インバウンド特集レポート

2025年の台湾市場は定番観光から深度旅遊へ。地方誘致拡大への効果的なプロモーションとは?

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訪日外国人旅行者数、インバウンド消費共に、過去最高を記録し、コロナ禍からの完全復活を遂げた2024年の観光インバウンド業界。同時に、訪問先の一極集中や、受け入れ先のキャパシティ不足などが指摘され、今まで以上に観光地のマネジメントや分散化、持続可能な観光の実現、付加価値向上などのへの重要性が再認識された1年だった。2024年を振り返ると同時に、2025年以降の観光、インバウンド市場の予測について、各市場の専門家による分析や所感、展望と共に紹介する。

 

インバウンド市場動向、2024年振り返りと2025年予測

 

誠亞國際有限公司 代表 矢崎 誠

 

 

久々の定番観光から、地方の特色を楽しむ「深度旅遊」フェーズへ

JNTO(日本政府観光局)が発表した2024年1月から10月の訪日台湾人数は508万人となっているが、これはコロナ禍前の2019年同時期と比較しても22%増となっており、2024年は過去最大を記録することがほぼ確定となった。

台湾消費者の動向としては、アフターコロナ初期に見られた「定番観光地で久々の日本を楽しむ」層がひと段落し、豊富な日台航空路線を活用して地方への旅を積極的に楽しむ層が増加している。また、他の訪日市場同様「コト消費」に対するニーズが高まり、体験メニューやテーマツアーなど、その土地の特色を深く楽しむ「深度旅遊」を楽しむ傾向が強くなっている。

日台間の航空運賃は相変わらず高止まりしているものの、台湾では全体的な物価や最低賃金が上昇していることや、円安が長期化していることもあり、大きな阻害要因とはなっていない。航空業界では台湾籍の航空会社が日台新規路線の開設や既存路線の再就航を図るとともに、東南アジア系のLCCが台湾経由日本行きの路線設定を行うなど、コロナ禍前よりも賑やかな様相となっている。特に台湾籍LCCのタイガーエア台湾は東北を中心に地方路線を新規就航させるなど非常に積極的で、この流れは2025年も継続すると見られており、地方への訪日市場については引き続き拡大していくであろう。

旅行業界においては変わらず団体旅行販売が中心で、FIT層はインターネットによる個人手配がメインとなっているため、今後もこの傾向は変わらないと見られる。ただ、団体旅行については「社員旅行やインセンティブツアーなどの手配型旅行」「小グループツアー」「航空座席買取による募集型企画旅行」が中心となり、従来のような「定期便利用の一般募集型企画旅行」の割合は減少傾向にある。

 

旅行会社へは周遊ルートの提案、FITは動画をフックに丁寧な情報提供を

2025年の展望については、1月の春節休暇は台北―札幌便の往復航空券が日によっては5万台湾ドル(約23万円)を超えるなど、訪日旅行に対するニーズが非常に旺盛であることが窺え、2025年も訪日市場の好調度合いについては安定的に継続していくであろう。また、FIT・団体問わず前述した「深度旅遊」に対するニーズが高まっていくと考えられる。

以上のことから、各自治体や観光事業者が台湾の旅行会社にプロモーションを実施する場合、常に最新の日台航空便運航状況や旅行会社の航空団体座席の取得状況を把握し、近隣空港到着から出発までどのように周遊して欲しいかを、点ではなくて「線」や「面」でプロモーションしていくことが肝要だ。また、彼らは食事・宿泊・体験に関する情報を渇望しているため、積極的な情報提供を行なっていくことも大事である。

消費者向けのプロモーションに関しては、特に20〜30代の層を中心にSNS等のリール(ショート動画)をフックに興味を惹きつけ、公式WEB・公式SNS、旅行情報サイトなどで詳細情報を発信していく方法が、この層との親和性が高く効果的だろう。

 

著者プロフィール
2004年に前職のJR北海道にて初代インバウンド営業担当として任命され、以来20年間にわたり訪日旅行プロモーション業務に従事。2014年に「誠亜国際有限公司」を創業し独立。香川県観光協会、高知県観光コンベンション協会、三重県観光局、神戸観光局の現地レップなど、主に自治体関連のインバウンドプロモーション事業サポートを中心とした事業を展開する。台湾在住歴15年。著書に『はじめての台湾マーケティング』(Kindle版)。

 

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