インバウンド特集レポート
個人旅行者を中心に、インバウンド最前線を走る
鳥羽ビューホテル花真珠女将・迫間優子さん
三重県にある鳥羽ビューホテル花真珠は、48室という伊勢志摩界隈では中規模の宿ながら、個人旅行者を中心にインバウンドの最前線を走っている。そのきっかけは女将がインバウンドが重要なマーケットになると直感して、取り組みを本格化させたこと。宿の特徴に合わせ、人材、ターゲット等、しっかりと積み上げてきた。鳥羽ビューホテル花真珠女将・迫間優子さんにその思いを伺った。
インバウンドへの取組みは、女将の思いから始まった
鳥羽ビューホテル花真珠がインバウンドに取り組むようになったきっかけ。それは、女将・迫間優子さんのリーダーシップによるところが大きい。
東日本大震災の風評被害、尖閣諸島問題など、2012年の当時は、インバウンド業界にとっては、逆風の年だった。ましてや鳥羽市を含め、三重県ではインバウンドについては積極的ではなかった。しかし、女将が、直感的にインバウンドは今後の重要なマーケットになると思ったのが、現在まで推し進めることができた原動力なのだ。
「まずは、中国人スタッフを採用しました。英語と比べて中国語は、一朝一夕という訳にはいきません。そのための体制を組むことにしたのです。
採用した中国人は、当時まだ日本に留学中の学生だったので、翌年の2013年から新卒としてスタートしました。しかし、当然、旅行業界が未経験のため、まずは営業として、国内営業と海外営業、団体旅行と個人旅行の違いなどを研修することから始めたのです」と当時を女将は振り返る。
次のインバウンド対応としての打ち手は、台湾の旅行会社への営業だった。
実は、インバウンドが注目されるはるか以前、社長が、試しに台湾客を誘致した際は、1泊6,000円前後という低価格での受注になったという。採算割れとなってしまったのだ。そういった苦い経験から、社長としては、あまり積極的ではなかった。しかし、女将のやる気を見込んで、1泊単価が見合うなら、やっても良いという条件付きで営業が始まった。
台湾へのセールスは、最初は鳥羽市が主催するセールスツアーへの参加だった。観光関係の同業者と現地の訪日観光を扱う旅行会社へ足を運んだ。参加した多くの宿は、視察程度というスタンスだったが、女将は本気だった。2回目は、独自に現地のコーディネーターを手配して営業した。そして3回目は、ホテルで単身台湾の旅行会社へ直接アポを取って、セールスするまでになったのだ。
2013年は種まき期間として、足を頻繁に運んだ。
天皇陛下から褒章をいただいている料理長の料理を訴求ポイントに
「最初のセールスツアーのときから心掛けたのが、高級感を打ち出すことでした。社長との約束を果たすために、しっかりと見合った単価でセールスしたいからです。訴求ポイントにあげたのが料理でした。当時の料理長は、天皇陛下から褒章をいただいている腕前です。その料理を目的に政府関係者も泊りにきたこともあり、料理には自信がありますから。温泉や客室だけですと、競合の宿との差別化が出しにくい。それよりも、具体的に訴求するポイントを絞ったのが功を奏しました」と女将は当時を振り返る。
そのあたりをしっかりと伝えたことで、2014年から、台湾の旅行会社を通してインバウンドの旅行者から予約が入りだした。
そして2015年、さらなる転機となったのが…(次回につづく)
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