インバウンド特集レポート
今後訪日外国人の消費を増やすに欠かせない要素の一つとして注目を集めるナイトエンターテイメント。
前回は、新宿で外国人に圧倒的な人気を誇るロボットレストランの取り組みを紹介。今回は、築地や砂町で実施している外国人向けの食べ歩きツアーの参加者のニーズをきっかけとして、新宿での飲み歩きツアーを開催している株式会社ノットワールド取締役河野氏に話を伺った。
旅行者のニーズから生まれた夜の新宿飲み歩き
株式会社ノットワールドは、2014年に創業し、着地型ツアーに力を入れている。創業者の佐々木氏と河野氏の2人は、創業前年に世界一周をして、そのとき、各地でローカルな食事を体験したことが非常に印象に残り、それを外国人にも体験してもらいたいと考えている。地域のローカルフードで日本文化を伝えようと、コースづくりに励み、2015年に築地市場と都内下町の砂町の2つのコースからスタートした。築地ツアーは圧倒的な人気の企画に育ち、トリップアドバイザーでも高い評価を得ている。
そんな中で、これらのツアーに参加した外国人観光客から「夜が暇で、何をしたらいいのかわからない」という相談がいくつもあったそうだ。そこで、浅草の飲み歩きツアーが始まった。河野氏自身、会社も住まいも下町方面なので、土地勘があり、ガイドブックには紹介されない、夜の浅草の楽しみ方を紹介していった。プロモーションは、トリップアドバイザー、ビアター、ブログ、グーグルなどを活用しながら、できることは、積極的に試していった。
参加者数も順調に伸びていったところ、別のニーズが見えてきたそうだ。それは、参加者はホテルが多い新宿に宿泊している人が多く、その結果、宿の近所でもう一杯飲みたいので、バーを紹介して欲しいというものだ。それなら、新宿で飲み歩きツアーをするのが一石二鳥ということで、企画することになった。
当初はホストクラブやゲイバーも検討したが、交渉が難しく、まずはオーソドックスなハイライトツアーを組むことにした。
思い出横丁でビールと焼き鳥を味わうツアー
それは、西口の「思い出横丁」、そして「歌舞伎町」、最後に「ゴールデン街」をまわるコース。17時に駅前に集合して、20時終了だが、盛り上がって少々過ぎることも多い。参加費は、飲食代込で一人13,000円になっている。
思い出横丁では、ビールと焼き鳥体験をする。モモ肉だけではなく、希望者にはホルモン・軟骨や砂肝なども挑戦してもらう。普段、食べ慣れない外国人観光客にはチャレンジングだろう。歌舞伎町では居酒屋に入り、日本酒と我々が普段食べているような居酒屋フード体験をする。さらにゴールデン街では、お店の狭いカウンターに並びウィスキーで語り合う。
人数は、最大で6人の枠としている。多すぎると、参加者としっかり向き合えないので、満足しているかどうか把握できないからだ。参加層は、欧米豪が多く、その次に他にも台湾、シンガポール、香港など幅広い。
飲み屋での意外なハプニング等、思い出に残る演出!
さらに、参加者同士も仲良くなるように、早い段階でうまく話をもっていく。たまたま近くに座っていたオジサンにも話かけてみて、一緒に会話に入ってもらい、話が意外な展開となり、盛り上がることも多い。ちょっとしたハプニングが起こると、それも旅の思い出になり、これぞ醍醐味だ。
河野氏自身が世界一周旅行を体験した際に、いろいろなハプニングが起こり、それが印象深い思い出になっている。少しぐらいのハプニングが起こったほうが面白いのではないかと話す。「酒の歴史や新宿の歴史を語っても、お客さんは数か月後には、ほとんど忘れてしまうでしょう。それよりも日本のディープな日常を体験して、さらにちょっとしたハプニングや出会いがあると、思い出になります。それも含めて素敵な時間をアレンジすることがガイドの仕事でしょう」と河野氏は語る。
現在は、週に2回催行していて、今、予約が多く入るサイトは、エアービーアンドビーのエクスペリエンス(体験)だという。その次にビアターからの予約となる。
今後は、新宿のコンテンツの深掘りをして、もっと個性的なコースを作り、日本人でも参加したいようなツアーを作っていきたいという。
西荻窪に飲み屋体験を目的にやってくる!
