インバウンド特集レポート
地域の特性を最大限にいかす!
(2)魅力の向上、誘致手法 ~きらめき・いざない~
こちらは、77事業がある。
京都は、文化・芸術をはじめとした京都の精神性などの魅力を最大限に高めることを目指している。
◆伝統産業の魅力の発信について
歴史に磨かれた技術・技法、豊かな感性と熟練した技能。それを様々な手法で発信しているのだ。
例えば、
・「和装」で巡る京都観光スタイルの提案
・「京都をつなぐ無形文化遺産」として選定された「京の食文化」
・日本初の清酒の普及促進を図る条例が制定された「日本酒」を味わう観光
・「京野菜」を訪ね歩く観光
など、京都が培ったあらゆる価値の蓄積を生かす取組を進めている。
具体的な効果として、古都のまち並みを背景に、和装で写真を撮る外国人カップルが増えている。中国や台湾などのアジア圏では、婚前に旅先で写真を撮って、その写真を式などで披露したりする「フォトウェディング」が人気だ。
外国人向け和婚プランは、衣装、カメラマン、美容師、通訳、100カットの写真撮影など、20万円前後で民間会社が販売している。メールで数回打ち合わせをし、衣装はインターネット上の写真で事前に見ることができる。
◆大学を巻き込んだ施策
京都には大学の数が多く、京都市内には37もある。これもキラーコンテンツという考え方がある。
そこで「大学のまち京都」体験メニューや新たな交流メニューの充実により、修学旅行の誘致強化をする。
・海外の大学コンソーシアムとの連携による青少年交流
・短期的な受入プログラムの開発、海外における京都の大学紹介セミナーの開催
・「京都留学サイト」の運営等を通じた京都の大学への留学を推進
・「大学のまち京都・学生のまち京都」PR戦略の構築
・学生の力を活用した国内外への情報発信による京都で学びたい学生の誘致
◆目利き層を巻き込んだ取り組み
目利き層とは、知的欲求が高く周囲への発信力や影響力が強い層のことだ。そいったキーパーソンの誘客を強化している。
「ミラノ万博」や「ILTM」※等、様々な手段を通じて発信・伝達することで世界中に京都ファンを増やすべく取組を進めている。
(※ILTMとは、インターナショナル・ラグジュアリー・トラベルマーケットの略称。目利き層を顧客とする旅行会社と高級ホテル、観光施設等との商談会のこと。)
ILTMでの商談中の参加者
さらにムスリム受入体制の充実も図っている。
旅行事業者等による視察会(ファムトリップ)の実施、ウェブサイトによる情報発信の充実。事業者等に対する礼拝所の設置促進、ハラール※対応等を促進。
(※ハラールとは、イスラム教の教義で許されるもの。食事の戒律等がある。)
◆エリア連携について
外国人観光客の要望に合わせて「自然(海・山・雪)と京都」、「テーマパークと京都」など他の地域との連携を強化している。
京都とは異なる魅力的な観光資源と組み合わせた効果的な誘致を行っている。
大阪でユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で遊んだ後、トロッコ列車を楽しむコースが〝ドル箱〟になりつつある。旅行関係者から「外国人向けの京都ツアーでは、トロッコ列車が組み込まれないと売れない」というほどの人気ぶりだ。
その他、京都を発着とする日帰り周辺地域観光の充実を目指している。
・関西広域連合や大阪府市をはじめとする他地域との連携の強化
・東京都、北海道や広島県など外国人観光客に人気の自治体との広域連携の強化
・北陸新幹線の開通に伴う関東方面から北陸を経由した新たなルートによる外国人観光客の誘致策の強化
(3) 魅力の発信、コミュニケーション ~ひびき・ひろがり~
こちらは、21事業がある。
京都の認知度を高め、京都へ行ってみたいという「あこがれ」を構築していくことが、今後の国際観光分野では非常に重要ととらえている。
そのためにも、一方的な情報発信ではなく、双方向の情報の受発信を行い、京都の奥深い精神性などの魅力を世界中に知ってもらえる施策を進めている。
・東京オリンピック・パラリンピック等の大規模スポーツイベントに合わせた京都の魅力発信を強化
・海外のコンテンツマーケット(映像見本市)等での京都関連のコンテンツ (テレビ番組・映画等)の販売支援及びPR
・海外のテレビ局や雑誌社などに向けた宣伝活動(ビジット・ジャパン地方連携事業等)
・ロケ誘致等をはじめとした京都市メディア支援センターの情報発信機能強化
