インバウンド特集レポート

民泊新法に向けて、活発化する業界再編の動き(前編)

2017.07.27

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民泊がもたらすうねりが止まらない。6月に民泊新法が国会で可決され、来年1月には施行される動きだ。民泊新法の制定によって、大手企業や不動産業界の参入が始まった。個人民泊ホスト(貸主)は、簡易宿泊所の登録を進める人、一方で新しいビジネスチャンスを見つけて走り出す人など、新しい動きにも目が離せない。民泊に取り組む企業や個人それぞれの戦略をレポートする。

 

6月に民泊新法が国会で成立!

議論が進められてきた民泊新法(住宅宿泊事業法)が、6月9日に参院本会議で賛成多数で可決し、成立した。早ければ2018年1月に施行する予定だ。

同法案では、民泊事業者に対して都道府県知事への届出を義務付ける。年間提供日数の上限は180日(泊)とし、都道府県が地域の実情を反映し、条例によって日数を制限できるとした。場合によっては、50日以下というエリアもでてきうる。

「家主居住型」の場合、「衛生確保措置、騒音防止のための説明、苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等」が必要だ。「家主居住型」とは、オーナーまたは管理者が住んでいる家のことをさし、昔からあったホームステイは、ここに含まれる。

「家主不在型」の場合、「適正な運営を行なう住宅宿泊管理事業者に委託すること」が義務付けられる。所謂、一棟丸貸しのことで、鍵の受け渡しのみをして、貸す側は一緒の家にはいない。

マンションの一室は、一部屋だけを貸して、オーナーが住んでいるのなら、「家主居住型」になるし、同じサイズの一室でもオーナーが不在ですべてを貸すのであれば、「家主不在型」のカテゴリーに入る。

要は、運用形態によって、カテゴリーが変わるということだ。

民泊新法の成立に合わせ、民泊の世界的マッチングサイト「エアービーアンドビー(Airbnb)」やバケーションレンタル大手の「ホームアウェイ(HomeAway)」、合法民泊を推進する民泊予約サイト「ステイジャパン(STAY JAPAN)」を運営する百戦錬磨は、プレスリリースなどを発表し、今回の民泊新法の成立を歓迎する姿勢を示した。

民泊市場の健全な拡大や地方経済の活性化に寄与できると期待を持ってのコメントだ。

 

不動産業界が、民泊参入に積極的!

ところで、この民泊新法の成立を先取りするかたちで、この春以降、様々な動きがあった。

まず、不動産業界では、民泊を取り入れようと情報収集をしている。

ビルオーナー向けに不動産活用セミナーをおこなっている団体では、5月に「民泊」をテーマにしたセミナーを開催した。それはオーナーサイドからの要望が高かったからだと主催者は言う。

セミナー

不動産オーナー、または管理会社のスタッフは、人口減少時代、これまでのように居住用やオフィス用に場所を貸すだけの商売が難しくなりつつあることを知っている。資産運用の新しい形態として、民泊または簡易宿泊所に注目が集まっているのだ。                 

民泊に詳しい行政書士の石井くるみさんが登壇し、民泊を含め簡易宿泊所についての説明をした。

石井さんによると、新しい不動産運用の一つに、宿泊施設として活用することで、空き家対策はもちろん、これまで以上の収益の増加が見込まれるという。

転用不動産について、4つの形態があるという。

1つ目は、ゲストハウス運営だ。中古の戸建住宅やビルを改装し、簡易宿泊所または特区民泊の許可を受ける方法がある。観光地周辺の空き家、手狭な土地活用に最適だ。

2つ目は、カプセルホテル、ドミトリーだ。オフィスビルや倉庫を簡易宿泊所に転換する案件が増えている。

3つ目は、マンションホテルがある。マンションホテルとは、旅館業または、特区民泊の許可を得た、ホテル営業が可能なマンションのことだ。

そして、4つ目が民泊マンションだ。民泊新法を活用し、民泊+マンスリー+一般賃貸の混合で運用する新しい不動産活用だ。

新法は、年間180泊が上限なので、残りの期間はマンスリーor家具付き賃貸で運用することが可能だ。

合法民泊に適する不動産の選定ポイントとして、宿泊需要の高い立地がベターだとアドバイスをする。

また、7月には東京ビッグサイトにおいて全国賃貸住宅新聞社主催で、「賃貸住宅フェア2017」が開催され、民泊に関するセミナーが多数行われている。多くの聴講者がつめかけ、注目の大きさをうかがえる。

 

大手企業の相次ぐ連携により、民泊業界が再編!?

さて、民泊新法が国会を通過したことにより、大手企業の動きが慌ただしくなってきた。

◆楽天とLIFULLが提携、ホームアウェイに物件を提供

楽天株式会社と株式会社LIFULLが、共同出資する会社の子会社、楽天LIFULL STAY株式会社を立ち上げた。LIFULLはHOME’Sという不動産マッチングサイトを運営しており、不動産会社への営業インフラがある。そのノウハウをいかし、民泊を目的とした会社を立ち上げたのだ。

さらに、楽天LIFULL STAYは、エクスペディアグループの民泊サイトを運営するホームアウェイと7月に業務提携を結んだ。

この提携により、楽天LIFULL STAYが今後開設予定の民泊サイト「Vacation Stay」(仮)に掲載される国内民泊物件をホームアウェイに供給することになる。

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ホームアウェイ自体は、アクセス数や売り上げが、業界最大手の民泊仲介サイトAirbnb(エアビーアンドビー)に水をあけられているが、巻き返しの手段としては、登録物件を増やすことだろう。

シェアリングエコノミーの法則として、サービスの供給数と需要数は両輪となり、どちらか一方が突出して多いということはないそうだ。

そのため、LIFULLの営業ネットワークをいかせるのは、登録件数の促進につながり、需要の促進が期待できる。また、楽天LIFULL STAYとしても、自力で海外向けのマッチングサイトをつくる必要がなく、そのホームアウェイのインフラを活用することが可能になる。利益の分担は今後、話し合って決めるようだ。

ホームアウェイは、サイト訪問者数月間約4,000万人の集客があるため、そこでマーケティングを行い、訪日インバウンドの需要拡大につなげる意向だ。在庫の獲得から集客、販売までを両社が協力して行うことで、物件オーナーにも訪日旅行者にも魅力的なサービスの提供が実現できるだろう。

 

また、人材大手のパソナとエアビーアンドビーが…

(中編へ続く)

 

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