飲み屋街体験は、新宿・渋谷や浅草など、観光地や宿の多い繁華街に集中しがちだが、少し離れた場所にもやって来るという。エアービーアンドビーの飲み屋体験からの予約だ。場所は、新宿駅から中央線で約15分の西荻窪。飲み屋体験を提供しているエアービーアンドビーのアンバサダーでもある井口氏にうかがった。
この企画を主催する井口氏は、少年時代から ニュージーランドに移住し、英語のネイティブだ。5年前に帰国し、マーケティング関連の本業のかたわら、体験プログラムを提供しており、エアービーアンドビーの体験プログラムのアンバサダーに任命されている。
もともと飲むのが好きなことと、日常でインターナショナルな関わりを持ちたいという想いで始めた。
内容は、18時に西荻窪駅前のコワーキングスペース factoriaに集合、30分後に出発して近隣の横丁に行く。定番のコースは、まずハンサム食堂というタイ料理屋に向かう。西荻窪を代表する横丁にあるのがポイントだ。それから2軒目でスナックに行く。場合によっては3軒目にいくことも珍しくないそうだ。
実際の飲食については、割り勘となる。3時間程度のコースだ。以前は、週に1,2回ほど頻繁に開催していたが、最近は、本業の仕事が忙しいこともあり、月に1回程度に減っているそうだ。今後、落ち着いた段階で増やしていきたいと井口氏は話す。
参加者の満足度を高めるためのちょっとした工夫
この体験を提供するきっかけとなったのは、自身が運営する西荻窪のコワーキングスペース factoriaの存在が大きいと井口氏。ここを集合場所として、ドリンクやつまみを提供して、30分後に出発する。遅刻する人もいるので、待ち時間に談笑することで心の距離が縮まり、リラックスできる。行き先が、横丁の小さな店のため、ダイレクトにそこを集合場所にすると、たどり着けない可能性もあり、この場所でのひとときは、重要である。
さらに、このコワーキングスペース自体がインターナショナルな空間をテーマにしていて、外国人の出入りが多いことは歓迎だという。
最新のインバウンド特集レポート
リピーター増と共にローカル志向高まる中東市場、2025年 旅行者に選ばれるための重要なポイントとは? (2024.12.23)
完璧な事前の準備よりオープンな心で対応を、2025年拡大する豪州市場の地方受け入れに必要なこと (2024.12.20)
地域体験を求めるFIT急増、2025年シンガポール市場獲得に向けて地方ができることとは? (2024.12.19)
まだ見ぬ景色を求めて地方を旅するタイ市場、2025年は二次交通が地方誘致のカギに (2024.12.18)
香港市場が求める高品質の訪日旅行体験、2025年に米豪市場と競う日本は何をすべきか? (2024.12.17)
2025年の台湾市場は定番観光から深度旅遊へ。地方誘致拡大への効果的なプロモーションとは? (2024.12.16)
2025年中国FIT市場の潮流、国内感覚で日本の地方を旅する旅行者の心をつかむためには? (2024.12.13)
日中往来の更なる活発化が予測される2025年の中国市場、地方分散や受け入れキャパ不足への対応がカギに (2024.12.12)
小都市旅行とグルメで進化する2025年の韓国市場、日本人と変わらないスタイルへ (2024.12.11)
香港の日常に溶け込む「日本」、香港人の消費行動から見えるその魅力とは? (2024.09.30)
地方を旅する香港人旅行者の最新トレンド、柔軟な旅スタイルで新たな魅力を発掘 (2024.09.06)
酒造りからマラソンまで、ディープな日本を楽しむ台湾人観光客。新規旅行商品造成のノウハウとは? (2024.08.30)