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行政自治体インバウンド担当者への意識調査、7割が「地域や組織内の理解不足」を課題に

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訪日客の回復が進む中、インバウンド施策を実施する現場では「伝わらないもどかしさ」が浮き彫りになっている。訪日・在日外国人向けのWebメディアを運営する株式会社MATCHAが全国の自治体・観光事業者を対象に実施した意識調査によると、担当者の約7割が「インバウンド施策の重要性が組織や地域に理解されないこと」を課題と捉えていることが分かった。

本調査は、2025年2月20日〜3月20日の期間、全国の自治体・観光協会・DMOなどに従事するインバウンド担当者を対象に、オンラインアンケート形式で実施された。有効回答数は63件。

7割超が「組織や地域に理解されない」と回答

回答者の71.1%が「インバウンド施策の重要性を地域や組織に理解してもらうことが課題」と回答。予算や人手といった物理的なリソース不足ではなく、地域内の関係者や上司との温度差や理解の不足といった“見えにくい心理的障壁”が、現場の推進を妨げている構図が浮かび上がった。

地方の現場で「やりたいが動けない」「合意形成が難しい」といった声が同社の元にも日常的に寄せられており、今回の調査結果はそうした肌感覚を裏付けるものとなっている。

  

担当者の半数近くが「3年未満」、ノウハウの継承に課題

回答者のうち、インバウンド業務の担当経験が「3年未満」と答えた割合は45%に上った。新任担当者が多く、経験や知識の蓄積が不十分なまま業務を担っているケースが多いと見られる。さらに、インバウンド対応に関するノウハウが組織内で十分に共有されていないことも、施策の継続性や精度に影響している可能性がある。

3割弱が「週2時間未満」しかインバウンドに時間を割けず

「積極的に取り組みたい」と考える担当者のうち、約29%がインバウンド業務に“週2時間未満”しか時間を割けていないと回答。現場では複数業務を兼務する担当者も多く、インバウンド対応が優先度の高いテーマでありながら、日々の業務では後回しになりがちであるという実態が明らかになった。

「ターゲット未設定」の現場が4割超に

最重点市場として「台湾」を挙げた担当者が30.2%と最も多かった一方、「最重点市場はない」と回答した担当者が17.5%、「無回答」も25.4%にのぼった。ターゲット設定が不明確な現場が一定数存在しており、施策の方向性や優先順位を決めきれないまま運用が続いている現状が見て取れる。

共通課題は「人の意識」、合意形成の仕組みづくりが鍵に

今回の調査では、予算や制度よりも“人の意識や合意形成”が最大のボトルネックであるという構造が明確になった。インバウンド需要の回復に呼応するように、各地で取り組みが加速する一方、現場では「やるべきだが進めにくい」といった葛藤が続いている。

今後は、単発的な施策よりも、組織内での理解醸成や地域関係者との対話を軸にした合意形成の仕組みづくり、さらには担当者間での情報共有・ノウハウ蓄積の仕組み整備が、持続可能なインバウンド推進において不可欠といえる。

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