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2024年の日本酒輸出動向、金額2位のアメリカは前年比125.9%増、EUは過去最高を記録。トップの中国は減少

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訪日客数が年間3600万人を突破し過去最高となった2024年は、インバウンド消費も過去最高の8.1兆円に達した。12月には「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本文化と日本酒への一層の関心の高まりが、期待されている。

そうした中、全国約1600の酒造所属の日本酒造組合中央会の発表によると、2024年の日本酒の輸出額・数量は、コロナ禍後の物流システムの正常化に伴い、2023年を上回る結果となった。2024年1月〜12月の日本酒輸出総額は前年比で105.8%の434.7億円、数量は前年比で106.4%の3.1万キロリットル(2024年財務省通関統計データに基づく)だった。

 

日本酒輸出額トップは中国、輸出量トップはアメリカ

国、地域別輸出金額の1位は中国で約116.8億円(前年比93.7%)だった。景気後退による高級日本食レストランでの需要減、アウトバウンドの影響で減少となった。2位はアメリカで、レストランや小売店での取り扱いが増えたため輸出額が前年比125.9%の約114.4億円だった。また、3位の香港も経済不況により51.2億円、前年比84.9%で減少した。

▶︎国、地域別輸出金額トップ20

輸出数量ではアメリカが1位で8003キロリットル(前年比123.1%)だった。3位の韓国は前年比116.8%で輸出額と共に過去最高を記録。日本文化や日本食へのブームが広がるなか、富裕層向けレストランでの新たな日本酒提供が好影響を及ぼしていることから、ドイツ、フランス、イタリアでも過去最高を記録した。その結果、EU(イギリス含む)への総輸出額は約27.2億円、前年比116.2%となり過去最高となった。また、輸出先国数も過去最高の80カ国にのぼり、日本酒文化の広がりがうかがえる。

▶︎国、地域別輸出数量トップ20

 

万博を契機に、訪日客へアプローチし更なる市場拡大へ

1リットルあたりの日本酒輸出金額は1407円と、過去最高額を記録した2023年からほぼ横ばい。中国、香港、シンガポールでは1リットル2000円を超える金額を維持している。

また、プレミアム系日本酒の人気が高い傾向が継続しており、10年前の平均輸出金額1リットル705円と比較すると約2倍となった。他の国・地域別の輸出金額を見ると、3位の香港は前年比98.1%と減少したが、4位の韓国は110.5%、5位台湾は107.1%と共に増加している。

▶︎1リットルあたりの輸出金額

日本酒造組合中央会は今後、輸出だけでなく、訪日客に対しても、観光資源としての地方の酒蔵体験や、売上好調な主要国際空港でのキャンペーンを通じ、日本酒への認知度と関心を高めるとしている。また2025年度は大阪・関西万博の開催があるため、大阪にて全国の日本酒が楽しめる「國酒フェア」を開催し、会場内外で日本酒の魅力と文化的価値を発信することが予定されている。

また、日本酒造組合中央会は、2022年に国際ソムリエ協会とパートナーシップを結び、協会主催のソムリエコンクールや教育プログラムへの参加、コンクール受賞ソムリエを日本招聘するなど、ガストロノミー分野での国際的な啓発活動に力を入れている。彼らを通じ、世界のファインダイニングにおける日本酒の地位向上を図る。

中長期的な展望としては、中国、アメリカ、香港を合わせて輸出金額が65%であることから、その他の地域・国への日本酒輸出増加の安定化を狙っていくという。ワイン文化を持つEU(イギリス含む)での日本酒と食のペアリングやサービス方法の提案などをソムリエに働きかけていく。またマレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア等の東南アジア地域はその経済成長と人口増加を見込み、新しい市場として大いに期待を寄せる。各国・地域における法規制や流通経路を精査し効果的戦略を練り、日本酒の販路の新規開拓と浸透を狙う考えだ。

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