インバウンド特集レポート

過去最高400万人超えの台湾客はいま日本で何を楽しみたいのか?(後編)

2017.02.16

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台湾から多くの人たちが日本を訪れる理由を、前編では、中国のオムニバス映画からわかる、日本でやってみたい体験のラインナップから、中編では、台湾の旅行会社が催行している田舎の体験ツアーの側面から紹介した。後編では、日本のことをさらに奥深くまで知りたいと思う台湾旅行客を理解するにあたっての参考となる情報を紹介する。

 

日本人と触れあいたいという思い

 

「日本が好きになって、もっと奥まで日本のことを知りたい」という台湾客の思いを理解するうえで参考になるのが、台湾出身の日本薬粧研究家の鄭世彬さんが書いた『爆買いの正体』(飛鳥新社)だろう。彼は日本の医薬品や化粧品、美容・健康商品の専門家で、すでに台湾、中国で10冊以上の案内書を出版している。同書は台湾人も含めた華人の「爆買い」を経済現象としてみるのではなく、民族的、歴史的な背景をもった文化現象として描いていることが特徴だ。

 

さらに、台湾人によるあふれんばかりの日本愛の告白書でもある。なぜ台湾の人たちがこれほど多く日本を訪れるのか、その理由を熱く語ってくれている。それは、ひとことでいえば、日本人ともっと触れあいたいという思いがあるからなのである。

 

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『爆買いの正体』(飛鳥新社)http://goo.gl/DXhOMa

 

 

1980年代から日本を旅行していた台湾客

 

台湾の人たちが日本に旅行に訪れるようなったのは、1979年以降である。その年、台湾人の海外渡航が自由化されたからだ。

 

アジア映画ファンなら、台湾映画を代表する候孝賢監督が製作に携わった『多桑 父さん』(呉念眞監督 1994年)という作品に登場する老人のことを知っているかもしれない。彼は日本統治時代に教育を受けた世代で、戦後多くの苦労を重ねたが、夢は日本旅行に行って富士山を見ることだった。結局、老人は夢を果たせなかったことで物語は終わるが、多くの台湾の人たちが自由化後に最初に向かった先は日本だったのだ。

とはいえ、80年代当時は年間約40万人、90年代でも約80万人ほどだった。それが一気に増えたのは、2000年代に入ってからである。

引き金になったのは、2005年の愛知万博開催を期に台湾人に対する観光ビザを免除したことだ。さらに、日本への往来を格段に便利にしたのが日本の航空政策である。海外の国々との間で航空便の路線や発着枠、便数を自由化させるオープンスカイ協定の改定や推進で、特に近年の目覚しい路線数の拡充は、米国との協定を締結させた2010年10月以降、続々とアジア各国との同様の協定を進めた。

 

なかでも地方空港への国際線乗り入れ増加に影響を与えたのは、10年の韓国、11年の台湾、香港、12年の中国との協定締結だろう。台湾と日本のオープンスカイ協定は、11年11月に調印されたが、これにより台湾からの関西国際空港や中部国際空港、そして地方空港への乗り入れは自由化され、就航エアラインやチャーター便の規制も撤廃されたことから、従来のチャイナエアラインやエバー航空に加え、翌年よりマンダリン航空やトランスアジア航空(16年11月解散)の4社が定期便の運航を開始した。

 

現在、これに加えてLCC(格安航空会社)が日本と台湾を結んでいる。国内系はジェットスターやピーチ・アビエーション、バニラエア。外国系はシンガポールのスクート航空、昨年から仙台や岡山などの地方都市への運航を開始したタイガーエア台湾。もちろん、これに日本航空と全日空が加わる。台湾のエアラインは日本の地方都市にも多く就航していることが特徴で、台湾メディアによれば、「日本と台湾を結ぶ航空便は毎日約100便」(フォーカス台湾2016年5月29日)飛んでいるという。

 

 

台湾で開催される旅行博では、日本ブースが最大規模。会場では日本ツアーが大量に販売される

台湾で開催される旅行博では、日本ブースが最大規模。会場では日本ツアーが大量に販売される

 

ビザ免除とオープンスカイ協定終結による相乗効果が、昨年台湾からの訪日客が400万人を超えるまでに拡大した最大の理由といえる。

 

双方向の交流を進め、盛り上げたい

 

日本政府観光局(JNTO)によると、昨年の1月から10月まで日本は台湾人の海外旅行先トップだったという。数の規模は飛躍的に拡大し、前年からの伸び率も13.3%増と決して低いとはいえないが、一時期の勢いは収まり、市場は飽和状態という声もある。

昨年下半期に若干伸びが落ちた背景には、2015年12月に日本路線の運航を開始したVエアの撤退(16年9月)やトランスアジア航空の解散(11月)などの影響があったと考えられる。

日台間を結ぶ航空便が減れば、当然訪日客数に影響が出る。であれば、航空便の維持のためにも、我々も台湾に出かけるべきではないだろうか。さいわい、日本から台湾を訪れる観光客数はここ数年、わずかではあるが増加傾向にある(2015年で167万2000人)。ただし、台湾から日本を訪れる数に比べると、半分以下だ。双方向の交流こそが、台湾の訪日市場をさらに盛り上げることにつながるはずだ。

 

台湾が日本からの観光客を待望するのはもうひとつの理由がある。2016年1月の台湾総統選挙の結果、民進党の蔡英文主席が当選したが、それ以後、中国からの観光客が大きく減少しているからだ。

訪日台湾市場を理解するためには、現地をよく知ることが欠かせない。ぜひ多くの日本人が今年は台湾に足を運んでほしい。

 

 

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