インバウンド特集レポート
口コミで人気観光地に急成長!
あしかがフラワーパークによると、今年(2016年)のゴールデンウイーク前半の3日間における入場者数は、延べ14万1026人となった。2年前に比べ約3倍、外国人は約13倍だったそうだ。
https://www.ashikaga.co.jp/season/season03.html
急増の理由として、旅行会社の現地での営業の成果もあるが、2014年にアメリカCNNテレビが放映した「世界の夢の旅先10か所」に日本で唯一選ばれたのが大きいと言う。この大藤棚は、インターネットや口コミで世界中に広がったのだ。
ところで昨年(2015年)は、茨城県の常陸海浜公園内に咲く水色の花「ネモフィラ」が大ブレイクした。
JTBタイランドでは、それより前に、商品開発をいち早く手掛けていたそうだ。
ネモフィラなどの花を目的に常陸海浜公園に、外国人旅行者が約900%増もしたのだ。
もともと茨城県はインバウンドが遅れているエリアだったが、ネモフィラのブレイクによってインバウンド戦略さえも変更したほど、大きく貢献した。
ちなみに2014年の4月~9月に茨城県を周遊した海外からの団体ツアーは、わずか70本で、人数にして2,134人という結果だった。(茨城県発表の月別ツアー催行データによる)
それが、突然、2015年になると大ブレイクした。同じ4月~9月の結果は、団体ツアーが640本で、人数にして19,873人という結果となった。
930%増という驚異の伸び率だ。
茨城県観光物産協会に理由を尋ねると、きっかけは「ネモフィラの写真」の口コミだったという。
2012年4月にフェイスブックで「死ぬまでに行きたい!世界の絶景(The breathtaking sights in the world I want to see before I die.)」というコミュニティページに、ひたち海浜公園にある「ネモフィラ」の咲く花畑が投稿され、人気となった。
まずは日本人が訪ねて来るようになり、その後、個人の外国人旅行者が増えた。
さらに2015年3月31日にCNNが選んだ日本の絶景31選の1つに、ひたち海浜公園の花畑が採用されたのだ。そこから一気に火が付いた。
この状況を受け、茨城県では、インバウンド向けプロモーションの方針転換を図った。それまでは、やはり水戸の偕楽園を軸としたツアーの提案をしてきた。しかし、こちらは海外では歴史好きの人には良いが、一般向けの訴求力に乏しかった。
茨城県観光物産協会が、ひたち海浜公園のことを商談会(トラベルマート2015)において現地旅行会社に尋ねたところ、ほとんどが知っていたそうだ。一方、茨城県という県名はあまり知られてない。
茨城県は、海外の旅行会社には、花と果物狩りをセットで紹介すように変更した。果物狩りは東南アジアや香港では人気のコンテンツになっているからだ。県内では、イチゴ、メロン、ブルーベリー、梨、ブドウ、柿、ミカンなど、一年中、果物が楽しめる。
やはりタイ人を含め、東南アジアでは花が好きな人が多く、キラーコンテンツの一つになる。
海外では花の特集が組まれる人気ぶり!
さて、香港では、「富士山」と「花畑」が突き刺さるキーワードとして強い。そう語るのは、香港からのインバウンドを約20年以上手掛けるランドオペレーター。
個人旅行者向けのスケルトンツアーで、ホテルと航空券を手配している。さらに週末パックとして、富士山の麓の山中湖や河口湖で花畑を観光する東京発着バスツアーを手配している。このコースが人気になっているという。
富士山だけでは競合が多いので、さらに花のことをアピールすると注目度が一気に増す、とその効果について力説する。だから、花の見ごろの時期によってコースを変えているのだ。
また週末は、都心の宿が込み合って予約が取りづらく、富士山方面にいったん足を延ばしてもらうことで、宿不足問題を回避している。一石二鳥の仕組みとなった。
香港では、旅行雑誌で何度も花についての特集が組まれ、美しいグラビア写真がその人気を後押ししている。雑誌「新暇期」では、この春に日本、韓国、台湾の花畑の特集を組んだ。
芝桜の特集ページでは、富士山の麓、長崎の島原、鹿児島の霧島高原、北海道の大空町にある東藻琴芝桜が掲載。
藤棚のページは、足利、北九州市が紹介されている。
また人気のネモフィラも掲載され、「超夢幻」というキャッチコピーで紹介されていた。写真を見ていると行きたくなる構成になっている。
花のツアーは、課題がいくつもある!
桜の場合は、花の咲くタイミングが、開花予想とずれる可能性もあり、調整がたいへんだ。旅行会社では、いつも最新の開花予想に留意している。
ところで、今年のネモフィラの集客状況について、茨城県の観光協会にうかがうと、花の開花が例年よりも早かったこともあり、ゴールデンウイークの入場者数は前年並みとなったそうだ。期待したほど伸びなかった。
また外国人旅行者のマナーの問題もあがってきた。もっともそれは、外国人に限った話ではないが…。
迫力ある写真を撮りたいがため、花畑の柵を超えてしまい、踏み荒らしてしまうマナーの悪い方もいるのだ。
イギリス発祥のオープンガーデンというムーブメントがあり、日本でもその動きが出てきた。自分の庭の花壇を旅行者にも見てもらい、楽しんでもらおうという取り組みだが、ボランティアでやっているため、旅行者のマナーが問われる。何か問題があれば、すぐにクローズとなってしまうだろう。
そのためには、しっかりと注意事項を日本語のほか、英語や中国語でも明記すべきだろう。
一方、フラワーツーリズムとして、高山植物などのピンポイントで訪ねてくるニッチなマーケットも存在する。こちらは、本当に世界の花好きのコアなファンが多く、例えば、北海道の礼文島にある敦盛草(アツモリソウ)を目指して欧米から来るケースもある。
しかし一般的ではないので、商品化するのは難しいが、情報発信をしていれば、今後、ネモフィラのように、何が起きるかわからない面もある。
花畑を新しく育て、観光が成功している事例として、埼玉県秩父市がある。「羊山(ひつじやま)公園」という、一面に色とりどりの芝桜が植えられた「芝桜の丘」として有名になった。市民ボランティアによって支えられているのだ。
こちらにも外国人観光客が増えつつあり、西武鉄道も外国語のポスターを掲出するなどして盛り上げている。
花の持つ効果は、その場所、その時期という旅の必然性を生み、集客アップ効果がある。リピート率が高い香港、台湾の訪日市場は、ニッチなものを求めている。東南アジア客は、もともと花好きが多い。さらに桜の次に何を提案できるかがカギになるだろう。
次はどんな花畑がブレイクするか楽しみだ。
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