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中国SNS「RED」旅行ランキング、空港の目的地化と推し活コンテンツが台頭 ー2025年の傾向

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中国SNS「RED(小紅書)」における旅行関連ブランドの公式アカウントのパフォーマンスを分析した2025年の年間ランキングレポートを、マーケティング会社Dragon Trail Internationalが発表した。

レポートでは、NTO(各国政府観光局)、DMO、航空会社、ホテル、アトラクションなど複数カテゴリーのアカウントを対象にエンゲージメントを分析。2025年は空港カテゴリーが新たに調査対象に加わったほか、俳優やゲームIPなど「推し活」的要素を取り入れた投稿、ネットミームやストーリー性のあるコンテンツが高い反応を獲得するなど、REDにおける旅行マーケティングの新たな傾向が明らかになった。

 

フォロワー増でも投稿反応は低下、エンゲージメント競争が激化

2025年のレポートによると、RED上では旅行ブランドのフォロワー数や投稿数が増加している一方で、投稿1件あたりのエンゲージメント率は多くのカテゴリーで低下傾向にある。ブランドの参入増加や投稿量の増加により、ユーザーが接触するコンテンツ量が急速に増え、投稿ごとの反応が分散していることが背景にあるとみられる。

こうした環境の中で、単に風景写真や観光地情報を投稿するだけでは十分な反応を得にくくなっている。REDでは、ユーザーの関心や趣味と結びついたストーリー性のあるコンテンツや、共感を誘う企画などがエンゲージメントを獲得する傾向が強まっており、旅行ブランドの情報発信は「投稿量」だけでなく「コンテンツの文脈や共感性」などの質がより重視される段階に入っている。

 

空港カテゴリーが初登場、チャンギ空港が首位に

2025年のランキングでは、新たに「空港」カテゴリーが独立した調査対象として追加された。空港カテゴリー全体のフォロワー1人あたりの投稿平均エンゲージメント率は0.17%で、DMOやホテルカテゴリーを上回る水準となり、REDユーザーの間で空港そのものへの関心が高まっていることが示された。また、ランキング上位10空港のうち7つをアジアの空港が占め、アジア圏のハブ空港の存在感が際立つ結果となった。

ランキング首位はシンガポール・チャンギ空港で、カテゴリー全体の約31.8%のエンゲージメントを獲得した。特に高い反応を得た投稿は、2030年代半ばの完成を予定する第5ターミナルの着工発表に関する内容だった。空港の将来像や新しい移動体験を紹介するコンテンツが、空港そのものを巨大なエンターテインメント施設として位置づけるブランディングと重なり、ユーザーの関心を集めた。

2位にはロンドン・ヒースロー空港が入り、クリスマスシーズンのユーモラスな短編動画など、季節イベントと連動した投稿が高いエンゲージメントを獲得した。

日本の空港では、中部国際空港(セントレア)が3位にランクインし、日本勢で最高位となった。これに関西国際空港(6位)、羽田空港(10位)が続き、日本の主要空港も中国ユーザーの関心を集めていることがレポートから読み取れる。

 

▶︎空港の2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

 

NTO部門、俳優やゲームIP活用の投稿が高い反応

NTO(各国政府観光局)部門では、俳優や人気IPを活用したコンテンツが高いエンゲージメントを獲得した。ランキング首位となったオーストラリア政府観光局は、1万9686件のエンゲージメントを獲得し、部門全体の30.65%を占めた。俳優の于適(ユー・シー)を「Friend of Australia」に任命し、現地での旅行体験や土産物を紹介する動画などが高い反応を集めた。

また、前年10位から4位に上昇したイギリス政府観光庁は、中国の人気モバイルゲーム『恋と深空(Love and Deepspace)』とのコラボレーションを実施。ゲーム内キャラクターがスコットランドを旅するストーリーを展開し、ファンコミュニティとの接点を作ることでエンゲージメントを伸ばした。

このように、2025年のNTO部門では、風景や観光地紹介だけでなく、俳優やゲームIPなどユーザーの関心分野と結びついたコンテンツがエンゲージメントを獲得する傾向が見られた。

▶︎NTOの2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

 

DMO部門、香港とマカオが引き続き高い存在感

DMO(地域観光局)部門では、フォロワー1人あたりの投稿エンゲージメント率が2024年の0.07%から2025年には0.11%へと上昇し、前年比で約40%増加した。特に香港政府観光局とマカオ政府観光局が高い存在感を示し、ランキング上位を占めた。