・京都観光総合調査の充実や宿泊施設、観光案内所や海外拠点所在都市等でのアンケート調査の実施等による観光客の旅行特性や潜在ニーズの把握
・市民への京都観光の意義や経済効果等に関する情報発信の充実や市民参加による計画推進組織を通じた情報発信の充実
1つ目の「人づくり」というテーマでもとりあげていたが、市民の参加意識にウエイトを持っているのも特徴だ。
京都観光のもてなす側の最大の主役は市民だという考え方がベースにある。
その市民が京都観光に理解が深まるよう、京都観光の意義や効果、観光客への対応に必要な知識や心構えについて情報発信を強化させている。
国宝をユニークベニューに活用する
(4)MICE戦略 ~つどい~
こちらは27の事業がある。
国際会議や企業の会合、報奨旅行、国際的スポーツ大会などのMICE※が開催されることで、京都のイメージの向上や知名度の向上につなげたいと考えている。
(※MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、 Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語。)
観光庁は2013年に「グローバルMICE戦略都市」に5都市+強化都市2都市を全国から選んだ。具体的には、東京、横浜、京都、神戸、福岡の戦略5都市と名古屋、大阪の2都市だ。まさにそのうちの1つが京都なのだ。
2020年の東京五輪開催にむけて、京都の強みを活かしたMICE誘致を強化している。
・大学との連携強化
・MICE協議会設立
・支援制度の拡充
・ユニークベニューの更なる開発
・外国人参加比率国内1位の堅持
・企業会議と報奨旅行領域の発展的拡大
今後も世界に向けて格段の発信力が期待されるMICEの開催に重点的に取り組むため、新たに目指すべき姿や施策の方向性を示している。
建仁寺では会議後の夜間のパーティー会場に利用できる
大規模コンベンションに対する開催支援助成金の上限額を現行の300万円から1000万円に大幅に拡大。その他、規模に合わせて3種類の助成制度を用意し、きめ細やかに対応する。
その一つである「京都らしいMICE開催支援補助制度」では、国際会議のみならず国内学会や京都での大規模な同窓会も対象とする。
ユニークべニューとしては、二条城をはじめとした世界遺産、国宝のある寺院を懇親会の会場として使用できるなど、協力体制が整い始めている。
また、2015年3月19日には、京都府警察本部と全国初となるテロに特化した協定を締結し、京都をテロから守ると同時に世界に向けて京都・日本の安全をPRする等、全国に先駆けた先進的な取組を行っている。
京都MICEの課題も下記のようにある。
・宿泊・会場などのキャパシティ不足の解消
・4月・11月等の繁忙期と閑散期のギャップの解消
・効果測定にもとづいた戦略構築など
施策実現に向けた仕組みづくり
さて、この「京都観光振興計画2020」の主要な施策をリストアップしてきたが、しかし、あくまでも計画である。このままでは絵に描いた餅である。いかに実現させ、実際に効果があったのかを評価する必要がある。
そこで、都市観光振興審議会委員から選出された者等で構成する「京都観光振興計画2020マネジメント会議」により、計画の進ちょく管理を行うとともに、取組効果の把握、分析を行っている。
宿泊客数、
滞在日数、
宿泊者比率
経済効果や雇用創出効果
市民の観光に対する意識
などを指標としている。
今後は数値目標を設定しいく予定だ。
さらにPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を活用する。進ちょく管理を徹底させるための仕組みである。
実施事業について、今後2~3年で取り組む短期事業、2020年を見据えて取り組む中期事業に分け、実施主体、実施手法を明確にしたうえで推進しているのだ。
先日も京都に取材で訪れた際に、バス便のあまりの長蛇の列に驚いた。世界が認める観光都市になり、旅行者が増えるのはいいが、いかに満足度を高め、質の向上を実現させるかが、今後の課題であり、既にテコ入れを始めているのだ。
なお、その他の施策については、下記の京都市のページを参照してほしい。
http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000174311.html
text:此松武彦
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