インバウンドニュース

北海道の宿泊施設 課題を調査「集客」改善傾向も、人材不足やコスト高が深刻

印刷用ページを表示する


全国旅行支援に加え、外国人観光客にも門戸が開かれたことで、2022年秋以降は旅行者数も増え、久々に観光に関する明るいニュースが増えたように感じるが、実際はどうだったのだろうか。2022年12月に行った「北海道の旅行宿泊業界における課題リサーチ」から見えた現状についてお伝えする。

このリサーチは北海道に本拠を置く株式会社リアラが実施したもので、北海道内の宿泊施設に対してサンプリング調査を実施。定量的なデータからは見えてこない課題についてもヒアリングしている。調査期間は2022年12月1日~28日で、道内にある10部屋以上の宿泊施設を対象に電話調査、回答数は249件だった。


「集客」は改善傾向にあり

まず、「集客」の現状はどうだろうか。表にあるように、現段階で集客に困っていないと回答した施設は68%あり、それなりに困っているが26%、大いに困っているが6%だった。困っている施設は3割強あるものの、2021~2022年の状況よりも改善されていることが伺えた。地域差はあるが、全国旅行割の影響で非常に忙しいと回答する施設が多く、61%の施設がほぼ満室か70~90%の稼働率で推移しており、特にリゾートホテルやシティホテルに予約が集中している状況が見られた。

その一方で、稼働率が低水準(69%以下)の施設は全体の約36%。主にビジネスホテルや、函館など直近でインバウンドの来訪が多かった地域、上川郡や稚内など札幌から離れた地域といった特徴が見られた。また、ヒアリングからもインバウンドに焦点を当てていた地域や施設は、入国の際の水際対策緩和がまだ充分でないことを理由に客入りの回復が鈍く困っているとの意見が挙げられた。


最大の課題は「コスト」高

最大の課題として挙げられたのが、80%が困っていると答えた「コスト」だった。エネルギー安全保障や円安を理由に、歯ブラシなどのアメニティから暖房光熱費まであらゆる物の価格が急激に上昇していることが負担となっている。価格変更を行った施設も一部あったが、現状では国内旅行客が主要な顧客で、値上げには敏感なため、十分な価格転嫁が行えていない状況が見られた。


難航する人材採用

旅行需要が回復するにつれて人手不足の悲鳴はあちこちで聞こえるが、今回の調査でも同様で、約半数の施設からは人的リソースが足りていないという回答があがった。特に道内でも函館や小樽などの地域で人手が足りないという声が多く、コロナ禍で人材整理を行った結果、募集を掛けても十分な採用が行えないという回答が得られた。

直近では、観光業以外でも求人募集が増えており、飲食業を始めとした他業種との間でアルバイトなどの短時間労働者の奪い合いが生じ、国内需要の回復に対して人手が足りていない状況が見えてきた。


2023年の観光業界に求められることは

電気料金の値上げは全国的に行われており、事業者はもちろん一般家庭にも大きな負担となっているのが現状だ。全般的に、各施設のコスト削減は限界を迎えつつあり、いかに宿泊料金に反映することが出来るかがポイントとなる。また、人材不足に対しては、フロント業務の効率化など、採用以外の形でリソース削減することが求められている。とはいえ、客室を閉じる、高時給でのアルバイト採用、無理な清掃時間の削減を行っている施設は、収益が圧迫されたり、口コミ評価が低下するなどの悪循環に陥っているパターンも見受けられた。

 

関連インバウンドニュース