香港政府観光局は、歌手の周深(ジョウシェン)によるカウントダウンコンサートの告知など、著名人を起用したイベント関連投稿が高いエンゲージメントを獲得した。

一方、平均エンゲージメント率では、オーストラリアのクイーンズランドやアブダビも高い数値を記録した。アブダビでは女優の劉亦菲(リウ・イーフェイ)がF1を観戦する様子を紹介する投稿が注目を集めるなど、著名人を通じて現地のライフスタイルやイベントを紹介するコンテンツが関心を集めた。

▶︎DMOの2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

 

航空会社部門、エアアジアが首位 ミーム活用の投稿が共感獲得

空会社部門では、エアアジアが首位を獲得した。平均エンゲージメント数は前年比194.28%増となり、カテゴリー内で最も高い成長率を記録した。エアアジアでは、疲弊したペンギンのキャラクターなど、中国のネットミーム(インターネットを通じて人が人の真似をして広がっていく文化や行動のこと)を取り入れた「ローエフォート(あえて作り込まない)」投稿を展開し、若年層ユーザーの共感を獲得。1万件を超えるインタラクションを記録する投稿も見られた。2位にはキャセイパシフィック航空、3位にはアシアナ航空が続いた。

▲エアアジアの「ローエフォート」投稿

▶︎航空会社の2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

 

クルーズ部門、ターゲット別動画シリーズが主流に

クルーズ部門では、ロイヤル・カリビアン、MSCクルーズ、ヴィーキング・クルーズが上位にランクインした。2025年は、「家族向け」「友達向け」「カップル向け」「オフィスワーカー向け」など、特定のターゲット層に向けたテーマ性のある動画シリーズが多く見られ、船上での体験を具体的に紹介するコンテンツがエンゲージメントを集めた。最も人気があったのは、家族向けインフルエンサーが、子供たちを連れてロイヤル・カリビアンクルーズに乗船した体験記だった。

▶︎クルーズラインの2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

 

アトラクション・ミュージアム部門、香港ディズニーランドが首位

アトラクション・ミュージアム部門では、香港ディズニーランドが首位となった。このカテゴリーは全カテゴリーの中で最も高いエンゲージメント率を記録しており、キャラクターIPを活用したイベント関連投稿が多くの反応を集めた。

博物館・美術館では、2022年に開館した香港故宮文化博物館や香港のM+、大英博物館などが上位に入った。展示内容を視覚的に紹介する動画や写真投稿などがエンゲージメントを獲得した。

▶︎アトラクションと博物館の2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

ホテル部門、マリオット・ボンヴォイが首位 映像作品のロケ地も注目

ホテル部門では、マリオット・ボンヴォイが首位を獲得し、マリーナベイ・サンズが僅差で2位に続いた。両ブランドのアカウントが高いエンゲージメントを維持し、カテゴリーをけん引する結果となった。

また、ドラマ『ホワイト・ロータス』のロケ地となったアナンタラが4位に入るなど、映像作品の舞台となったホテルを紹介する投稿も注目を集めた。いわゆる「スクリーン・ツーリズム」に関連するコンテンツが、旅行先の関心喚起につながる傾向も見られる。

 

▶︎ホテルの2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

 

レンタカー部門、ドライブ旅行関連コンテンツが人気

レンタカー部門では、Zuzuche(租租車:中国最大級の海外レンタカーおよび旅行サービスプラットフォーム)が首位となった。

2025年はドライブ旅行への関心の高まりを背景に、単なる車両予約情報だけでなく、具体的な走行ルートや「車でしか行けない目的地」を紹介する動画がエンゲージメントを集めた。

また、「ネットで見た印象」と実際の体験の違いを紹介する動画も注目された。3位のYesaway(イェサウェイ)が公開した、日本の観光地におけるオンライン上の描写と実際の体験のギャップを紹介する動画などが高い反応を獲得している。

▶︎レンタカーの2025年エンゲージメントランキング
REDエンゲージメントランキング

 

【編集部コメント】

「量」から「文脈」へ、変化する中国市場の旅行マーケティング

今回のREDランキングからは、旅行コンテンツの評価軸の変化が読み取れる。フォロワー数や投稿数が増える一方でエンゲージメント率は低下し、単に風景や観光地を紹介するだけでは反応を得にくくなっている。

一方で、俳優やゲームIPを活用した「推し活」型コンテンツや、ネットミームを取り入れた投稿、具体的な体験を伝える動画など、ユーザーの関心やコミュニティと結びついた発信が高いエンゲージメントを獲得している。また空港カテゴリーの高い反応は、空港そのものが旅の体験価値として注目されていることを示している。

REDにおける旅行マーケティングでは、単なる情報発信ではなく、ユーザーの関心や文化的文脈と接続したコンテンツ設計がより重要になっているといえそうだ。

(出典:Dragon Trail International, 2025 Full-Year Xiaohongshu Rankings Report

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