業の寄与度が極めて高い水準にあることを示している。

中国観光は「回復」から「成長」へ、インバウンドにも影響拡大
2025年の統計は、中国観光市場が「回復」から「新たな成長」のフェーズへ移行したことを示唆している。訪中インバウンド旅行者は、ビザ緩和による流入増が堅調に推移しており、アウトバウンドではコロナ前と同規模の人口が再び動き出した。また、巨大な国内市場における消費スタイルの変化は、今後の訪日旅行の、地方分散や、より深い体験などの質的変化にも大きな影響を与えると考えられる。
【編集部コメント】
中国観光は量の回復から質の競争へ、受入側の対応が鍵
2025年の統計データが示すのは、中国国内における旺盛な旅行需要と、政府による積極的な対外開放の姿勢である。特筆すべきはインバウンド客数が過去最高を更新した点だ。これは単なる反動増ではなく、ビザ免除や決済インフラの整備といった、構造的な障壁を国を挙げて取り除いた結果と言える。
一方で、国内旅行の延べ65.2億人という数字からは、中国国民にとって旅行が日常的なライフスタイルの一部として完全に定着した姿が浮かび上がる。この「旅慣れた」膨大な国内旅行層が、今後さらに海外、とりわけ日本へと向かう際、我々にはこれまで以上にパーソナライズされた質の高いコンテンツの提供が求められることになるだろう。
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