インバウンド特集レポート
日本ならではの文化体験
「浴衣や着物を着る」というのは、特に女性に好評の体験で、写真を撮影する時間を十分にとってあげると喜ばれる。
「旅館」は日本の文化を体験できるいい機会ととらえているが、畳の上で寝ることに慣れないタイ人も少なくない。和洋室やベッドがある旅館はアピールになるはず。
「温泉体験」は、いくつか注意するポイントがある。タイ現地では海に入る際もTシャツなど服を着たまま入る人が多い。それゆえ、人前で裸になり温泉に入るのに抵抗を感じる人も多い。「家族風呂をすすめる」あるいは浴衣を着用する「砂蒸し風呂」なども一手。
「慣れてしまうと病みつきになって何度も入りたい」という若いタイ人女性もいたが、一般的ではないだろう。
「ご当地の祭りを観る、参加する」体験は、そのときそこでしかできないものなので期待も大きい。福岡の博多祇園山笠の追い山を観るツアーなどは非常に喜ばれていた。
タイ人は概して好奇心旺盛で陽気に旅を楽しむが、真の部分は保守的で、友人や知人の口コミを大変重視する。Facebookなどの情報は、旅行の動機づけに大きくかかわる。それゆえ、写真や動画に最適のスポットについて情報発信することも有効だと思われる。
ガイド不足と若者向け&FIT向けの情報発信、タイ人向けおもてなしが課題
前出の石亀氏は、タイ人ガイド不足を懸念する。
タイで日本人をアテンドするタイ人ガイドの日給は500~1000バーツ、対して日本に同行するタイ人ガイドは日給7000B前後とほぼ10倍の給料となっている。タイで日本人へのガイドが不足している状態が続いているそうだが、日本側でも本当はタイ語ガイドを使いたいのに、英語ガイドがついている場合が少なくない。
特に団体の場合はタイ語しか理解できない人もいるので、タイ語ガイドの方が満足度もあがると考えられる。
不足問題をあげれば他の国と同様、繁忙期における航空座席供給や団体バス、宿泊施設の不足も心配される。
さらに若年層に向けての魅力の訴求、情報発信は競合国に比べ、遅れをとっているといわざるを得ない。
中国や台湾といった他の東アジアと同様に、タイ国内のポップカルチャーシーンは「韓流」が人気である。音楽やドラマ、映画は、韓国のものがよく見られている。例えば、日本でも人気の男性グループ「2PM」のメンバーには、タイ人が1人いる。これにより、タイ人は韓国を身近に感じるようになる。
韓国にもLCCが多く運航し、旅行価格も圧倒的に安い。またKTO(韓国観光公社)を中心に積極的にプロモーションを仕掛けている。手ごわい競合である。「韓国に行くより、日本旅行が好きな人が多いよ」と言ってくれるタイ人は多い。
しかし、安心しないで「たゆまぬ努力をしなさい」と言われていると考えよう。
ホームページやFacebookなどのタイ語の情報発信はまだまだ少ない。本気にこのマーケットをとりにいくのであれば、その国の言語で、その国の目線で情報発信をする必要がある。
訪日リピーターのタイ人は「自分が発掘した日本の穴場」をスムーズに旅行することを求めている。
「もっときいたことないような、知られていない(日本の)旅行先はないか」と石亀氏は顧客からよくきかれるそうだ。
2月と8月に開催されるタイの旅行博TITFでも、けっしてメジャーではない地方エリアへどうやっていけるのか、交通アクセスとかかる料金を熱心に問い合わせているタイ人が本当に多い。しかも、かなり広域で動いている。
特にLCCを利用する(若年層の)FIT旅行者は、新ルート、新スポットの情報を常に求めている。「まだまだオンラインで日本旅行の情報が足りなさすぎる」と福岡で会ったタイ人旅行者は嘆いていた。
この要求に応えていくオンライン上の情報発信やDMC(※)の機能こそが、訪日旅行を持続的に活性化する術だと思われる。今一度タイ人個人旅行者の目線にたって、素材や発信の流れを見直すことが必要である。
次回は、「インバウンド先進国タイに学ぶ観光戦略」と題して、タイに見習うべき受入、プロモーションをレポートします。
※Destination Management Company。目的地・開催地におけるあらゆる種類の業務を取扱う専門的能力を有する企業のこと。
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